二年目の飛躍へ、奥川恭伸に求められる勇気

「悔いが残り納得が行かない」
3月14日、オープン戦で初先発した東京ヤクルトスワローズ奥川恭伸の試合後のコメントだ。予定していた3回を投げ切る前にマウンドを降りたことへの、正直すぎる感想を吐露している。

初回の立ち上がりで3失点、その後は2回を3人で打ち取るも、3回は安打と四球でランナーをためたところで交代を告げられている。あとアウト一つがとれず、本人のみならず観ている我々ももどかしさが残る結果となった。

この日浮き彫りとなった課題は、ボールのキレやコントロールではなかった。既に伝えられているように、打者の内角へのボールがみられなかったこと、それにより投球の幅を狭めてしまっていた。捕手のリードにもよる部分は大きいとはいえ、終始、球筋は真ん中から外を辿り、結果としてドラゴンズ打線に狙いを定められることに。初回の平田のライトへの本塁打や、3回の高橋、ビシエドの連打といった打ち込まれたシーンはもちろん、アウトに取った打者に対しても、易々とバットに当てられていたように感じられた。

特に象徴的だったのが、根尾昂との対戦の場面。最後はセンターフライに打ち取るも、そこに至るまで敬12球を投げ、追い込んだ後もをファウルで粘られている。ここでも真ん中付近のコースばかりで、幅の狭い中での投球となった為、打ち取るまでに球数を擁してしまっていた。ストレートで押し続け、球威では勝っていたものの「仕留めきれない」印象が強く残る投球内容だった。

もちろん、インコースへのボールが殆どみられなかったことは、奥川本人も課題として身に染みているはずだ。それ故の悔しさに溢れた冒頭のコメントであり、次回登板では間違いなく、広いコースでの投げ分けが行われるだろう。また、ドラゴンズ戦ではストレートの球威は回を追うごとに増していき、スライダー、フォークといった変化球は全て、見事なまでのキレを放っていた。足りなかった部分と言えば、打者の近めに投げ込む「勇気」だけだ。それこそがプロ2年目を戦う若武者が超えなければならない課題といえる。そしてその課題をクリアした時、いよいよ潜在能力を存分に発揮できることと、信じたい。

昨年、シーズン最終戦でプロ初登板し、自責点5で完膚なきまでにK.Oされたことは記憶に新しい。だが、既に「プロの洗礼」は充分に受けている。2シーズン目は、さらに多くのチャンスを掴み、結果を残していくだけだ。首脳陣、さらには多くのファンの期待は開幕1軍、開幕ローテ入りへ向けられていて、若き「エース候補」奥川恭伸はその想いに応えるだけの力は間違いなく持っているはずだ。悔しさをバネに、背番号11は更なる飛躍を遂げる。(佐藤文孝)

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