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和分差分学:(等差)×(等比)の和を微分積分の要領で計算する【毎日投稿7日目】

問題
$${n}$$を自然数とする。
$${\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k\cdot 2^{k-1}}$$ を計算せよ。

上の問題は「2倍してずらして並べて引く」などテクニカルな解法もよく使われますが、今回は別のアプローチをします。


和分差分学?


今回は大学入試の問題としてもしばしば出題される、俗にいう「(等差)×(等比)の和」の問題を階差数列の考え方を用いて解きます。
タイトルに入っている「和分差分学」というのはざっくり言うと微分積分の数列バージョンです。

今回も微分積分の解法と対比させながら解説します。

なお、今回の記事は何年か前にメインサイトの方で体系化して紹介した「和分差分学」の体験版のような内容になっています。
最終的にTaylor展開の数列版などを使って$${\displaystyle \sum_{k=1}^{n}k^{4}}$$などを機械的に計算しています。ぜひご覧ください。

解法1 恒等式から

微分積分の場合
$${\displaystyle \int x e^{x} dx}$$
の計算方法として
$${F(x)=(px+q)e^{x}}$$ とおき、$${F'(x)=xe^{x}}$$ となる $${p,q}$$ を求めるという解法があります。

$$
a_{k}=(pk+q)\cdot 2^{k-1}
$$

とおいたとき、

$$
\begin{array}{}&\,&a_{k+1}-a_{k}\\
&=&\{p(k+1)+q\}\cdot 2^{k}-(pk+q)\cdot 2^{k-1}\\
&=&(pk+2p+q)\cdot 2^{k-1}\end{array}
$$

となります。
そのため任意の $${k}$$ について
$${a_{k+1}-a_{k}=k\cdot 2^{k-1}}$$
となるのは
$${p=1}$$ かつ $${2p+q=0}$$ 
つまり
$${p=1}$$ かつ $${q=-2}$$ のときとなります。

 このとき、$${a_{k}=(k-2)\cdot 2^{k-1}}$$ となり

$$
\begin{array}{} &\,&\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k\cdot 2^{k-1}\\
&=&\displaystyle\sum_{k=1}^{n} (a_{k+1}-a_{k})\\
&=&a_{n+1}-a_{1}\\
&=&(n-1)\cdot 2^{n}-(-1)\cdot 2^{0}\\
&=&(n-1)\cdot 2^{n}+1 \end{array}
$$

を得ます。

解法2 とりあえず階差数列をとる(差分)

微分積分の場合
$${\displaystyle \int x e^{x} dx}$$
について
$${(xe^{x})'=(x+1)e^{x}}$$ から、$${C}$$ を積分定数として $${\displaystyle \int (x+1) e^{x} dx=xe^{x}+C}$$ を得ますが、
これを $${\displaystyle \int xe^{x} dx=xe^{x}-\int e^{x} dx+C}$$ と変形すれば計算できます。
部分積分の導出の考え方ですね。

$${b_{k}=k\cdot 2^{k-1}}$$ とおきます。
$${b_{k+1}-b_{k}}=(k+1)\cdot 2^{k}-k\cdot 2^{k-1}=(k+2)\cdot 2^{k-1} }$$
これより
$${\displaystyle \sum_{k=1}^{n} (b_{k+1}-b_{k}) = \sum_{k=1}^{n}(k+2)\cdot 2^{k-1} }$$
$${\displaystyle b_{n+1}-b_{1} = \sum_{k=1}^{n}(k+2)\cdot 2^{k-1} }$$
から
$${\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k\cdot 2^{k-1}= b_{n+1}-b_{1}-2\sum_{k=1}^{n}2^{k-1} }$$
上式を整理することで
$${\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k\cdot 2^{k-1}=(n-1)\cdot 2^{n}+1 }$$
を得ます。

解法3(発展)部分積分の数列版

解法2をブラッシュアップします。
詳細は次の記事をどうぞ!

まとめ

今回は昨日に引き続き、大学入試でよく出てくるトピックを題材に複数の考え方を紹介しました。

普段はサイトで大学入試レベルや大学入門レベルの数学の記事を書いたり、気が向いたときにYouTubeに動画を投稿しています。
ぜひ、そちらもご覧いただけましたら幸いです。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。


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