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【レビュー】『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』運命に抗う父子の絆【ネタバレ無し】

※個人の見解です。ネタバレ無し。購入検討の参考になれば幸いです。

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントより発売、Santa Monica Studio開発のゴッド・オブ・ウォーシリーズ最新作。
 PS4/PS5の両ハードにて発売中。

 元々はギリシャ神話をモチーフとしたシリーズでしたが、前作から新たに北欧へ舞台を移し、主人公クレイトスとその子アトレウスが北欧神話の世界を冒険するアクションアドベンチャーとなっています。

 ゴッド・オブ・ウォーシリーズは話こそ繋がっているのですが、ギリシャを舞台とした初期の三部作や外伝を遊ばないと話が分からない、ということはありませんのでご心配なさらず。

 ただ前作の続きから物語は始まり、ゲームシステムなども踏襲したものとなっているので、出来れば前作「ゴッド・オブ・ウォー(PS4)」だけは遊んでおくことを推奨します。

 一応前作のあらすじを読むことは出来るようになっているので本作だけでも楽しむうえでは問題はないのですが、より楽しめるはずです。

 前作は2022年6月にPlaystationPlusのフリープレイタイトルになっていたほか、PS5を持っていてPlaystationPlus加入済みならいつでも遊ぶことができるようになっているのでぜひ。

なお、筆者はPS5にてプレイしレビューしています。

PS5の性能を活かした圧倒的映像美

 グラフィックは見事というほかありません。
 北欧の厳しくも美しい大自然がどこまでもリアルに表現されていますし、キャラクターの表情もゲームとは思えないほど感情がこもっていて繊細。
 開発者曰くこれでもPS5の性能を活かしきれておらず、あくまで「最高のPS4ゲーム」であるとのこと。
 前世代の機種と同時発売する、いわゆる「縦マルチ」である以上当然といえば当然なのですが、それでこのクオリティとなるともしPS5専売の新作が出たらどうなるんだろうと末恐ろしいですね。

特に「毛」や「雪」あたりの表現は特筆すべき。狼たちなんかもう最高にモフモフ。可愛い。

 ちなみにですが、まさに本日2022年12月6日にアップデートが配信され「フォトモード」が実装されました。
 これにより景観は勿論、戦闘中のクレイトスを様々なアングルから撮影することなども可能になり、グラフィックを最大限楽しめるようになりました。

ついつい先に進めたくなるシナリオは見事、ただし・・・

 様々な風景を持つ九界を巡る冒険は常に新鮮な驚きに満ちており、怒涛の展開にハラハラの連続で、つい寝る間を惜しんでプレイしてしまいました。
 
 前作から引き続き軸となる父と子の絆に加え、子の成長に戸惑うクレイトスの葛藤、運命に翻弄されるアトレウスの焦りなど、彼らの心情をしっかりと描いており、涙するプレイヤーも多いことでしょう。私も泣きました。
 幕間やサブクエストを通じて他のキャラクター描写もしっかりしており、殆どの部分は文句の付けようがなく面白かったです。

 正直旧シリーズはグロテスク・暴力の描写が目立ち、あまり万人向けのタイトルではなかったのですが、リブート一作目にあたる前作と共にシリーズのイメージそのものを大きく変え(それでいて従来からのファンを失望させるものではない)誰にでもおすすめ出来る作品になりました。

 ただ玉に瑕なのが駆け足気味の最終局面。
 三部作予定が二部作になった影響が随所に見られ、回収しきれてない伏線や設定の辻褄が合わない箇所があるなど、消化不足が否めませんでした。
 まあ演出は素晴らしかったのでそれでも面白いんですが、細かい部分を勢いで押し切ってしまった印象です。

選択肢を増やす事でより多くの人が楽しめるゲームに

 AAAタイトルらしく多種多様な人々に遊んでもらう為の配慮が行き届いており、心底関心させられました。

利き手、色弱などの障害対応、その他多岐に渡った設定項目があるおかげでまさに誰でも楽しめるゲームになっている。

 これらは何も身体的な事情に対するものだけではなく、戦闘難易度設定は勿論のこと、時間制限のあるパズルの制限緩和、アイテム回収の自動化など細かい設定も実に豊富。

 また恒例の謎解き要素についてもしばらく悩んでいると、同行者がヒントをくれるようになり、いつまでも解法がわからなくてストレスを貯めることもなくなりました。

 他にも全ての装備が最大のレベル9まで強化できるようになり、終盤の装備はこれ一択、というような状況は生まれずプレイヤー毎の個性が反映されるようになったのも大きいですね。

 あくまで選択肢を増やすのみであり、必要ないプレイヤーにとってもマイナスにならない点を含め理想的な形になっていると思います。

より快適になったアクション

 前作の戦闘では一撃が重い分もっさり気味な斧しか武器がない時期が長く、スピード感の不足を感じたプレイヤーも多かったと思います。
 幸い本作ではそういったことはないので、好みの武器でガンガン戦っていけることでしょう。(勿論斧の重い一撃が生む爽快感も健在)

 戦闘以外でも鎖を利用したアクションが追加され、崖を瞬時に上れるようになるなど移動がスムーズになりました。
 これが全体のテンポ向上に大きな効果を発揮しており、探索がしやすくなっていて好感触でした。

 一方前作でも問題だったカメラが近く正面以外があまり見えない点ですが、残念ながら大きな改善はありませんでした。

 同行者がある程度周囲の敵については教えてくれますし、敵がいる方向にはマーカーがでるので決して対処できないわけではありません。
 ただ如何せん四方八方から敵が来るシーンも多いのでなるべく正面に捉えるのにも限界がありますし、クレイトスはさほど機敏な動きができるわけでもない為、この仕様はゲーム性と割り切るべきではないように思います。
 前作でもかなり気になったのでなんとかして欲しかったのですが、この点はちょっと残念でした。

要点まとめ

良い点

  • 抜群の映像・演出

  • 寝る間を惜しんで進めたくなるシナリオ

  • 多くの選択肢・設定項目を用意する事で様々な人が遊べるゲームに

  • アクション面の快適性やテンポが向上

悪い点

  • 三部作を急遽二部作にした影響か一部の伏線がうやむやになるなどシナリオに粗が残った

  • 囲まれると対処しにくい戦闘時のカメラワーク

総評

 これぞAAAタイトルという貫禄を感じる一本。
 PlayStationユーザーなら遊ばない手はないと言って良い程の良作だと思います。
 全世界で記録的な売り上げをあげているのも納得。

 ただやはり全体としてのクオリティが滅茶苦茶高い分、当初の構想通り三部作として世に出ていればと思わずにはいられないですね。
 満点をつけるべきかかなり迷ったのですが、シナリオ面の問題を重く見て今回は9点とします。

 本作で北欧編は終了とのことで、今後次回作が地続きになるのかもわかりませんが、ぜひ日本神話編を出してくれないかなと期待してます。

評価・・・9 - Amazing(驚くほど素晴らしい)/10


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