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最近読んだ本

またすぐにやらなくなってしまいそうですが、簡単にでもいいので読んだ本を軽くまとめるやつを今年はやっていこうと思います。

〈怪奇的で不思議なもの〉の人類学

「妖怪は超自然的で非科学的で現実には存在しない」。それはつくられた伝統である。アクターネットワーク理論やパースペクティヴィズム、マルチスピーシーズ人類学などを駆使し、新しい妖怪研究がここに展開される。TikTokや2ちゃんねる等で流通するネット怪談までをフィールドとする俊英による、民俗学と人類学を架橋する画期の書。

「妖怪」を人類学のフレームで捉え直すという試み。民俗学や人類学にそんなに親しんでいないので、理解するのに少し苦戦しました。後半では、「バックルームス」などが取り扱われ、現代的な怪異の在りようが分析されていたのも興味深かったです。ノスタルジックな要素(ビデオテープやテレビのノイズ)が使われることで、「少しずれた世界」が生み出されているというのは納得で、最近読んだ下記の記事でも、『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』や『祓除』などに触れつつ近い分析がされてたことを思い出しました。

文学のエコロジー

文芸作品をコンピュータで動くシミュレーションとしてつくるとしたら、なにをどうすればよいだろうか。作品をゲームクリエーターの目、プログラマーの目で眺める。構造やメカニクスに焦点を当てる技術を駆使し、文学をエコロジーとして見る。作品世界を探検するための地図を持とう。
小説にはなにが書かれて、なにが書かれていないのか。客観的に作品を眺めることで、見えてくる、楽しめる、作品世界とその魅力。

「著名な文芸作品をシミュレーションさせる」をテーマに、対象となる作品の文章をひとつひとつ点検するように分析していく内容。
考えてみると当たり前のことだが、シミュレーションと比べると小説には「書かれていないこと」の方が多い。例えば、その世界には重力は働いているのか、人間の背丈は私たちと同じなのか、四季は同じようにやってくるのか……それらの事実を「シミュレーションをつくる」というプロセスを通して実感させてくれる内容だった。そこから分かるのは、書かれていないことによって生まれる想像の余地であり、ある種それは文章と読者の対話によって都度都度生成されるものだということ。
そういう観点で小説を改めて眺めてみると、少し違った視野でまた読むことができそうだと感じた。

空間の行間

時代を代表する建築と文芸をつき合わせ、その間にひそむ事柄を探る。伊勢神宮と『古事記伝』、安土城と『日本史』など13の対談で読む日本文化史への新しい視座。

こちらもまた文芸作品などをその時代の建築と対応させながら読み解いていく対談集。結構前の本だが、なんとなく目について読んでみた。両者の博学さに驚かされながら、へーって読み進めていくの久し振りな読書体験でした。
八束さんによる書評のトーンが面白かった。


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