サッカー日本人選手の海外移籍について



新年早々、欧州で活躍する日本人選手のビッグニュースが飛び込んできました。イングランドプレミアリーグ、ウォルバーハンプトンに、日本人プレーヤー、川辺駿選手の加入が発表されました。先日までスイス1部リーグ、グラスホッパーの一員だった26歳の川辺選手、ウルブスの愛称で知られるイングランドの古豪へと見事なステップアップを果たしたのです。

今後は、5月のスイスリーグが終了まで、期限付き移籍の形でグラスホッパー所属となるものの、来シーズンからはウルブスで本格的に現世界最高峰リーグであるプレミアリーグのピッチに立つことになりそうです。昨年夏の欧州移籍からわずか半年、己の実力でビッグチャンスを掴み取りました。

今季は他に、多くの欧州所属選手の活躍が目立つシーズンと言えるでしょう。同じくイングランドプレミアリーグ、アーセナルの冨安健洋選手、リバプールの南野拓実選手はビッグクラブでの結果を残し続けています。またスコットランドの名門、セルティックでも昨年から加入した古橋亨梧選手がゴールを量産、すでにチームの中心として得点能力を発揮しており、ドイツブンデスリーガ、シュツットガルトの遠藤航選手はキャプテンとしてチームを牽引する存在です。イタリア、サンプドリアの吉田麻也選手も、クラブ、さらに代表チームでもレギュラーとして体を張り続けているなど、若手からベテランまで、日本人プレーヤーが欧州で躍動しています。

これまでにないほど、日本人の名がヨーロッパで叫ばれている今シーズン、川辺選手のプレミア移籍で、さらに楽しみが増えたと言えるでしょう。

●海外移籍が「夢」から「日常」に

「ヨーロッパのクラブならどこでも」

そんな声が聞かれていたのはおよそ30年前、Jリーグ発足直後だったでしょうか。当時のJリーガーにとって、海外移籍は夢の、さらに夢という時代でした。

日本代表チームがワールドカップ出場の経験もなかった時代、日本人選手への海外からの評価は決して高くはありませんでした。加えて、海外への移籍のシステムも確立されておらず、有力選手でも国内でのプレーが当たり前であり、冒頭のようなコメントは憧れとともに発せられていた記憶があります。

我々ファンも現在のようにテレビ中継や情報も少なかったことあり、海外リーグは雑誌などで知ることが殆どでした。

その後、1994年に三浦和良選手、そして1998年に中田英寿選手が当時世界のトップだったイタリアセリエAに移籍、そこから少しずつ日本人選手にも海外への扉は開かれていったのです。

すでにアジアの代表としてワールドカップの常連国にもなってきているように、日本サッカー界はここ30年ほどで大きな成長を遂げています。かつて日本代表でのレギュラークラスの海外移籍が続いていた時代を経て、現在は有望視される若手選手の海外への挑戦が増えてきていることもあり、現在はJリーグも、欧州をはじめとする世界各国から選手獲得のための「マーケット」として認められたと言えることは間違いありません。

●日本人が「助っ人外国人」となった日

新年早々のビッグニュースは他にもあります。

古橋選手が活躍を続けるスコットランド、セルティックに、さらに3人の日本人プレーヤーが加わりました。前田大然選手、旗手玲央選手、井手口陽介選手の3名です。

前田選手は昨年のJリーグ得点王の実績を引っ提げての入団、古橋選手との2トップ共演がみられるか今から楽しみです。旗手選手も王者・川崎フロンターレのレギュラーであり複数ポジションをこなせるユーティリティプレーヤー、井手口選手は過去、スペイン、ドイツなどプレー経験もあるなど、3人ともすでに地元ファンからの大きな期待が寄せられています。

現在、セルティックはリーグ戦の折り返しの段階であり、首位を争う位置につけています。今後、宿敵であり、トップを走るレンジャースに追いつき、首位の座を奪うための、大きな戦力として日本人選手の力を求めたことも明らかです。スコットランドリーグは「欧州5大リーグ」には属さず、サッカー界においても中堅国と位置付けられますが、ヨーロッパで日本人の若手選手が「助っ人外国人」として、プレーする時代が訪れたことは、やはり日本サッカーの成長の証と言えるでしょう。

●Jリーグの「底上げ」の為には?

海外にばかり目が行くことは、決して良いことばかりではなく、内側に目を向けることも大切に思えます。つまりJリーグのさらなる発展、我々の国のプロサッカーリーグを盛り上げていくことは何よりも重要です。

期待の若手が飛び出してくことが、日本サッカーの実力の向上につながるのならば、「底上げ」のためには何が必要なのか。著名な外国人選手を呼ぶことも方法の一つでしょう。

しかし、選手やリーグ関係者、そして現場だけの問題ではないような気がしてなりません。Jリーグの理念にもある地域密着、つまり我々ファンなどの観客がさらに目を向けることも必要となってくるのではないでしょうか。

コロナ禍の現状、スタジアム観戦もままならない状況ではありますが、ファンは常にサッカーに対して関心を持ち続けること、それこそが重要となっていくはずです。(佐藤文孝)


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