見出し画像

誠司の日常~1~

ある程度の留置メンバーの顔つきを見て、顔色、声のトーンを見つつ誠司の24時間勤務は終わりに近づいてくる。
 日報と引継ぎ事項を終えて、着換えて業務終了である。それぞれに挨拶を住ませて誠司は自転車で帰宅する。天気もよく無事に24時間勤務を終えて帰るこの時間はとても清々しい。道すがら出勤する顔見知りにも挨拶を交わすこともある。
 近所のコンビニで朝ごはんやお菓子等いくばくか購入して帰る。
 入浴、食事をして、やはり疲れて眠ってしまうのがいつものオチだ。
 夕方頃目覚めると台どことで母親が食事の用意をしている。明日も休みになるので、夜ご飯は家族と取ろうと決めた。
 誠司の母親は52歳。近所の海産物加工工場のパートに週3~4日出ている。父親は銀行員で、母親も元々は同じ銀行の窓口勤務であった。そんな昔のよくある流れで恋をして結婚した2人だった。
 母親は小太りだが、元気で明るく良く笑い、よくしゃべる。誠司が交番勤務の頃も、誠司の交番で起こった日常を割と楽しく聞いてくれた。現状、留置場での出来事はさすがに細かくは言えないが。

 「あら、起きた?」
 「珈琲ある?」
何気ない会話を夕方の起きがけに母とする。母は名物刑事2人が事件を解決する刑事ドラマを見ているので、誠司も覗き込んだ。
 ある程度、警察の事情を理解しているので、
 「これは無茶がある。いやいや、強引やんか」
等と誠司が突っ込む。
 「楽しく見てるんやからほっといて」
と母親にたしなめられる。いつものことだ。
 これも我が家ではお決まりのやりとりである。誠司にとってある意味安らぐ時間である。誠司には妹がいるが、妹は妹で今は大学生で、自宅から通っているし、近所の駅前の居酒屋でアルバイトもしている。普段から騒がしい妹なので、今日の家の雰囲気だと、大学に行っているのだろうと思う。適当なワイドショーやニュースを見ながら母はご飯を作りつつご近所さんのお話を繰り広げている。勿論誠司は適当に相槌を打つだけである。夕食は父の帰宅がいつも19時~20時頃なので、それくらいからスタートだろう。誠司も新聞を読んだり、ぼーっとニュースを見る。意外とこういう時間が好きだと再認識する。のんびりだらだらな時間も案外、気持ちが良い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?