マガジンのカバー画像

散文集

8
文字どおり、散文をまとめたものです。
運営しているクリエイター

記事一覧

散文集 2024年4月

散文集 2024年4月

主にBlueskyに書いたものをまとめました。

この世界はほんの少しの設定と膨大な妄想でできている。のぞき穴によってものがたりはつくられる。
(2024年4月9日)

誰よりもぼくを知っているぼくのスマホは情報の一部をクラウドに預けている。ぼくの知らないところでぼくのバックアップはつくられる。
(2024年4月10日)

一度だっておなじ夕焼けに出会ったことがない。いつかとおなじ夜を繰り返すこと

もっとみる
散文集 2024年3月

散文集 2024年3月

各SNSで書いた散文をまとめました。

東京ドームの愛称がビッグエッグだったことをふと思い出して、たまごの殻を内側から見てみたいと考えていた。自我がもしたまごの中にあって、ぼくたちが経験しているこの世界が殻の内側に映し出された映像なのだとしたら。人生という巨人戦を終えたあと恐ろしく大きな世界を見ることだろう。
(2024年3月1日)

誰かとの距離。みなさんが今いらっしゃる場所が北海道網走市とどれ

もっとみる
散文集 2024年2月

散文集 2024年2月

各所で書いた散文をまとめました。

冬は死の季節、春は生の季節。こんなにも雪が憎いのに、解けてゆく姿をみるのかかなしい。春はぼくから死を奪ってゆく。静寂の思惟を堪能していたぼくをひかり降り注ぐ世界に突き出してしまう。ぼくは再び綴りはじめる。あたたかかった冬の記憶をどうしても失いたくない。
2月19日 

湯船から冬が溢れてゆく。それは大切な記憶であるはずなのにぼくは掬おうともしない。溢れ出た冬と同

もっとみる
散文集 2023年12月

散文集 2023年12月



感性

久しぶりに宇宙人に遇った。月夜に照らされた牛丼屋の駐車場のすみっこで、泣いていた。彼はぼくのことを覚えていてくれたようで、ぼくの顔を見ると泣き止んだ。彼は空腹なわけでもなく、ただあたたかさを感じる何かを探していたのだという。

ぼくは彼を灯台に連れて行った。まわりにはなにもなく風が吹いているだけの場所。でも彼は灯台のあかりに温もりを感じた。ぼくは感じていた。彼とぼくは同じ感性の持ち主だ

もっとみる
散文集 2023年11月

散文集 2023年11月

11月に書いたものをまとめました。次のブログにて、だいたい週末の夜に更新しています。

ネオンテトラ

熱帯魚を買いに行った。吹雪の日曜日だった。死までの距離が近くなると美しさが増すというのは本当だと思った。

北国で生まれ育ったぼくには南国への漠然とした憧れがある。夜の部屋に輝くネオンテトラの群れは桃源郷のガイドブックを見ているような気分にさせてくれるだろう。外はおそらく氷点下10度近く、車の中

もっとみる
散文集 2023年10月後半

散文集 2023年10月後半

10月後半に書いたものです。
ここで書いたものをまとめたものです。

青空

雲を見ている。

さまざまな感情、喜びとか愛しさ、不安や恐れ。可視化できないそのようなものにかたちを与えるなら雲のような形状になるはずだ。だから、雲を見ている。ぼくのなかの喜びや愛しい気持ち、不安や恐怖はきっとこのようなかたちをしている。それらの感情はただ青空に浮かんでいるに過ぎなくて、かたちを変え、時には雨を降らしなが

もっとみる
散文集 2023年10月前半

散文集 2023年10月前半

10月前半に書いたものです。
ここで書いたものをまとめたものです。

夜の長さ

途切れてしまったことばにどのような接続詞が似合うのだろう。答えが見つからないまま時間だけが経過する。好きなパンの種類とかどうでもいい会話で十分だったのに、現在でも過去でもない中途半端なコミュケーションは色褪せないまま固定化されてゆく。

失ったものが減ることはない。蓄積された記憶に責められて、ぼくの想いはろうそくの炎

もっとみる
散文集 2023年9月

散文集 2023年9月

9月中に書いたもののまとめです。

星が生み出すもの

星の数ほど、などというが星だってひとつとして同じ星はない。だから遠く離れたふたりが同じ時間に見上げるのは同じ星でなければならない。そのような時に混乱しないよう星座が生み出された。
星座は神話を紡ぎ出す。そして遠く離れたふたりを不必要に不安にさせたりする。そんな不安を鎮めるために星占いが生み出された。
(2023/09/07)

街路樹

街路

もっとみる