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図書館員(司書資格あり)。 図書館業界、読書術、書評、仕事と生活のあれこれ。

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  • 【小説】おいしいものを、すこしだけ

    現役図書館司書が書いた、図書館司書の登場する小説です。 (全20回連載予定)

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図書館のお仕事紹介(番外編) とある司書の一日

これまで図書館の各業務について個別にご紹介してきましたが、では具体的に私の一日のなかでどういう流れになっているのかを解説してみようと思います。 実際には時期によ…

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1か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第18話

 最初は私も腹を立てていたけれど、二、三日すると、何もあんなにむきになることもなかったような気持ちになってきた。てっきり亜紀さんも喜んでくれるとばかり思っていた…

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男性に「女性アシストポイント」をつける、という提案

高校時代、文化系の部活にいて経験したことなのですが、たまたま部長以下執行部が全員女子、ということになったのですね。 すると、男子部員が幽霊化しました。 べつに表立…

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2日前
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おなじ本?ちがう本?:図書館における「書誌の同定」というお仕事

図書館では「これとこれは同じ本なのか」という判断を迫られる場面がけっこうあります。 「これとこれ」は本と本のこともありますが、多いのは書誌データと本、または書誌…

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広告嫌いふたたび

母の日のPRで「ずっと小児」という表現が使われた切符モチーフのポスターが批判を浴びて撤去された、というニュースがありましたね。 個人的には「なんか引っかかるけど、…

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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第17話

 休日に図書館でボランティア活動をしてみようかと思う、と言ったところ、亜紀さんはいい顔をしなかった。 「何をするんですか」 「何って、配架とか、いろいろ」 「その…

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2週間前
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叱られたくない

世の中では「『叱る』と『怒る』は違います!教育として適切に叱ることは必要です」と言われることもよくありますし、あまりにも叱られないと逆に「叱られたい願望」を持つ…

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3週間前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第16話

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3週間前
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ひとり1言語&1楽器主義の国

「あったらいいな、こんな国」というお話です。 この国では赤ちゃんが生まれると、出生届と同時に「言語」と「楽器」が指定されます。 たとえば「ケチュア語」と「フルー…

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4週間前
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アイデンティティ崩壊した図書館の末路

よくビールの新商品PRで「ふだんビールを飲まない方や、苦手な方にも楽しんでいただけるよう、ビール独特の香りや苦みを抑え、すっきりと飲みやすく仕上げました!」と謳っ…

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1か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第15話

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1か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第14話

 元日の風邪以来、亜紀さんはあまり具合が良くない。寝たり起きたりしているうちに正月休みが終わってしまったので、ふらふらしながら出勤していった。  食も細くなった…

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1か月前
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「売れない○○」であり続けるために

今回ご紹介する本はこちら。 芸人という病 - マシンガンズ・西堀亮 (単行本) | 双葉社 公式 (futabasha.co.jp) 要するに「売れない芸人のドキュメンタリー」なのですが、…

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1か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第13話

 年末年始に何の予定もなくなったので、例年どおり帰省することにした。荷造りをしているとコートのポケットからジロに渡す予定だったクリスマスプレゼントが出てきて、ク…

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1か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第12話

 思えばその日は朝からろくなことがなかった。    エスカレーターの故障であと一歩のところでいつもの電車に乗れず、ようやく乗った電車は異常信号で十数分停車した。車…

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1か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第11話

 ジロの仕事が忙しいことはもともとわかっていた。それでも夏前までは一応日曜日の休みは確保されていたし、定時で上がれる日に待ち合わせて会うこともできたので、これく…

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2か月前
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図書館のお仕事紹介(番外編) とある司書の一日

図書館のお仕事紹介(番外編) とある司書の一日

これまで図書館の各業務について個別にご紹介してきましたが、では具体的に私の一日のなかでどういう流れになっているのかを解説してみようと思います。

実際には時期によって業務は異なり、たとえば蔵書点検の時期は朝から晩までぜんぶ蔵書点検だったりしますので、比較的バランスの良い日を想定しています。
また、規模の大きな図書館では担当業務がもっと細分化されていることが多いのでここまであれこれやっていないでしょ

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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第18話

【小説】おいしいものを、すこしだけ 第18話

 最初は私も腹を立てていたけれど、二、三日すると、何もあんなにむきになることもなかったような気持ちになってきた。てっきり亜紀さんも喜んでくれるとばかり思っていたところを否定されたのでがっかりしただけだ。しょせん私は図書館の仕事で生計を立てているわけではないのだし、ただでさえ契約更新年数の上限が近づいて雇い止めの不安におびえている亜紀さんの神経を逆撫でする行為だったかもしれない。何より亜紀さんの給料

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男性に「女性アシストポイント」をつける、という提案

男性に「女性アシストポイント」をつける、という提案

高校時代、文化系の部活にいて経験したことなのですが、たまたま部長以下執行部が全員女子、ということになったのですね。
すると、男子部員が幽霊化しました。
べつに表立って異議を表明したわけではないのです。ただ出席率が悪くなり、出てきてもなんとなくやる気がないというか、主体的に活動に参加しなくなりました。

このままでは演劇部だと宝塚状態になってしまいます。合唱部なら女声合唱になります。
そうなる前に、

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おなじ本?ちがう本?:図書館における「書誌の同定」というお仕事

おなじ本?ちがう本?:図書館における「書誌の同定」というお仕事

図書館では「これとこれは同じ本なのか」という判断を迫られる場面がけっこうあります。
「これとこれ」は本と本のこともありますが、多いのは書誌データと本、または書誌データと書誌データです。
いちばん関係あるのは目録担当者ですが、レファレンスや相互利用、選書、除籍などでも避けて通れません。この判断を誤ると、求める本と違う本を利用者に提供してしまったり、すでに所蔵していることに気づかず重複発注してしまった

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広告嫌いふたたび

広告嫌いふたたび

母の日のPRで「ずっと小児」という表現が使われた切符モチーフのポスターが批判を浴びて撤去された、というニュースがありましたね。

個人的には「なんか引っかかるけど、もっと悪質なものはいっぱいあるのでは」という程度の感想ですが、気になるのはこれが広告であるところです。

もしこれが文学作品だとか、美術館で展示されているアートなら、まったく表現の自由であって何の問題もないですし、嫌なら見るな、という話

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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第17話

【小説】おいしいものを、すこしだけ 第17話

 休日に図書館でボランティア活動をしてみようかと思う、と言ったところ、亜紀さんはいい顔をしなかった。
「何をするんですか」
「何って、配架とか、いろいろ」
「その図書館は問題があると思います。図書館祭りとか、一時的なイベントでボランティアを募集するならともかく、配架のような通常業務で人を頼むというのは、あきらかにその図書館は恒常的な人手不足ということなのに、どうして職員を雇わないんですか。配架は誰

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叱られたくない

叱られたくない

世の中では「『叱る』と『怒る』は違います!教育として適切に叱ることは必要です」と言われることもよくありますし、あまりにも叱られないと逆に「叱られたい願望」を持つ人もいます。

私は「なるべく叱られたくない派」なので「叱ってほしい」という気持ちはどうもわかりませんし、子どもの頃から誰かに叱られると「普通に言ってくれればわかるのになあ」と思っていました。
もちろん、私が何か間違ったことをしていたら、ぜ

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ひとり1言語&1楽器主義の国

ひとり1言語&1楽器主義の国

「あったらいいな、こんな国」というお話です。

この国では赤ちゃんが生まれると、出生届と同時に「言語」と「楽器」が指定されます。
たとえば「ケチュア語」と「フルート」を指定されたとします。
指定方法はただのくじ引きです。
(ただし公平を期するため、英語や中国語などのビジネスに役立つメジャー言語は除外されています。またピアノやパイプオルガンなどの自力で運べない楽器も除外でしょう)

指定されてどうな

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アイデンティティ崩壊した図書館の末路

アイデンティティ崩壊した図書館の末路

よくビールの新商品PRで「ふだんビールを飲まない方や、苦手な方にも楽しんでいただけるよう、ビール独特の香りや苦みを抑え、すっきりと飲みやすく仕上げました!」と謳っていることがあります。

私などはビール好きで、それもベルギービールのような個性的で味の濃いビールが大好きなので「だったらビールなんか飲むなよ!そんなにすっきりがいいなら水を飲め!」とつい思ってしまいます。
実際に飲んでみても、どうもビー

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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第14話

【小説】おいしいものを、すこしだけ 第14話

 元日の風邪以来、亜紀さんはあまり具合が良くない。寝たり起きたりしているうちに正月休みが終わってしまったので、ふらふらしながら出勤していった。
 食も細くなった。せっかく最近はいくらか食べられるようになっていたのにまた逆戻りだ。私のとっておきの病人食、卵とかつおぶし入り味噌おじやを前にしてため息をついているので、じれったくなってスプーンを取り、おじやをすくって差し出した。
「はい、あーん」
 亜紀

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「売れない○○」であり続けるために

「売れない○○」であり続けるために

今回ご紹介する本はこちら。

芸人という病 - マシンガンズ・西堀亮 (単行本) | 双葉社 公式 (futabasha.co.jp)

要するに「売れない芸人のドキュメンタリー」なのですが、何と言ってもこの本の魅力は、成功した芸人の昔話ではなく現在進行形で売れていない芸人さんたちの「生き生き」というか「生々しい」実態の告白であるところでしょう。
データとして、各芸人さんの毎月の収支が掲載されてい

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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第13話

【小説】おいしいものを、すこしだけ 第13話

 年末年始に何の予定もなくなったので、例年どおり帰省することにした。荷造りをしているとコートのポケットからジロに渡す予定だったクリスマスプレゼントが出てきて、クローゼットの奥に放りこんだ。
 
 図書館も年末年始は閉館なので、亜紀さんはいつもの休日と同じように散歩して本屋巡りをして、借り貯めた本を読んで過ごしている。絶対に帰省というものをしないので、私がいないあいだは毎年一人でうちにいるのだと思う

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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第12話

【小説】おいしいものを、すこしだけ 第12話

 思えばその日は朝からろくなことがなかった。
 
 エスカレーターの故障であと一歩のところでいつもの電車に乗れず、ようやく乗った電車は異常信号で十数分停車した。車内は地獄のような混雑で、その間ずっと私は悪臭を放つ人の背中に押しつけられていた。遅刻寸前で会社に駆けこみ、ロッカーの扉を閉めたところでビッという嫌な音がしたかと思うと、スカートの裾をまつった糸が全部ほどけていた。仕事中も、前日ささいなミス

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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第11話

【小説】おいしいものを、すこしだけ 第11話

 ジロの仕事が忙しいことはもともとわかっていた。それでも夏前までは一応日曜日の休みは確保されていたし、定時で上がれる日に待ち合わせて会うこともできたので、これくらいならまあいいほうだろうと思っていた。
 
 それが一変した。次の休みがいつになるかまったく見通しが立たず、定時に上がれる日など夢にも考えられなくなった。休めるはずの日に会う約束をしていても、急に仕事が入ってだめになることが続いた。
 も

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