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福祉もデザインも、思っていたより広かった|小杉真由|2023-24 essay 16

こんにちは。ふくしデザインゼミ・コーディネーターの佐藤です。「ふくしデザインゼミ 2023-24」では、28名のゼミ生とともに、東京八王子、伊豆大島、滋賀高島、長崎諫早の4地域をフィールドに〈福祉をひらくアイディア〉を考えました。3月3日、東京・赤羽で、アイディアを発表する公開プレゼンテーションを終えてからはや2か月が経とうとしています。

essay 12からは、2ヶ月のプログラムを終えたゼミ生たちの言葉をご紹介しています。今回は、田中ゼミのこっすーのエッセイ。正解のない世界を歩んだ6日間の日記です。

なにかに挑戦してみたい|12月20日

大学生活に慣れ、あっという間に4年間が終わってしまう気がしていた。
1年生のうちに何かにチャレンジしたいという気持ちが強くあった。

コミュニティサロンでボランティアをしたのはもう2年前、高校2年生の夏休み。高齢者の方々と話すなかで、「地域には小さな困りごとを抱えた人が沢山いるのではないか」と思うようになった。気軽に相談できる地域づくりやコミュニティづくりに貢献したいという目標ができ、福祉を学びたいと東洋大学の福祉社会デザイン学部に進学した。

ふくしデザインゼミでは、「福祉をひらくアイディアを考える」という。福祉について学んできたものの、「福祉をひらく」という言葉を聞いたことがない。自分の知らない地域に飛び出して、それがどういう意味なのか追求してみたい。

ドッキドキのキックオフ|1月13日

緊張度MAXのなか、2日間のキックオフキャンプが始まった。
なかでも印象に残ったのは、

①  他人に迷惑をかけてはいけない
②  頑張らなければ報われない
③  無責任なことをしてはいけない

の3つのテーマについて、ゼミ生や法人の職員さんと話し合ったこと。

「努力するのは大事だが、報われるかどうかとは切り離して考える」という意見に共感したり、「人に迷惑をかけると新しい発見があって嬉しい」という意見に驚いたり、色々な感情が入り混じる時間だった。

私は、迷惑をかけることはよくないと思っているから、180度異なる視点を持っている人の話を聞いて、少しモヤモヤを感じた。これが、ゼミがスタートして初めてモヤモヤした瞬間だったかもしれない。

講師の竹端寛さんが、①~③のテーマについて、前に出て来たゼミ生と1対1で話す、(「徹子の部屋」ならぬ)「寛子の部屋」。勇気を出して前に出てみた。

モヤモヤが消えたわけではないけど、自分の思いを吐き出したことでスッキリした。

寛子の部屋、前に出て話してみた

ゼミ活動がはじまった|1月16日

キックオフキャンプの熱が冷めないうちに、個別ゼミでのオンラインミーティングが始まった。

私の所属する田中ゼミのゼミ生は、社会人2人と学生5人。1年生だった私は当然最年少。他のゼミ生に比べ知識も経験も浅いだろうし、迷惑をかけないように頑張ろうと意気込んでいた。けれど、遠慮して自分の意見を思うように発言できずに、落ち込んだこともあった。

そんなとき、あるゼミ生が雑談会を企画した。通常のミーティング以外に、毎日のようにLINE通話が開催されていた。
これによって、ゼミ生同士の仲が深まり、私も、自分を出せるようになった。次第に意見も言えるようになっていった。
今思えば、この雑談会の存在が自分を変えてくれた気がする。

徐々に打ち解けて話せるようになっていった、オンラインのゼミの様子

モヤモヤしている|2月2日

何度かの雑談会を経て距離が縮まったメンバーで、3回目のミーティング。

田中ゼミのテーマは「福祉拠点をまちにひらく」ことだったけど私たちは、「『ひらく』って何?」「そもそもなぜひらく必要があるのか」について立ち戻って話し合った。

これまで、学校生活の話し合いの場では、最後には「結論を出す」ことがあたりまえだった。だからここでも、すぐに答えを探そうと焦ってしまったり。フィールドワークで何をするのか、あえて細かい計画を立てないのが不安だったり。答えのない問いや課題に向き合う難しさに直面し、モヤモヤしている。

考察|2月12日
以降もモヤモヤは私の心に何度か現れたし、それらは解決しなかった。むしろ私は、無理に解決させようとは思わなくなってきた。
フィールドワークに行ってみたら、モヤモヤの正体が分かり、解決するかもしれない。そう考えると、よりフィールドワークが楽しみになっていった。

いざフィールドワークへ|2月15日

モヤモヤとワクワクを抱えたまま、私たちは舞台となる滋賀県高島市へ向かった。社会福祉法人ゆたか会さんのご協力のもと、田中ゼミはふくしをひらく実践をいくつか行うことができた。

たとえば、「フィールドワークの日がバレンタインデーだから、出会った人にチョコレートを渡したい」というアイデア。チョコを貼り付けたメッセージカードを渡すことになった。やる前は思いもしなかったが、これが結果的に「ふくしをひらく」ことにつながっていた。

というのも、私はこのチョコ付きカードを通して、人の優しさに触れ、幸せな気持ちになった。

手書きのメッセージ付き!

昼食を食べたお店の店員さんにこのカードを渡したら、箱に入ったチョコレートをもらったり、街中でインタビューさせてもらった高校生に渡すと、お返しにといってマフィンをくれたり。

わらしべ長者になったような気分。地域の人の温かさを感じた。チョコレートを渡したことでお互いが笑顔になれた。

チョコレートをきっかけに、道行く人に話しかける
インタビューさせてもらった高校生にもらったマフィン

このような驚く体験を通して、福祉の幅の広さに気づいた。

「福祉」という言葉を聞くと、自分には関係ないと思う人が多いかもしれない。でも、福祉のサービスを使っていなくても、こんなにもちょっとしたことで、人は出会えるし、つながれるし、笑顔になれる。私は生きている限り、すべての人が福祉の対象だと考えるようになった。

フィールドワークを終え、日常生活の中にふくしは溢れているし、生み出すこともできると実感している。

デザインとふくし|3月3日

フィールドワーク後、この2ヶ月をふりかえり、12分間の発表にまとめてきた。福祉をひらく実践を積み重ねるうちに、私たちがフィールドワーク前に抱えていた、「ひらくとはなにか」「どうしてひらくのか」みたいなモヤモヤは消えていった。

そう、モヤモヤしていても、何も始まらない。とりあえず手を動かしてみた結果、見えてきたことが多くあったのだ。この経験は忘れないだろう。

公開プレゼンに向け、田中ゼミは、「どうしたら福祉がひらくのか」アイデアを考え、レシピ化した。ゼミ生が団結してレシピを作成するなかで、私のデザインに対するイメージも変わっていった。

今まで、デザインは技術がないとできないイメージが強かったが、物をつくったり、絵を描いたりすることだけがデザインではないのだ。人と人との関係性をつくるのも、場のひらき方を考えるのもデザインなのだ。デザインと自分との距離が縮まったように思う。

アイデアを出し合い作った「ふくしをひらくレシピ」

「地域共生社会」が求められる今、地域をどうデザインするか、が大事だと思う。空き家や空き店舗をリフォームして地域活性化につなげていったり、地域の人々が世代を超えてつながれて、生きがいを感じられる場所を生み出したりするにもデザインが重要になると感じている。

「福祉をひらく」という言葉に興味を持って飛び込んだふくしデザインゼミで、福祉やデザインのイメージが大きく変わった。今後も高島に関わりつつ、自分の住んでいる地域の課題などにも目を向けてみたい。

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|このエッセイを書いたのは|

小杉 真由(こすぎ まゆ)
東洋大学福祉社会デザイン学部2年

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