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「神様は軽い」─『評伝フィリップ・ジョンソン 20世紀建築の黒幕』

今日の建築の姿を決定づけた知られざる黒幕の生涯を描き出す傑作評

MoMAの初代キュレーターに就任、世界的な潮流となった建築展を仕掛けた男。
アメリカのヒトラーにならんとした男。
現代美術と建築の世界で知性とカネの力をふるった男。
建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞をはじめて受賞した男。
ミースへの憧れとコンプレックスに引き裂かれていた男。
ドナルド・トランプと協働しアメリカの都市風景を変えた男。

いまだ見学者の途絶えないモダニズム建築のアイコン〈ガラスの家〉の設計者であるフィリップ・ジョンソン。
数えきれない称賛の一方で、非難も多い。
いわく、建築をデザインの遊びに貶めた、権力に心酔するファシスト、気まぐれな金持ち仲間のお遊び……。 アメリカで最も憎まれ、最も愛された男の規格外で行方しらずの情熱を描く一冊!

建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞初代受賞者であり、建築家・キュレーターなどさまざまなキャリアを持つフィリップ・ジョンソン。

「近代建築:国際展」(1932年)やシーグラム・ビルディングの設計などでモダニズム、AT&Tビルディングなどでポストモダニズムの中心人物となり、生涯を通して矛盾とも言える対極的な活動を行った。
AT&TビルはPS4ゲーム『Marvel's Spider-Man』に登場するほどにNYではポピュラーな建物だ。

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1979年のニューヨークタイムズの表紙にこの建築の模型を抱えたフィリップ・ジョンソンが登場、1980年にヴェネツィア・ヴィエンナーレで模型が一般公開されたことでこの建物は一気に知られたという。

本書では、神経衰弱気味だった幼少期から政治活動へ身を投じた青年時代、幅広い人物ネットワークや数々のゴシップなどさまざまなエピソードを積み上げていく。20世紀のアメリカ建築文化と共に歩んだフィリップ・ジョンソンとはどういう人物だったのかが描かれる。

ほかにフィリップ・ジョンソン氏のパーソナリティを知る本としては隈研吾氏が1989年に出版した『グッドバイ・ポストモダン』が印象深い。
フランク・ゲーリーなど世界を股に掛ける数々の建築家へのインタビューを収録した本書で、フィリップ・ジョンソンは大トリとしてページをあてられ、そして「神様」と表現されている。このことからもこの人物がいかなる存在だったかということが伺える。


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