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その一枚のピザの話。

イタリア料理屋さんに行った時の話。

と言っても、我が家が気軽に食事に行けるレストランは高級なものではなくて、ごく普通のファミリー向けのお店なわけです。

私の住んでいる町にはよくあるんですけど、そのイタリアンレストランは、パスタもピザもメニューにはありますが、◯◯コースみたいなのがあるんですよね。

それはメニューから一品メイン料理を選んで、オプションでドリンクとかデザートもつけられるものです。

でも、一番のウリは「ピザ食べ放題」というところ。

その食べ放題のスタイルは、客である私たちの座っているテーブルに、おもむろにお店のスタッフさんが近づいてきて焼きたてのピザを取り分けてくれるというもの。

あんまりお客が少ない時には「お好きなピザは何かありますか?」とリクエストを聞いてくれることもあるのですが、大抵は、お店側がランダムで色んな種類のピザを焼いてホール一枚ずつ持ってきてくれます。

で、テーブルごとに配っていくんですね。その時に「◾️◾️のピザですが、いかがですか?」って訊いてくれるわけです。

ただ、これがどうにも私は苦手で。いや、色んな種類のピザが食べられるのはありがたいですし素晴らしいです。ですが、私のコミュニケーション能力に難がありすぎて、このスタイルでピザを食べようと思うと、どうにもやりにくい。

たとえば、「ラザニア風ピザいかがですかー?」と店員さんに尋ねられて、その時はマルゲリータが食べたい気分だし、ちょっとラザニアってもう年齢的になのか胃袋的になのかキツくなってきているなぁと思っているとします。他方で、妻もしくは子供が「ラザニア?食べたい!」ってなっているとします。

そうしたら、こう言うじゃないですか。

「じゃ、一枚ください」って。

でもその「一枚」って別に私が食べる分じゃなくて、家族みんなでその枚数なわけで。それをたまたま私が代表して言ったに過ぎないんですよね。

なのに、そういう時に運悪くと言いますか、私が店員さんに答えたのと同じタイミングで妻または子供も「ください」と言っちゃう。

すると、「はい、どうぞ」と店員さんが切り分けて置いてくれたラザニア風のピザは合計2枚になります。

えっ、ちょっと待って私はラザニア風のピザは遠慮したい。しかし時すでに遅し。店員さんはこちらのテーブル上の皿にピザを置いて、即座にもう次のテーブルに向かってしまっているわけです。今更「あっ、やっぱりピザ一枚でいいです〜」なんて言えません。

となると、私はそこまで食べたくはないけれどラザニア風ピザを頬張らざるを得ないわけです。いえ、ラザニアが悪いって言ってるんじゃないですよ。私の伝え方の問題です。

厄介なのは、仮に私が「マルゲリータ」が食べたくて、まさにスタッフの方がマルゲリータを持ってきてくれた時も、私は同じ返答をしてしまうということなのです。

「あっ、一枚ください」

ただしこの「一枚」は、家族を代表をしているわけではありません。そういうことは何にも考えてないです。私が食べる、私のための一枚です。つい言っちゃう。食べたくて「あっ食べたい」だから「一枚ください」って。

頭が悪いんですよね。私の。

つまり、ラザニア風ピザだと「(あー俺は食べたくないけど食べたいって言ってる人が一人居るなぁ、よーし、その人のために)一枚ください」っていうのに対して、マルゲリータだと「(あっマルゲリータだ、食べたい食べたい)一枚ください」と言ってしまう。

そりゃ見分けがつかないわけですよ。外見からは。どっちも一枚欲してんだから。

そう考えると、私は客観的にはどちらもピザ一枚を要求しているわけですけど、心の中では家族を代表したり己の欲望に打ち負かされたりしていて、全く異なる意思に基づいてそういう発言をしているんですよね。

その本音は外からは全く見えない。

あれです、まるで銭湯で大事なところを手拭いで隠して入浴するのと同じ。

大切なものは見えない。その大切なモノが、大きいのか小さいのか、長いのか短いのか、特殊なのか一般的なのか。手拭いによって隠されているから、外からは全く見えないわけです。ついてるモンはおんなじなはずなのに。

そういえばね、気付いたことがあるんです。大浴場で他のお客さんのを観察していますと、別に手拭いで隠す人というのは、そのサイズだとかそういうのにコンプレックスを抱いているわけではないんだろうなと。

だって、チラッと手拭いの隙間から顔を出したJr.は全然私のなんかよりも立派だったりするんですよ。

ちょっと待ってくださいよと。私自身は全く隠さないですよ。手拭いなんか肩に乗せるか手で持って浴場を闊歩します。隠したりなんかしませんよ。おんなじモノがついてるんでしょう。

でも勘違いしないでください。客観的には私のなんか、たぶん全然立派じゃないですよ。いつぞやのテレビコマーシャルで流れていた何ちゃらクリニックでもお馴染みのバリバリのタートルネックですし、サイズだって電池で言えばそりゃ単三、いや単四…


ごめんなさい、


なんのはなしですか。


ああ、取り乱してしまいました。失礼。ピザの話でしたね。ピザを要求する私の本音がどこからも分からなくなっているということでした。つい変な方向に行ってしまった。危ない。

閑話休題。

それでは逆に、ラザニア風ピザの場合は「要りません」って言ったらいいんじゃないか。もしかしたらそのようにシンプルなオプションをとればいいのではと思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし私には、その選択にも踏み切る自信がありません。

なぜなら、私が「要りません」なんて言ってしまったことで、もしそれを店員さんがこのテーブルの総意だと見なしてしまって一枚のピザも配ってくれなかったとしたら、ラザニア風ピザを欲していた妻あるいは子供に対して申し訳なくなってしまうからです。

あるいは「要りません」の一言が、何と言いますか、せっかく一生懸命ピザを焼いてくださったお店の方に対して失礼な言い方になってやしないかと気になってしまって。そしたら「大丈夫です」という言葉をチョイスしがちですけど、それも「何が大丈夫なんだ?コラ」ってならないかな、と不安で。

それならいっそ特に食べたくなくてもとりあえず「ください」と言っておいた方がマシだろう。そのように思うのです。まあ残さず食べますけどね。全部美味しいし。

とにもかくにも、私には色々なことを考えてしまって、自然にピザを頂くことがなかなか難しいのです。このような悩みを持つ方って、私以外にも居ますかね。うーん、居ないかもな。考えすぎな感じがします。おわり。


あとがき。

いつか書きたいと思っていたのですが、「なんのはなしですか」やっと書けました。品の無い方向性で大変失礼いたしました。

コニシさん、勝手に使わせていただいてすみません。いつも素敵な世界をありがとうございます。

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