見出し画像

「学校カメラマン」不足の報道、何を今更・・・

5月12日(日)発信
「TBS NEWS DIG」にて、「学校カメラマン不足」に関する報道がありました。
参考まで、下記リンクよりご覧ください。(ニュース記事、YouTube動画)

何を今更・・・

この報道が出た瞬間、「何を今更」と思いました。
以前から各マスコミ機関が運輸業界の所謂「2024年問題」で騒いでおり、今回の報道は「人手不足」に便乗したのかと思うくらいです。
この記事はTBS系列のHBC北海道放送からの発信ですが、これは北海道だけの話ではなく、全国各地で起こっていることなのです。
そもそも、この問題は2015年以降より顕著に表れているのに、です。

カメラマン不足の大きな理由3つ

ここ最近の社会状況、経済状況が示すとおり、カメラマン不足の大きな理由は3つあります。

  • 後継者不足(特に若年層)

  • ギャラの高止まり

  • 機材価格の高騰(そもそも買えない、買い換えられない)

大きな理由3つをそれぞれ、私なりに詳しく説明します。
(あくまで個人の経験を含むことなので、認識不足・誤りなどある可能性があることをご了承ください。)

後継者不足

そもそも後継者がおらず、新規採用を募集しても人が入らないことが多いのです。
実際、カメラマンは中年層以降がほとんどです。(あくまで個人の感想です)
カメラに興味がある人、かつ人と接することが好きな人が少ない、というのもあるかも。
更にスマホが進化した現在、「カメラは難しい」と思われている可能性も。なので、カメラに対する敷居が高くなったのではないかと思います。

だからといって、報道にある「SNSでアマチュアカメラマン募集」も、炎上するけど仕方がないのです。
スキルと経験が必要なのは前提ですが、とにかく撮る人がいなければ、何としてでも確保しないといけないのです。

ギャラの高止まり

日本経済は、2020年を境に急減速。
学校側(もしくは教育委員会)の予算減額によるものが大きく、学校からスタジオへ支払われるギャラ(契約金等)も高止まり、もしくは減額もあります。
これは、スタジオ直接雇用どころか、外部委託のカメラマンに支払われるギャラも高止まりもしくは減額も意味します。
ギャラが低くなるということは、次の理由にもつながるわけで・・・

機材価格の高騰

2つ目の理由は、ここ5年以上前から起こっている機材価格高騰。
各メーカーのミラーレス化が急速に進んだ上に、人件費・部品代等のコスト増加により、以前の一眼レフよりも1.5倍以上高くなっています。
このため、カメラマンを続けている人にとっては「機材の買い替えができない」状況が続き、新しく始めようとする人にとっては「最初の1台すら買えない」程の高さなのです。
※機材高騰については、過去の記事で述べています

運輸業界の「2024年問題」とは全く違う問題

運輸業界の「2024年問題」が大きく報道されていますが、これは厚労省の時間外労働の制限拡大、所謂「働き方改革」によるもの。
しかし、学校のカメラマンは運輸業界と違い、労働時間の制約など関係ありません。
入学式・卒業式は開始1時間ほど前に現場入りし、終了後の撤収が完了して退出することになります。(午前中で終わるケースが多い)
修学旅行など泊りを伴う撮影も、生徒より早く起き、生徒より遅く寝る(職員会議に参加してから寝ることもある)。
なので、実際の勤務は1日15時間以上に達することもあります。

また、学校のカメラマンは体力・コミュニケーション力も必要。
若年層の人から見れば、特に体力面で「キツイ」と思われても仕方ないのかと。

理由は様々ですが、要はギャラが安い、機材が買えない、体力的にキツイというところが大きいのです。

ギャラの高止まりが、スタジオにさらなる負担

さらに、ここ最近の経済状況、社会状況などでお分かりかと思いますが、学校側が予算削減となると、スタジオの負担は大きくなる一方。
例えば、修学旅行の宿泊費・施設入場料などは、スタジオが負担することになります。
また、特定の施設における撮影では、別途撮影許可に掛かる手数料等もかかります。
スタジオによりますが、事前にスタジオが負担するケースがあれば、事後精算(立替)のケースもあります。
しかし、ゆくゆくは外部委託の人間(フリーランスを含む)も自己負担になるのでは、と危惧しています。

実はスタジオ自体が廃業のケースも

ギャラの高止まり、機材が買えないという理由から、実は個人・法人問わず廃業が増えているということ。
上記3つの理由からつながっていることなのです。
大手メディアでは報道されていないようですが、2023年9月、栃木県宇都宮市の「サトーカメラ」さんが民事再生法の適用を受けるというニュースもありました。
(注:現在も民事再生法の下で事業継続中です)

人材不足(後継者不在など)による廃業もありますが、このように負債による廃業もあるのです。
たぶん深入りで報道されないでしょうが、ここまで来ているのです。

業界のこれからに向けて、今の私に出来ること

今の私はフリーランスという立場ですが、3つのスタジオさんとご縁をいただき、人手不足解消の一助となるよう撮影業務を行っています。
(ただし、私自身も一般向けに直接依頼を受けて業務を行っています)

学校の撮影は、スタジオさんの方針、学校側の意向など様々な条件の下で行われます。なので、指示通りに撮影できるかどうかのスキルも大事です。
しかし、そのスキルに対応できるよう、スタジオさんにとって人材育成が必要。

今は我慢の時期かもしれません。私自身も本当に微力です。
ですが、経験とスキルを積んで、緊急事態(急病・ケガなどによる欠員補充)でも対応できるようにしています。
もちろん、普段からの体調管理・体力や精神力の向上に努めることは言うまでもありません。

この状況の中で、業界全体がちょっとでも改善してくれることを願ってやみません。

お読みいただき、ありがとうございました!
ご意見・ご感想など、自由にお送りいただけると嬉しいです。

私自身の作品づくりはもちろん、カメラや写真の明るい未来を信じて活動します。 いただいたサポートは、喜んで有効に使わせていただきます。