開店まであと10日
枡野書店で作業をしていて気づいたことは、通りすがりの方が表に掲げられている枡野さんの短歌に立ち止まることが多々あるということ。
14時ごろ、枡野書店で開店作業を進めていると外から賑やかな2人組の女性の声が聞こえた。
「これって今わたしたちが話してたことじゃん」
「この言葉、私のために書かれてるわ、すっげ」
表の窓は看板で隠されていて、2人組の女性は僕が中にいるということを知らない。
そして、僕には声しか聞こえていないのでどんな2人組かわからない。
だいぶ長いこと写真を撮ったり枡野さんの短歌で盛り上がっていたので、なんだか嬉しくなって表に出て話しかけてみることに。
まさか中に人がいるとは思っていなかったようでとても驚いていたけれど、もうすぐ本屋を始めるんですというと「オープンしたら絶対行きます!この言葉に救われた気がします!!」というので開店前の枡野書店に招き入れる。
机と椅子を並べてしばし歓談。
聞けば、2人組のうちの1人の女性は3月末に会社を辞めさせられたというか、辞めてやったとのこと。4月から無職になったのでいっそ旅に出てしまおうかと思っていたところに枡野さんの短歌「こんなにもふざけたきょうがある以上どんなあすでもありうるだろう」を見て激しく共感したのだとか。
職場の上司に気に入られず、半ばイジメにちかい状態だったというので、枡野さんの短歌
「殺したいやつがいるのでしばらくは目標のある人生である」を見せると手を叩いて喜んでいた。
もう1人の方はパン屋さんで働いて、趣味がカメラという温厚で繊細そうな女性だった。
好意を寄せている男性はいるものの、向こうがこちらの気持ちに気づいておらず悶々としていたところに枡野さんの「毎日のように手紙は来るけれどあなた以外のひとからである」という一首を見て自分の気持ちを代弁してくれているのだと思ったそう。
2人とも歌集を読んだことがないというから、ここでマスノ教の教徒として、聖書の代わりに枡野さんの著書「ショートソング」を手渡す。
歌集を読んだことがない人でも、小説が短歌の解説の役割を果たしてくれるので、短歌の入門書として最適な一冊。
小説の舞台が吉祥寺であることを告げると、
「さっそく明日井の頭公園で読みます!」と
喜んでいただけた。
5.7.5.7.7で道行く人の足を止めて、救いをもたらせる可能性が短歌にはある。
たった31文字、されど31文字なのだ。
毎日短歌を詠むと宣言しておきながら、ここのところ全く詠めていない。
開店まであと10日だったり、19日の夜19時から24時間本の値付けを生配信する企画が控えていてバタバタだけれど、少し落ち着いたら24時間短歌を詠んでみようかしら。
「、でだめ」?が浮かぶ毎日にピリオド打ったしこれからは 。
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