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トーク「ふくし × デザイン × 編集」をふりかえる!【ふくしデザインゼミ 2022-23】

こんにちは!ふくしデザインゼミメンバーの佐藤です。

9月11日(日)、ふくしデザインゼミ関連トーク「ふくし × デザイン × 編集」を開催しました!本ゼミの講師であるライター・小松理虔さんとデザイナー・田中悠介さんに、編集者・影山裕樹さんを加え、福祉とデザイン、編集の「交差点」を多角的に考える2時間。この記事では、トークイベントの内容を簡単にご紹介させていただきます!

イベントページは下記のリンクよりご覧いただけます
https://fdsemi2022-talk.peatix.com/

■ ゲストのプレゼン

はじめは、ゲストのお三方のプレゼンテーション。「編集とは」「デザインとは」「いまの社会やローカルにおいて、デザイン・編集に求められる役割とは」「ふくし・デザイン・編集の交わりとは」といった問いを深める、事例や思考の断片がたくさん。

それぞれのことばのなかから、印象的なフレーズをご紹介します。

影山 裕樹(かげやま ゆうき)さん

影山さんは、ローカルメディア研究者で、「EDIT LOCAL」など実践的なローカル編集プロジェクトで知られる編集者。千十一編集室の代表です。

「社会の分断や孤立が深まるなかで、情報の発信者と受信者を媒介するメディアは、公共性や間を生み、異なるものどうし、異なるコミュニティをつなぐ手段です。いかにあたらしいひとに出会いつながるか、つまり、〈情報の編集〉から〈関係の編集〉に、メディアの意味や役割は拡張しています。そのため、アウトプットの質だけではなく、その過程における関係の編集やコミュニティデザインが、大切になってきます。」

「メディア」と言われてまず思い浮かべるのは、テレビや新聞などのマスメディアでした。けれどメディアは、ソーシャルワーカーや地域コーディネーターがまちのなかで担うような、発信者と受信者、中心と周辺、人と人、ものごとを媒介することも大切な役割だとわかり、メディアに対する認識がぐっと広がりました。

小松 理虔(こまつ りけん)さん

小松さんは、福島県いわき市を拠点に、編集や情報発信を起点にした活動を展開するローカルアクティビスト。ヘキレキ舎の代表です。

「編集とは、別の文脈をつくりだすこと、すなわち、外部的な目線を取り入れてみること。よそ者目線を取り入れることで、他の領域との回路がひらかれたり、無関係に思われた事象が関連付けられたり、問題を整理して意味づけられたり。ひとごとだったことがじぶんごとに変化していくこともあります。当事者性の高い福祉を、よそ者目線で編集することで、〈する/される〉の関係を越え、福祉がひらかれ、新たな共事者を獲得していけるかもしれません。」

福祉は自分と無関係だと思っている人は、私の周囲にもたくさんいます。私の場合は、デザインや編集とは無縁だと思って生きてきました。けれど、「あれ、実は関わってる?」「実はこんなことに役に立つかも?」といろんな領域が手を取り合っていくことで、足りないものを補い合ったり、より豊かな表現・活動を生んでいけるような気がします。ふくしデザインゼミを通して、さまざまなものごと、社会に「共事的」に関わる仲間を、広げていけたらいいなと思いました。

田中 悠介(たなか ゆうすけ)さん

田中さんは、多領域の課題解決に取り組むデザイナー。design との代表で、SOCIAL WORKERS LAB のアートディレクターでもあります。

「デザインとは、社会との関係性をつくること。いいデザインとは、ものごとの本質をつかみ、ふさわしい関係性を築いているかどうか。例えば、店舗をデザインするとき、ロゴや料金などの案内のみせかた=まちとの関係、そこにやってくる人がどんな体験をするのか=お客さんとの関係、つかう食材、材料=社会との関係、を考えます。あらゆる領域の課題に対して、ニュートラルな視点を持ち、前提条件や常識、当たり前を疑いながら取り組んでいきます。」

デザインは、目に見えるものを設計すること、かたちにすること、というイメージが強かったですが、その背景には、ものごとの本質をつかみ、どう周囲にみせるのか、どんな関係性を築くのか、といった目に見えないプロセスがあることがわかりました。
図鑑づくりが、福祉やデザイン、編集の本質をどんなふうに捉えていけるのか、楽しみです。

田中さんのデザインに対する考え方をもっと知りたい方は、こちらのnoteも是非みてみてください!

■ クロストーク

プレゼンのあとは、イベントを主催するSOCIAL WORKERS LAB ディレクターの今津新之助さん、社会福祉法人武蔵野会 相談員の山田真由美さんを交えてのクロストーク。ふくしデザインゼミが、社会やわたしたちにとってどのような意味をもち得るのか。やりとりの一部をご紹介します。

* * *

山田:相談員をしているなかで、SOSを出せない人に、どうつながったらいいのだろうと考えています。人と人とのゆるやかなつながりのなかで、困っている声を拾い上げられたらいいなと。
支援する/される関係は簡単には揺らがないけれど、人として対等でありたいと願い、つねに悩み葛藤しています。就職活動における、採用する/される関係にも同じ悩みを抱えていて、これって武蔵野会らしいのかもしれないと気づきました。

今津:武蔵野会の理念は、「自分を愛するように、あなたの隣人を愛せよ」。施しの隣人愛、ではなく、自分自身を変えることによって人との関係がよりよくなっていくという意味です。「する/される」を越えたところにむかっていることに、武蔵野会らしさがあるように感じます

田中:「ふくしに関わる人図鑑」では、サービスとしての「福祉」にとどまらない、あらゆる人たちの暮らしやすさ生きやすさを包み込んで考える「ふくし」に関わる人を取材し、記事にしていきます。ひとりひとりのらしさをきりとることで、行間から伝わるものになるんじゃないか

小松:ものをつくって一方的にうりさばくのではなく、他者との関わりの中で揺らいだり変化したりしながらものがつくられていく。取材する/される関係をこえて時間をともにしつつ、ひとのままならなさ、生き様を面白がっていく。
そうして福祉のなかにとびこむことで、自分や他の領域に跳ね返って、変化してかえってくるようなプロジェクト。

影山:人物図鑑が、施設と地域の間の乗り物になって、利用者、スタッフ、近所の人、学生の関わりしろをつくっていけるといいですね。関わる時間を増やすということが、約束事や契約によって結ばれる安心安全の関係性ではなく、本質的な信頼関係を築いていくことにもつながる。

* * *

する/されるの関係を越え、他者との関わりあいの中で自分自身が変化したり揺らいだり、その人らしさ・人間らしさを切り取ってみたり、間に在ることで多様な人々の関わりしろや、ゆるやかなつながりをつくったり。

そんな「ふくしデザインゼミ」自体が、学生・法人・利用者・地域の人といった立場の垣根、福祉・デザイン・編集といった領域の垣根を越えた場や機会を紡ぎ、それぞれの間に関係をつくりだす、ソーシャルワーカーのようなメディアになっていくのかなと、わくわくしています!

■ アフタートーク

2時間のウェビナー型の本編を終えたあと、さらに2時間半にわたって参加型のアフタートークを行いました!

武蔵野会の高橋理事長、津川さん、菅さん、山田さん、登壇者のお三方、そしてこのプロジェクトに関心をよせてくださった学生さん10名近くが参加し、それぞれが感じたこと、考えたこと、このプロジェクトへの期待感を共有しました。

領域や立場を越えて出会いつながる場を、プロジェクトを通してさらに広げていけたらと思います。

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