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極限って何?(「めっちゃ大きくする」から「圏論」まで)【毎日投稿9日目】

今回は「数学を学ぶことで意味が広がったり深まったりする例」を紹介します。
連続投稿…ギリギリ間に合いました。


理系高校生「めっちゃ大きくしたり、何かに近づけたり」


高校の数学では数列 $${\{a_{n}\}}$$ について $${\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}a_{n}}$$ は何か?と尋ねられると
「nをめっちゃ(限りなく)大きくしたときに $${a_{n}}$$ がどのように挙動するか」と答えることが多いです。

この頃は少し"ふわっと"した扱い方が極限ですね。

一部の理系大学生「εδ論法」

「めっちゃ大きくする」では、数学の定式化としては不十分です。
そこで大学一年生で学ぶ微分積分学での極限ではεN論法やεδ論法として精緻に定義が行われます(大学や学部によっては省略されます)。
「任意の」や「ある…で存在する」などの"論理"を正しく押さえておかないと理解できないため、苦戦する大学生が多いようです。

一方で理解してしまえば高校時代よりもできることが非常に増えますし、大学で学ぶ数学特有の精緻な議論の訓練にもなります。

数学科の一部の大学生「図式に対してのuniversality」

数学には圏論という分野があります。
ものすごくざっくり言うと「代数の集まり」や「空間の集まり」など一見異なる"世界"の話に登場する似たようなものたちに統一的な概念を与えたり、異なる世界の橋渡しをして、片方の世界で成り立つ性質をもう片方の世界でも成り立つものであると示してくれる分野です。

その圏論では対象(空間の圏なら一つ一つの空間)と射(矢印。関数や写像のようなもの)の図式(並び方)に対して極限(limit)やその双対として余極限(colimit)が出てきます。

書いていて抽象的だなあ…と我ながら思いました。
まさに抽象的に統一的な概念を考えられるのが圏論です。
これのおかげで数列ならぬ「空間列」の極限などが考えられるようになります。

まとめ

今回は「極限と言っても意味はいろいろあるんです」という紹介でした。
最後の「圏論」の話は代数と幾何を繋いで考える代数的トポロジーではなくてはならない道具ですので、ちょっとでも話せたらと思って書きましたが、雰囲気だけでも伝わればよいなあと思っています。


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ぜひ、そちらもご覧いただけましたら幸いです。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。


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