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クレジットカードの収益の仕組みを知っていますか?~銀行の「マーケティング」と「営業企画」の教科書~

クレジットカードを利用すると、通常ポイントが貯まりますよね。
そのポイントの原資は誰がどのように負担しているかご存じですか?
そう、実質的には「利用したお店」が負担しています。
本noteでは、クレジット会社の収益の仕組みやPayPayとの違いについて確認していきたいと思います。

<ご注意>
今回、シンプルにわかりやすくお伝えするために、VisaまたはMastercardのブランドのクレジットカードを前提に説明いたします(JCB等の仕組みは、少し異なります)。


三井住友カードの戦略は衝撃的!

2024年5月8日、三井住友カードは、中小事業者向けサービスの加盟店手数料を2.70%から実質1.98%に引き下げることを発表しました。

パーセントでお話しするとわかりにくいので、具体的に金額で見ていきましょう。

あるレストラン(加盟店)で、お客さまのカード払いの合計が1ヵ月で1,000万円だったとします。この場合、レストランの経営者は、カード会社に対して27万円の手数料を支払う必要があります。
今回の発表は、この27万円が19.8万円に値下がりするということを意味しています。

実に約27%もの値引き!インパクトは相当大きいですね。

尚、公正取引員会の調査「クレジットカードの取引に関する実態調査報告書(令和4年4月)」によると、加盟店手数料の単純平均値は2.70%とされています。

カード会社の収益は割り勘される

さて、お店(加盟店)がカード会社に一定額の手数料を支払っていることはおわかりいただけたかと思います。
しかし、この手数料は、すべてそのカード会社の収益になるわけではありません。

お客さまがクレジットカードをショッピングに利用した場合、基本的に2つのカード会社が収益を分け合うことになります。

1つは、お客さまが使ったカードを発行した会社です。このカードを発行した会社のことを"イシュア"といいます。

もう1つは、カードを使ったお店と加盟店管理契約をしている会社(決済端末をお店に提供している会社)です。この加盟店と契約している会社のことを"アクワイアラ"といいます。

経済産業省「キャッシュレス関連用語集」より

難しい言葉ですが、銀行員のみなさんはぜひ覚えておきましょう。

つまり、加盟店を開拓し管理する会社(アクワイアラ)とお客さまが使ったカードを発行した会社(イシュア)が別々の会社の場合、アクワイアラからイシュアに対して、手数料が払われることになります。

例えば、三井住友カードの決済端末「ステラターミナル」が置いてあるお店で、楽天カードで決済が行われた場合、三井住友カードから楽天カードへ一定の手数料が支払われるのです。

経済産業省・公正取引委員会の問題意識

経済産業省は、国内のキャッシュレス比率を2025年までに40%まで高めることを目標としています。そのような中、我が国のクレジットカードの決済手数料は、諸外国と比較して高いのではないかという問題意識が示されています。

経済産業省は、アクワイアラからイシュアに支払われる手数料(「インターチェンジフィー」といいます)が不透明なことが、手数料高止まりの一因と考えており、加盟店へ「可能な範囲で説明することが望ましい」としています。

手数料が開示されると、加盟店はカード会社に対し、手数料率の交渉がしやすくなるといったメリットが想定されます。
現時点では、個別の開示は行われていないと認識していますが、いずれ各社は開示せざるを得ない状況になるのではないでしょうか。

PayPayが高収益な理由

さて、三井住友カードの1.98%という手数料率は、PayPayの1.98%(条件によっては1.6%)を意識したものと言われています。
ここまでの説明を聞かれて、同じ1.98%であっても、PayPayの方が高収益であることにお気づきでしょうか?

PayPayの場合、常にイシュアとアクワイアラが一体です。
つまりアクワイアラからイシュアに支払う手数料がなく、1.98%がそのままPayPayの収益になるのです。

キャッシュレス決済の主役は、依然としてクレジットカードです。しかし、大規模なキャンペーンを展開しやすいPayPayは、今後、その比率をさらに高めていくのではないでしょうか。

おわりに

普段使っているクレジットカードの収益の仕組みは、なんとなくおわかりいただけましたでしょうか?

さて、最初に質問した「ポイントの原資」は誰が負担しているのかについて、再度、答え合わせをしてみましょう。

ポイントはカード発行会社(イシュア)が付与します。楽天カードの場合は楽天ポイント、三井住友カードの場合はVポイントです。
手数料は、「お店(加盟店)→アクワイアラ→イシュア」と渡っていき、ポイントの原資となるのです。

銀行員のみなさんは、クレジットカードに限らず、お客さまや自社の収益の仕組みについて、ぜひ関心をもっていただきたいと思います。

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