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〈価値提供〉から〈価値共創〉へ─『サービスデザインの教科書』

〈価値提供〉から〈価値共創〉へ!
サービスの概念を根底から覆す新しいデザイン手法を、日本における第一人者が紹介する、決定版入門書!
「モノのビジネスからコトのビジネスへ」という言葉に代表されるように、近年「サービス」への関心はますます高まり、製品は分かちがたく結びつくようになっており、その流れは、IoT、ビッグデータ、AIの発展によって加速していくと予想される。
また、ビジネスシーンにおいて「デザイン思考」が急速に注目されているように、「これまでにない新しい価値を生み出す」ためのイノベーションの秘策として「デザイン」への関心が高まっている。
「サービスデザイン」は、そうした期待に応えるために、21世紀に入って急速に発展してきたデザイン手法であり、日本でもにわかに注目されている。しかし、「サービス」も「デザイン」も聴きなれた言葉であるがゆえに、昔ながらの固定したイメージ―サービス=提供されるもの、デザイン=美しい形を作るもの―に引っ張られ、混乱を招いている。
本書では、「サービス」と「デザイン」という概念をときほぐし、新たな定義を与えたうえで、ビジネスシーンのみならず公共政策における「サービスデザイン」の可能性を説く。

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「サービス」と「製品」の違い

SNSが普及し、企業が提供する商品や製品のフィードバックを迅速に得られるようになると同時に商品や製品を購入・使用する顧客側の潜在的な欲求などを洗い出し、製品の提供の仕方などプロセスのありとあらゆる部分での変革が必要になってくる。
その時に「サービス」という視点を入れた上で、製品を提供する視点が必要になってくる。

まずは、「サービス」と「製品」は何が違うのか?
4つの点。

製品とサービスを区分する性質として知られるのが、
①無形性(Intangibility)
②非均一性(Heterogeneity)
③不可分性(Inseparability)
④消滅性(Perishability)の4つで、それぞれの英単語の頭文字をとって、IHIPと呼ばれている。

①無形性は、経済における材の区分でも触れたが、サービスは形あるモノとして存在しないため、製品のように、購入前にその品質を確認できないことを意味している。
②非均一性は、例えば、同じ授業であっても、担当教師が異なれば、その授業の質が大きく異なる場合があるように、サービスの品質が製品のようには均一化できないことを表している。
③不可分性は、タクシーのサービスが客の明確な指示と運転手の技能が組み合わさって成立するように、サービスの生産と消費は、製品のようには明確に分離できないことを指摘している。
④消滅性は、ライブコンサートを考えればわかるように、サービスは製品のように在庫を保管しておくことができず、提供(演奏)が終われば消滅してしまうという性質を示している。

29頁

製品は大量生産など同じ品質のものをつくることが目的のひとつとしてあった。なので、サービスと異なり、無形性や非均一性について考えてこられなかった。
しかし、そもそも製品の品質が一定である均一性は私たちが望んで付与された性質なのだろうか?ということが疑える。

つまり製品に当たり前だと思われていたこういった性質は提供側の論理で付与され、それがいつの間にか「当然」のものとして認識されるようになったものであるということだ。


〈価値提供〉から〈価値共創〉へ

これからの時代には製品を受け取る顧客やユーザーがどのように感じるかを正確に読み取ることで、提供者と受容者が双方にコミュニケーションしビジネスを前進させていく「価値共創」の姿勢が重要になってくる。

このように、「価値共創」のビジネスでは、ある共通の目標の達成のために、サービスのプロバイダーとユーザー双方からの強い関与が引きだされることになる。それと同時に、「価値提供」のビジネスと比べて、サービスを行う主体(プロバイダー)と、それを利用する側(顧客、ユーザー)の関係性にも大きな違いが生じる。
45頁


では、こうした「価値共創」の利点は何か?
本書では4つの点が挙げられている。

①成果志向  
②持続的な視点
③多様な文脈への関与
④顧客の能力の活用

46〜48頁

①について考えると、例えば、消費者にとって本を買うことは「本を買う」ことだけが目的ではなく、その本を通して消費者が何かを行うための知識を得たり、空いた時間を有効に利用するための娯楽などを得ること、が目的となる(ただ読むことだけが目的の場合もある)。
つまり消費者が「やりたいこと」の実現・支援をするためのものとしての期待がされている。ただ単にものを売るだけでは、競合との競争や成果についてのメリットが伝わらないだろう。

次に②について考えると、イベントなどを通して提供した製品へのインタラクションを得ることで消費者がより求めている方向へのブラッシュアップや消費者自身も製品のプロセスに参加できているという自己帰属感を与えることで濃密なコミュニティを形成できる可能性が高まる。

③そうして、実際に製品を活用する消費者の意見を集約していくと、もしかしたら最初に提供したものとはまったく異なる形での価値提供を行うことができるようになるかもしれない。
それは長期的に見れば、消費者の満足度の上昇と共に企業の市場拡大にも繋がる。

④その製品に求められていることは一番よく知っているのはその製品を使用する消費者だ。だからこそ、彼・彼女らの意見をうまく引き出すことは、結果的に製品をよくしていくことに繋がる。

「サービスデザイン」の考え方を取り入れることで、企業はあらゆるリソースを利用して新たな事業機会を創造していくことができる。しかし、そのためには、企業内の習慣や組織の変革、顧客・消費者とのコミュニケーションをいかに創出し、ニーズを掴むかなどさまざまな課題が立ちふさがる。
それに対してどう立ち向かっていくか。
色々と勉強になりました。

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