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2020-21読書録

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記事一覧

平日の本紹介だいたい50冊【2021/12~2022/3】

なんとなく平日は家にある本を紹介することを日課にしようとして三か月が経過しました。 Twitterで流れていくだけだと寂しいので、定期的に記事にまとめていきます。ちなみに反響が大きかったのは Dreamscapesはちょっと追っていきたいですね。 都市の詩学 ハーフリアル 歪んだ建築空間 リノベーションからみる西洋建築史 歴史の継承と創造性 怪異の表象空間 インポッシブル・アーキテクチャーWHITE TOWERS 冤罪と人類 東北大学建築学科創立60周年記念卒業設計作品

串刺しにして考えよう─『融けるデザイン』

情報技術の発展にともない、ハードウェア、ソフトウェア、そしてインターネットはますます融け合い、それによって新しい世界の姿が現れつつあります。こうした世界においては、これまでのものづくりとは違う、設計のための新たな発想とロジックが必要です。本書は、インターフェイス/インタラクションデザイン研究における気鋭の若手研究者、渡邊恵太氏の初の著書です。これからのものづくりのための最重要キーワード「自己帰属感」を軸に、情報を中心とした設計の発想手法を解き明かします。デザイナーやエンジニア

私たちは合理的な選択などできないのか?─『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』

「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」 「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」 「同じプラセボ薬でも高額なほうが効く」―。 人間は、どこまでも滑稽で「不合理」。でも、そんな人間の行動を「予想」することができれば、長続きしなかったダイエットに成功するかもしれないし、次なる大ヒット商品を生み出せるかもしれない!行動経済学ブームに火をつけたベストセラーの文庫版。 *** 人間はなぜ不合理な選択をしてしまうのか?伝統的な経済学では人間は合理的な生き物であると考

〈価値提供〉から〈価値共創〉へ─『サービスデザインの教科書』

〈価値提供〉から〈価値共創〉へ! サービスの概念を根底から覆す新しいデザイン手法を、日本における第一人者が紹介する、決定版入門書! 「モノのビジネスからコトのビジネスへ」という言葉に代表されるように、近年「サービス」への関心はますます高まり、製品は分かちがたく結びつくようになっており、その流れは、IoT、ビッグデータ、AIの発展によって加速していくと予想される。 また、ビジネスシーンにおいて「デザイン思考」が急速に注目されているように、「これまでにない新しい価値を生み出す」た

「神様は軽い」─『評伝フィリップ・ジョンソン 20世紀建築の黒幕』

今日の建築の姿を決定づけた知られざる黒幕の生涯を描き出す傑作評 MoMAの初代キュレーターに就任、世界的な潮流となった建築展を仕掛けた男。 アメリカのヒトラーにならんとした男。 現代美術と建築の世界で知性とカネの力をふるった男。 建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞をはじめて受賞した男。 ミースへの憧れとコンプレックスに引き裂かれていた男。 ドナルド・トランプと協働しアメリカの都市風景を変えた男。 いまだ見学者の途絶えないモダニズム建築のアイコン〈ガラスの家〉の設計者

「都市自然」が現れる─『都市で進化する生物たち “ダーウィン”が街にやってくる』

進化とは、「手つかずの自然で、何千年もかけて起こるもの」、ではなかった! 人間が自分たちのためにつくったはずの都市が、今では生物たちにとって〈進化の最前線〉になっている。都市には生物にとって多様な環境を提供できる余地があり、しかも地球上の多くの場所が都市化されており、 都市こそが生物の進化を促す場所になっているのだ。 飛ばないタンポポの種、化学物質だらけの水で元気に泳ぐ魚、足が長くなったトカゲ…… 私たちの身近でひそかに起こっている様々な進化の実態に迫り、生物たちにとっての

「軍艦島」の歴史を追う─『海の上の建築革命 近代の相克が生んだ超技師の未来都市〈軍艦島〉』

あの時代に、誰がこんな建築を? 巨匠コルビュジエの提唱を10年も遡る大正初期に誕生した海の上のモダニズム建築の謎に迫る、もう一つの日本近代建築史。 日本最古の鉄筋コンクリートマンション「30号棟」を擁する世界遺産〈軍艦島〉はなぜ生まれたのか? 近代三菱の鉱業・造船・土木・建築をリードしたエンジニアたちが、台風・疫病・労働問題といった課題に直面しながら、洋上の孤島を埋め尽くす高層建築群を生み出していくまでの知られざる歴史を描く。 *** 2015年に世界遺産に登録され、近年

なぜ建築を競わせるのか?─『みんなの建築コンペ論 新国立競技場問題をこえて』

なぜ建築を競わせるのか?みんなを束ね、社会を高める建築コンペの価値を問いなおす。 *** 著者らは「白紙撤回」がなされた新国立競技場コンペに対し「なぜこの建築をつくるのか」が社会全体で十分に思考されなかったことに言及する. 本書では,新国立競技場コンペの経緯を解説した上で,これまで世界中で開催された代表的なコンペの分析を行う. 分析によるとそれらのコンペでは選定された案の「アイデア」が社会に広く共有され,時には議論や混乱を巻き起こしている(たとえば,ロシアからの独立直後

「大垣市」を見るいくつかの視線─すべて名もなき未来

令和。二〇一〇年代の終わり、二〇二〇年代の始まり。インターネット・ミームに覆われ、フィリップ・K・ディックが描いた悪夢にも似た、出来の悪いフィクションのように戯画化された現実を生きるわたしたち。だが、本を読むこと、物語を生きることは、未来を創ることと今も同義である。未来は無数にあり、認識可能な選択肢はつねに複数存在する。だからこそ、わたしたちは書物を読み、物語を生き、未来を創造せねばならない。ディストピア/ポストアポカリプス世代の先鋭的SF作家・批評家が、無数の失われた未来の

「テクノ・ファシズム」の連続性─『「大東亜」を建設する 帝国日本の技術とイデオロギー』

戦時下において「技術」に希望を託し、合理的な統治と動員体制を築こうとした革新官僚と技術者たちがいた。帝国日本にとって「技術」とは何だったのか。「大東亜」建設の実相に、新たな視角から迫る力作。 アジア・太平洋戦争期、帝国日本の戦時動員のため「技術」という言葉が広範に使用されていた。それは単に科学技術だけではなく、社会全体の統治にもかかわるイデオロギーであった。狂信的な言説が吹き荒れたと思われる時代は、実は科学的・技術的な言説が力を持った時代でもあったのだ。本書では、革新官僚と

鉄筋コンクリート建築の起源と連続─『鉄筋コンクリート建築の考古学  アナトール・ド・ボドーとその時代』

最初期の「鉄筋コンクリートの建築家」アナトール・ド・ボドーの創作活動を丹念に追い、鉄筋コンクリート建築の成立の過程を、実証的かつ理論的に解明する。19世紀までの切石組積による西洋建築と、20世紀の鉄とコンクリートによる近代建築に断絶をみる建築史の通説を覆す画期的研究。 *** 20世紀を席巻した鉄筋コンクリート. 本書は,組積造からコンクリートへと推移した時代に活動したアナトール・ド・ボドーのシマン・アルメ建築(積み重ねた煉瓦の中空部に鉄筋とモルタルを充填させ,一体成型す

東京は一体どこへ?─『建築の東京』

2013年9月、東京オリンピック開催が決まるや前年のコンペで選出されていた新国立競技場ザハ・ハディド案がメディアで騒がれるようになり、2015年7月には安倍首相が「白紙撤回」を表明、同年末のデザインビルド方式の再コンペで隈研吾+大成建設案が採用されるにいたった。 2016年8月、就任直後の小池都知事は目前に迫っていた中央卸売市場の移転延期を決定するも、その後は迷走を重ね、豊洲「安全宣言」を経て築地は五輪開催期間限定の輸送拠点と定められた。メインか副次的かの違いはあれ、いずれも

社会を映す鏡としてのタイポロジー─『ビルディングタイプ学 入門』

歴史、変遷を含めたビルディングタイプのタイポロジー。 社会デザイン的な観点を含む、現代性を持ち込み、今までの計画学通りでは問題があることを示唆。 ビルディングタイプを住宅、オフィス、学校、図書館、美術館、公園・広場など各項目にカテゴライズし、前史/第一世代(産業革命以降、戦前、戦後等)第二世代(普及、進化期等)第三世代(情報化、社会変化に伴う変化等)第四世代(現在、これから)にて構成。 *** 本書では,住宅,オフィス,学校,図書館,美術館,公園・広場など6つの「ビルデ

写真とは?カメラとは?─『新写真論』

もしかしたら写真は人間を必要としなくなるのではないか 写真は激変のまっただ中にある。 「写真」という用語をあらためなければいけないとすら思っている。 これはスマートフォンとSNSによってもたらされた。 その象徴が自撮りだ。−−「はじめに」より スマートフォンは写真を変えた。 だれもがカメラを持ち歩き、写真家は要らなくなった。 すべての写真がクラウドにアップされ、写真屋も要らなくなった。 写真の増殖にひとの手は要らなくなり、ひとは顔ばかりをシェアするようになった。 自撮り