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「おすし」の「お」_2024年3月12火/雨

いえね、このごろ、日本にきた外国観光客のインタビューをよく見ていて。
日本の思い出はと聞けば、
たいていは食べものの話になるわけです。
話を聞いていると、
日本グルメといえば「鋤焼き・天麩羅」だったのは昔のことみたいだ。
それよりも、
「やきにく」が美味しかったです、とか
「おこのみやき」のファンになりました、とか
えぇと、あれはなんだっけ…、そうそう、「ぎんなん」? とか
「ちゃわんむし」
「かしわ」
「きむち」なんて、
どこで知ったの? という食べものの名が出てくるから驚く。

ほかにも、
「すし」を食べるのがたのしみです、
「すし」は初めてですか?
はい、わたしは「すし」に憧れていました。
という、やりとりもある。
ここでいう「すし」は、握りでも太巻きでも回転寿司でもよくて、
酢飯と魚なりのネタの組み合わせのことを指している。
「すし」は旨いし、わたしも好きだ、
でもねぇ、それを言うなら「すし」ではなく、
「おすし」だと思うのだ。
だって、日常の会話のなかでは
「誕生日だからお寿司にしよう」
「お寿司屋さんが開店したよ」
と言うでしょう(男の人もそうだよね、ね)?
「寿司が食いたいねぇ」というのは落語の台詞だ。
だから、「すしが好き」「すしを食べたい」と聞いていると。
意味はわかるけれど、ちょっと、なにがなにする違和感がしてしまう。
「すし」と似たものに、「もち」もある。
昨日は京都で「もち」を食べました。
「もち」、ではなく、「おもち」。
「すし」も「もち」も、一文字だけ「お」がないのが惜しい。

相手は観光客なのだから細かいことを言うのもなんだね、
というのはわかるし、わたしもそう思うことはある。
だけど、ね、
外国観光客がお箸さえ使って食事するようになったいま、
日本のことを知りたいと思ってくれる人が増えてるようないまなら、
そろそろ、「お」をつける微妙な違いを
知ってもらってもいいのではないか。
と、ここまで書いていま気がついた。
「すし」も「もち」も、なんで「お」をつけるのかといったら、
思うに、それは語呂がいいからではないか。
きっと諸説あるだろうけど、
「すしを食べる」より
「おすしを食べる」のほうが言いやすいから
わたしたちはそうしてるよね。
そういう、「普段生きてる名前」を
日本旅行のお土産にしてあげるといいんじゃないかなぁ。

いま、パリとニューヨークで「おにぎり」がブームという。
「にぎりめし」ではなく「おにぎり」。
部屋着のようになんの意識もしないような
「おにぎり」という名で出ていったのがうれしいなぁ。




よんでくださった方、ありがとうございます! スキをくださった方、その勇気に拍手します! できごとがわたしの生活に入ってきてどうなったか、 そういう読みものをつくります! すこしでも「じぶんと同じだな」と 思ってくださる人がいるといいなと思っています。