マガジンのカバー画像

XR空間を考える

62
来たるべきパラレルリアルの世界へ向けて,XR空間について考える. 主として建築を参照しつつ新しく生まれつつある空間への思考を深化させるための断片記noteです.気になった方はまず… もっと読む
運営しているクリエイター

2018年4月の記事一覧

「環境美化運動」─AR時代以後の都市風景

街は自室ではない。ねむるための巣穴ではなく、獲物を獲りにゆく山野なのだ。街の光景も多数の主体の自律的活動が織りなす点では、山野と変わらぬ一種の〈自然〉だ。自分の思い通りにならない他者の横溢、そこにこそ街の価値がある。ARを重ね書きすることは、狩り場じゅうに自分の体臭を塗りこめるような愚行だ。どこもかしこも自分の匂いしかしない山野で、どうやって獲物を嗅ぎ当てられるというのだ。 「#銀の匙」飛浩隆 あらゆる人が無償で利用できる「最低保証情報環境基盤」。 インターネットが普及し、

「フィクション」,「リアル」,「リアリティ」について─背景が語ることはなんなのだろうか0

社会学者の大澤真幸が、1995年以降の時代状況を「現実から逃避する」のではなく「現実へと逃避する」と分析している。彼が「現実」に「リアリティ」とルビをふっていることに注意したい。現実は普通、リアルの語訳に当てはまるのであって、リアリティではない。ここで逃避が向かっている「現実」とは、「現実以上に現実的なもの、現実の中の現実、「これこそまさに現実!」と見なしたくなるような現実である」。つまり、「リアル」以上に「リアリティ」を持つ何かであって、私たちが生きている世界より、もっと身