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共同運営マガジン~ふくのわ~

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「繋がる、広がる、楽しく続ける」を目的に発信します! 【「ふくのわ」由来】 「ふく」は「福(幸せ)」 「わ」は「輪」「和」「環」 福(幸せ)な繋がりが広まっていくことを願って … もっと読む
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#毎日note更新

ふくふくの共同運営マガジン『ふくのわ』はじめました

ついに「共同運営マガジン」をはじめました!参加は無料です! マガジン名は『ふくのわ』です。 立ち上げた理由note歴約6年。「みんなで創作を続けることが楽しい」とシンプルに感じたので「良いことは広めよう!」と思い立ち上げました! 私自身、記事を書いても書いても鳴かず飛ばずの時期がありました。それでも創作を続けることが出来ているのは、支えてくれた方たちがいたおかげです。 一人じゃ続かない。みんなとなら続けられる。みんなとなら可能性を広げられる。 「可能性にわくわくした

【連続note小説】日向食堂 小日向真司18歳

真司は高校を卒業した。 文枝には苦労を掛けてしまったが、思い返せば楽しいこともたくさんあった。 高校に通わせてくれた母に心から感謝した。 “お母さん、ありがとう” これからは苦労を掛けた分、母に楽な思いをさせてあげなければならない。 友達はみんないいやつばかりだった。 真司は弁当を自分で作って持ってきていた。 真司が新聞配達でトラブルを起こして、弁当を作れなくて、昼ごはん食べれなかったとき、友達がカンパして昼ご飯代を捻出してくれた。 お金がなくて真司が体育用の冬用ジャージ

【連続note小説】日向食堂 小日向真司17歳

真司が夕刊の配達を終えて、家路を急いでいた。 その途中の公園で、一人の男が数人の男から暴行されていた。 真司はやられている男の顔を垣間見た。 忘れもしないあの男の顔、真司の小学校生活を台無しにしたあの男。 稲本武敏だった。 数年ぶりの再会だったが、この男のことは忘れようにも忘れられない。 「おれには関わりない」 真司はそのまま通り過ぎようとした。 しかし気が付けば引き返していた。 真司に加勢してもらった稲本は立ち上がり、二人で不良たちと戦った。 やがて警官が駆けつけてきた

【連続note小説】日向食堂 小日向真司16歳

公立高校に合格した真司は、晴れて高校生になった。 野球はしたかったが、文枝に気兼ねして部活には入らなかった。 少しでも学費の足しにしようと、新聞配達のアルバイトをした。だから友達と遊びに行くようなことはなかった。 真司は気のいい性格だったから友達は多かった。 「真司、たまには遊びに行こうぜ」 ある冬のこと、同じクラスの友達にスケートに誘われた。 文枝にそのことを打ち明けると、文枝はなけなしの財布から小遣いをくれた。 真司はクラスの友達と出掛けることになった。 みすぼらしい服

【連続note小説】日向食堂 小日向真司15歳

真司は野球が好きだったが、結局中学の三年間で部活をすることはなった。 そんな時間があれば勉強しようと思っていた。 少しでもいい職に就いて、母を楽にしてやりたかった。 しかし高校に行くには、学費が必要になることを真司は知った。 「お母さん、ぼく、高校に行かなくていいよ。働いてお金を稼ぎたいんだ」 真司はあえて学費のことを口にしなかった。 「高校には行きなさい。お金はそれからでも稼げるから」 文枝は真司の気持ちがわかっていた。 「でも高校に行ったら学費がいるだろ。それに歳之だっ

【連続note小説】日向食堂 小日向真司14歳

ある日、歳之が熱を出して寝込んでしまった。 「インフルエンザじゃない。困ったなぁ」 文枝は歳之の看病をしたいが、仕事を休む訳にいかない。 休めばその分だけ給料が減るし、仕事を失う心配もあった。 「お母さんは仕事に行きなよ。ぼくが看病する」 「お前は学校に行かないとダメだよ」 「お母さん!」 真司は真顔で話し出した。 「インフルエンザは看病した人に移る。お母さんが倒れたら大変なことになるよ。ぼくが寝込んでも学校を少し休めば、勉強はいくらでも取り戻せるから。お母さんだけのため

【連続note小説】日向食堂 小日向真司13歳

冬の寒い夜だった。 文枝はパートの残業で夜遅くなるから、真司と歳之は二人で晩御飯を食べることになった。 ご飯は真司がガス窯で焚いた。 この頃は電子レンジなどなかったから、二人は冷めたコロッケを食べなければならない。 皿に載せたコロッケを食卓へ運ぼうとして、歳行が謝って床に落としてしまった。 コロッケはぐしゃぐしゃになった。 歳之は泣き出した。 真司は自分のコロッケを歳之に渡して、ぐしゃぐしゃになったコロッケをもう一度皿に載せるとそれを自分で食べた。 夕ご飯を食べてから、中学

【連続note小説】日向食堂 小日向真司12歳

文枝は誠司が死んだ後、パートを掛け持ちして生計を保っていた。 歳之も小学校に通うようになり、何かと出費がかさんだ。 文枝は食費を浮かすために、いつの間にか朝と昼の食事を抜くようになっていた。 ある朝のことだった。 二人の息子を小学校に送り出し、自分もパートに出掛ける準備をしていると、食卓の上に何かが紙で包まれた状態で置いてあった。 文枝はそれを恐る恐る開いてみた。 その中身は給食で支給されるコッペパンだった。 真司は文枝が痩せていくことに気が付いていた。 自分の食費を浮か

【連続note小説】日向食堂 小日向真司11歳

稲本らのいじめは日を追うごとにエスカレートしていった。 真司に対しては陰湿ないじめを繰り返した。 無視をする、私物を隠す、机に落書きをする・・・。 吉田には相変わらず直接的な攻撃を仕掛け、真司が事あるごとに吉田をかばった。 吉田はその度に真司に詫びた。 真司は謝る必要はないと吉田に力強く言った。 そんな真司を見ていた他の生徒たちは、心を痛めるようになった。 そして一人、また一人と真司の側につく生徒が現れ出した。 真司は毅然としていた。 味方ができたからと言って稲本に逆襲

【連続note小説】日向食堂 小日向真司10歳

真司は学校でいじめられている子を見た。 友達の名は吉田浩二、真司とは違うクラスだったが顔くらいは知っていた。 背が低く、ひょろっとした身体だったから、身体的なことでからかわれていた。 真司はその横を通り過ぎようとしたが、吉田が後ろから蹴られて前のめりに倒された姿を見た。 真司は足をおさえて泣きそうな顔をする吉田を抱き起してやった。 「小日向、そんなやつ、助けたって何の得もないぞ」 そう言ったのはいじめの主犯格である稲本武敏だった。 「寄ってたかっていじめるなんて卑怯だぞ。

【ショートエッセイ】ずっと心に残り続ける曲

何度聞いても飽きない曲がある。 何年も聴き続けているのに、いつも新鮮に聞くことができる。 ぼくはその曲を集めて、スマホに登録して毎日のように聞いている。 曲調が凝っているわけでもない、詞が奇抜な訳でもない。 なぜか聞くたびに心の中にスッと入ってくる。 たぶん誰にもそんな曲ってあるんだろうなぁ。 一回聞いただけで虜になってしまう。 その人のその時の感性と心情に訴えるメロディーと歌詞があるのだろう。 それはすごい確率だ。 人の心は移ろうもので、その時に置かれた環境で変わっ

未来が不安になった時に読むエッセイ

人生には節目というものは必ずやってくる。 最初は幼稚園に入園する時だろうか。 幼い子供が親から離れて、身も知らない世界に一人足を踏み入れる。 小さな足で小さな勇気を振り絞って。 そして小学校へと歩みを進める。 幼稚園に一人で行けたことが自信になって、新しい節目を乗り越えていく。 この節目は中学、高校と難易度を上げていく。 幼稚園でお遊戯ができていたからと言って、どうにかなるものではない。 でもこのちょっとした自信の積み重ねは、人が生きていく上で心の糧となる。 失敗して前

【連続note小説】日向食堂 小日向真司8歳

文枝の様子がおかしくなったのはこの頃だった。 真司はあれほど手が掛からなかったのに、歳之にはほとほと手を焼いた。 気に入らないことがあるとすぐに泣きだし、言うことを聞かない。 それに誠司は仕事が忙しくてなかなか家にいない。 文枝のストレスは限界を超えていた。 ある日、ほんの出来心で立ち寄ったパチンコにそれからも通い出すようになった。 それがエスカレートして、真司と歳之を家に置いたまま出掛けることが増えた。 ひどい時は何時間も返って来ない。 ある日のことだった。 文枝がパチ

【連続note小説】日向食堂 小日向真司7歳

誠司はたまの日曜日くらいが真司の相手をしてやろうと思った。 誠司は文枝と二人の息子を連れて近所の公園に出掛けた。 「真司、キャッチボールをするぞ」 家から持ってきたゴムボールを真司に投げてやった。 「ぼくはいいから、歳之と遊んであげていいよ」 「今日は真司とキャッチボールがしたい気分なんだ」 “俺といる時は気を使わなくていいんだぞ、真司” 誠司は心の中でそう思った。 二人はゴムボールでキャッチボールを始めた。 この頃は巨人の長嶋や王の全盛期だったから、親子はたかがキャ