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痴漢「ぐらい」ってなんだよ

①忘れもしない高校2年生の秋


高校2年の秋
私は痴漢にあった。

その日は雨が降っていたので
傘をさして駅から家まで歩いていた。

夕方だったけれど
田舎だから街灯もなく、
茶畑や田んぼが広がっていて
雨だったから余計に
人通りも少なく薄暗かった。

そんな中一人で歩いていた。

するとうしろから
自転車にのった男性に
追い抜きざま胸を力強く触られた。

人間の思考停止ってこういうことなんだ
と思うぐらい、自分の中で時が止まった。

何が起こったのか理解できないから。

たぶん、数分くらい立ったまま
ぼ〜〜っとしていたと思う。

そしたらだんだん自分が何をされたか
理解出来てきて、なぜか
涙がポロポロポロポロ溢れ出る。

本当は警察に通報しなきゃいけないのに
なぜか仕事中の母親に1番に電話をかけた。

そして泣きながら母親に電話したあと
そのまま泣きながらとりあえず家まで帰った。

②解決策は「パトロール強化」のみ

母が仕事から帰ってきたあと、
すぐに警察に電話をかけてくれた。
なるべく私が話しやすいように母は

「女性の警察官はいらっしゃらないんですか?」

と聞いてくれたが
超田舎だから警察官自体の人数が少なく
女性の警察官なんてもっといなかった。

しばらくすると2名の男性警察官が
家にきた。そして質問の嵐…

・何時頃
・どこで
・何をしてて
・どのように
・どんな服を着ていたか

など様々なことを聞かれた。
着ていたセーラー服も見せたし、
触られた現場まで行った。

私はなぜかもう声が出なくて
ほとんど母に説明してもらった気がする。

そして一通り説明が終わり、

母が

「犯人を捕まえることはできないんですか」
と聞いたところ

「犯人を見つけることは正直難しいです。
パトロールは強化しますが…」

の一言。

「この暗い道に灯りをつけることは
出来ないんですか?」

と母が聞いても

「それは自治体で問い合わせてもらわないと
分かりません。」

だった。

結局、対策は【パトロールを強化する】のみ…

③被害のその後

その次の日は学校へ何とか行ったけれど
うしろを何回も振り向きながら
早く歩きながら
腕を前にしながら
人目を気にしながら
歩いていた。

いつも通りの道を歩いていたのに
いつもなら自分のペースで
何も気にしないで歩けたのに
と泣きそうになるのをこらえて
頑張って学校へ行った。

そして学校へついてしばらくして
過呼吸で倒れた。

たぶん心が疲れたんだ。

④男の人がこわい

過呼吸で倒れて保健室の先生や
友達に連れられて保健室まで行き、
泣きながら袋を抱えて息を吐き、
過呼吸がおさまるのをまっていた。

そして一通り落ち着いたあと
仲の良かった保健室の先生がゆっくり
話を聞いてくれた。

本当は生徒指導部の男の先生も
呼んで話をしなきゃいけなかったが
保健室の先生が
「呼ばない方が楽に話せる?」
と聞いてくれたので
「うん」
と答えた。

もうこの時は男の人が怖くなっていた。
先生すら男ってだけですごく嫌だった。

⑤教室の中の世界

授業を少し休み、
しばらくして教室に戻った。

過呼吸で倒れた私を
みんなどんな目で見るだろう

少し…いや、すごくドキドキして
教室に入った。

「大丈夫?」
と沢山声をかけられた。

でも、みんな何があったのか
深くは聞いてこなかった。
いつも通りの教室の中の世界

仲のいい女友達と一緒にお昼を食べても
深くは聞いてこなかった。
私が言い出すのをずっと待ってくれていたのかなと今では思う。

「実は…こんなことがあって…」

勇気を振り絞って話してみると

「そうなんだ、怖かったね、辛かったね」

と私の話すペースで聞いてくれていた。

無駄に騒ぎ立てず、
私を温かい雰囲気で包んでくれたのだった。

担任の先生も「ゆっくりでいいからな」
と言ってくれ、
それ以上何も言ってこなかったし、
クラスに痴漢の注意喚起なども
特にしなかった。

穏やかで居心地が良かった世界。
私は周りに恵まれていた。

⑥ 痴漢『ぐらい』ってなんだよ

「私は痴漢ぐらいしかあったことないよ」

この言葉を私はよく聞く。
私も前はそう言っていた。
そう思っていた理由は
私よりもっと重い性犯罪に合っている方が
沢山いると思っていたから。

でも今は「私は痴漢ぐらいしかあったことない」
っていう言葉をきくと

「痴漢ぐらいってなんだよ」

と思う。

その言葉を言っている人が悪いわけじゃない。
社会がそうさせてしまったことに
大きく問題がある。

ここで大声で私が言っておく

痴漢は立派な性犯罪だ!!
性犯罪に軽いも重いもない!!

痴漢はもちろん最近話題のスカートめくり、
性的同意がない性行為などの問題は
社会には明らかにされない。
だから

こんな性犯罪が起こっているんだ!
こんなことも性犯罪なんだ!
傷ついている人がこんなにいるんだ!

とアピールすらできない。
だから性犯罪に軽い、重いという評価が
されてしまう理由の一つではないか
と思う。

ここで言っておく。

ニュースでやっていることは
氷山の一角なんだ。
苦しんでいる人はあなたが知らないだけで
もっともっと沢山いるんだ。

ということを。

そして性犯罪の被害者へ

「○○ぐらい」なんて言わないで…
それは立派な性犯罪なんだから
「私より辛い人は沢山いる」
なんてどうか思わないで。
「ぐらい」っていう言葉で
自分が受けた被害を軽く見せないで、
性犯罪に軽いも重いもないんだから。









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