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マラドーナのラストパス

中学時代にむさぼるように読んだ本について。

いったい何回読んだんだろうなあ。あんなにワクワクした本、もしかしたら最初で最後かもしれない。絶版となって久しい、サッカー少年向けの技術書『マラドーナのスーパーサッカー』です。不世出の天才マラドーナが、かなり詳細な連続写真とともにボールの蹴り方、ヘディングのポイント、リフティング上達のコツ、フェイントのパターン、試合中のアドバイスなどを語る、いま考えてもかなり贅沢な一冊でした。サッカー少年としてのぼくは、監督から学んだことよりも、この本から学んだことのほうがずっと多かったと思います。

なかでも、中学生ながらに膝を打ちまくったのが、センタリングについての言及でした。いまは手元にないので記憶を頼りに書きますが、おおよそこんな趣旨のことばです。

「みんな、センタリングをあまりにおろそかにしている。とりあえずゴール前に強いボールを上げればそれでいいと思っている。でも考えてくれ。普段きみたちは、そんなめちゃくちゃにパスを出しているかい? センタリングというのは、ゲームのなかでいちばん大切なラストパスなんだよ」

サッカーをやってると、あるいはサッカーを観てるとわかることですが、センタリングって「上げること」が目的になりがちなボールなんですよね。そこまでは相手をめがけてかなり正確に、ボール1個分のずれも許さないくらい正確にパスをつないできたのに、センタリングになった途端、いきなりパスではなくなる。ギャンブル性の高い、「とりあえずあのへんに上げました」なボールになってしまう。それに対してマラドーナは「いちばん大切なラストパスなのに、どうしてそうも雑になるんだ?」と怒るわけです。

あれがほんとうにマラドーナのことばだったのか、編集としてクレジットされていたサッカージャーナリスト富樫洋一さんのことばだったのかはわからないけど、「センタリングはいちばん大切なラストパス」の発想は、いろんなところで役に立つ気がします。

ほんとはセンタリングという用語についての説明を入れつつ書くべきなんですけど、ごめんなさい、サボりました。