見出し画像

The best is yet to be, と 幸福は一夜おくれて来る。

Grow old along with me!
The best is yet to be,

これは英国人詩人ブラウニング(1812-1889)の詩"Rabbi Ben Ezra"(『ラビ・ベン・エズラ』)の冒頭です。日本語に訳すとこのような感じ。
ともに老いてゆこうじゃないか!
最高の人生はまだ先にある、
(岩波書店『対訳ブラウニング詩集』富士川義之編より)

この詩を知ったきっかけは朝ドラ『花子とアン』です。
女学校の卒業式で、ブラックバーン校長先生が卒業生に向けて話したスピーチの冒頭部分でした。このスピーチが印象的で、今でもよく覚えています。(「ブラックバーン校長先生」で検索すると英文を載せてくれているページあるのでぜひ見てみてください)
校長先生はこの詩を引用して、未来は明るいのだから、学生時代はよかったなどと懐古してくじけないように、と卒業生にエールを送りました。放送当時、大学生だった自分にはあまりピンときませんでしたが、社会に出て働いていると確かに高校・大学時代が一番楽しい時期だったように感じられます。でも、思い出は力にするものであり、うらやむものではない。
because the best things are never in the past, but in the future.
最上のものは過去にあるのではなく、将来にあるのだから。
そういうことですね!

幸福は一夜おくれて来る。

こちらは太宰治の短編小説『女生徒』の中の一文。
幸せが訪れるのをずっと待っていても来ない。耐えきれなくなって家を飛び出したら、その翌日に幸せが空っぽの家にやってくる。つまり、幸福は自分には一生やって来ない……。
自身の報われなさを悲観するような一文です。似たような言葉で書かれているのに、ブラウニングの楽天的な詩とは対照的でおもしろいと思いました。

太宰の『女生徒』は表題作を含めて全篇、じめじめした女性の感情がびっくりするほどさらけ出されていて、自分のダメなところが全部書かれているような気がしてしまう。笑
でも太宰がこれを書けるということは、男性もある種のこのじめじめ感を心に飼っているのでしょうね。もちろん、太宰は特にそれに敏感な方で、そうでない男性も女性もいるのでしょうけれど。

ブラウニングのような楽天さもほしいし、太宰のような繊細な部分も無視したくない。たまに落ち込んだときは自分の負の感情を認めてあげつつ、最後には前を向けるようにしたいですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?