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誰が儲かる露ウ紛争?敗者は●●だ!

2022/09/05

https://www.youtube.com/watch?v=C4rnBd5ljBU

■ ロシアはガス供給で欧州を締め上げる

ロシアのウクライナ侵攻が、いよいよ佳境に入ってきた。ロシアとウクライナのどちらが正しいか、正義はどちらにあるのか。どちらであるにせよ、ウクライナ侵攻によって一番被害に遭っているのは一般庶民だ。そして一番儲かったのは誰であろうか。

ロシアが有利という冷静な報道が出るようになってきた。
ロイターの8月25日ニュース

『焦点:ロシアが賭ける停戦シナリオ、冬のガス不足で西側が根負け』

ロシアはかつて、「冬将軍」の加勢を得てナポレオンとヒットラーを打ち負かした。プーチン大統領は今、欧州がこの冬にエネルギー不足やその価格高騰に根負けし、ウクライナに停戦を迫るというシナリオに賭けている。しかも、ロシアの望む条件で。
ウクライナと、同国を強力に支援する西側諸国は、降参するつもりは毛頭ないとしている。複数の米高官は匿名を条件に、ウクライナへの支援が揺らぐ兆しは今のところ皆無だと述べた。
欧州連合のフォンデアライエン欧州委員長はウクライナ独立記念日の24日、「EUはこの戦いにおいて当初からあなた方の味方だ。必要とされる限り、味方であり続けるだろう」とツイートした。
ウクライナは戦場において状況を変えられる可能性があると考えている。
ウクライナのポドリャク大統領顧問はロイターに対し「ロシアとの交渉を可能にするには、前線の現状をウクライナ軍優勢に変える必要がある」と述べた。「ロシア軍が戦術的に大敗を喫することが必要だ」という。


ロシアは、ここから寒くなる冬にかけて、ヨーロッパに供給している天然ガスのパイプラインの供給を絞って、EU諸国を根負けさせる。この冬の厳しさを味わせる戦略をとるとロイターが指摘している。

アメリカの政府高官は、そんなものに負けることは全く皆無だと言っている。アメリカも多少はロシアから輸入しているが、被害がひどいのは欧州連合である。

特にドイツはパイプラインを通してかなりの量を買っていたので、きついはずなのに、EU連合の欧州委員長は、自分たちは耐え忍ぶと言っている。金持ちの彼らはガス、電気代金が高騰しても大丈夫だが、一般庶民はかなりの痛手を負う。
一般庶民は、電気代、ガス代が高い、石油も高い、石炭もライン川が干上がって届かないとなると、冬の寒さと光熱費の高騰に耐え切れない。

欧州の冬は大変寒いが、この冬の寒さに乗じて、ロシアがどんどんヨーロッパを締め上げて行く戦略に出て来た。それと同時に9月から、ノルドストリームワンのパイプラインが、タービンの故障でガスを供給できない。無期限供給停止すると発表した。

欧州は予めそういったことを想定して備蓄量を上げている。最大貯蔵容量の8割ぐらいまで上げてきている。第一生命経済研究所主席エコノミストの田中先生の分析によれば、それでも今冬が大変寒かったら、備蓄を取崩しても1ヶ月分ぐらいにしかならない。

欧州は、この秋から冬にかけて寒くなってくると電気代高騰、ガス代高騰で、レストランや製造業が操業できないとも言われている。

ノルドストリームは、ロシアとドイツを直接結ぶガスのパイプラインであるが、いまタービンの調子が悪く、油が漏れていて供給できない。もう一本ノルドストリームワンとパラレルに走っているパイプラインのノルドストリームツーが、去年新しく出来上がったのだが、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、ドイツが使用許可を出さない。ドイツはノルドストリーム2を使わせないと制裁をした。

ドイツのウルフ元大統領が来日して、日経新聞の取材に応じているが、ノルドストリームツーについて、今振り返ると過去にロシアを信頼して建設を始めたのは過ちだった。ロシアからのエネルギー供給依存を減らし、最終的にゼロにする必要があると訴えている。

ドイツはさも自分が無実であるかのように装っているが、去年ロシアから輸入しているガスを転売して儲けていた。ヤマルヨーロッパラインでドイツに入ってきているガスを、ポーランドやウクライナに転売をしていたという疑惑が上がっている。

昨年の12月にプーチンが、ドイツに流しているガスの動きが逆流していると思ったら、ポーランドやウクライナに流れている。ドイツが転売をしていると発言したことがニュースになっている。

欧州がロシアのガスにかなり依存していて、その供給が絞られるとかなり厳しいという実態が露わになってきた。実は欧州の方が打つ手が少ないと言われている。


■ ロシアの狙いはウクライナのガス利権

ノルドストリームワンが、ガスのタービンが届かないので保守メンテナンスができない。いつ再開できるか判らないと発表されると、ロイターニュース『欧州ガス価格が一時30%急騰、ロシアの無期限供給停止受け』と流れた。

欧州のガス価格の指標となるオランダTTFは序盤の取引で、1メガワット当たり272ユーロまで上昇し、前年同期の水準を400%上回っている。

ロシアのノルドストリームワンの故障発表は、ヨーロッパから非難轟々なので、本当に油漏れしているとパイプラインの写真を上げている。さらにガスのパイプラインのメンテナンスができないのはヨーロッパのせいだと、責任を欧州側に押し付けようとしている。欧州側が契約上の義務があるにもかかわらず、設備の修理を拒否したからであって、ガスプロム(ロシア企業)の責任ではない。制裁を決定した欧州の政治家が全部悪いとしている。

このガスのパイプラインのタービンを動かすには、ドイツのシーメンスエネルギーがメンテナンスの義務を果たす必要がある。ドイツがアメリカの制裁に歩調を合わせてやらないのでオイル漏れで使えない。ロシアのせいではないとドイツに責任を押し付けた。

タービンは対ロシア制裁でロシアに売ることが禁止されている。ロシア側はそれを理由にドイツが悪い。ドイツが契約を履行しないから、こんなことになっている。ガス価格が上がっているのはロシアのせいではなく、ドイツのせいだとしている。

一方ドイツのシーメンスエネルギーは、保守点検の作業を引き受けることはできる。ただしロシアからメンテナンスの発注を受けてないと言っている。

こうしてロシアとドイツは、ガス価格高騰の責任をお互いに押し付け合っているという状態だが、それで苦しんでいるのは、一般国民であるという構造は変わらない。

おそらくロシアのシナリオは、ノルドストリームワンを止めて、新設されたまま制裁で止められているノルドストリームツーを稼働させないと、もうヨーロッパは保たないところまで追い詰めるつもりだ。
いよいよガスが足りない。寒くて冬を乗り越えられないとなると、欧州連合の各国がドイツに向かって、ノルドストリームツー稼働の認可を出せと圧力をかけてくると思われる。

ハンガリーのように、欧州連合の言うことばかりは聞いていられない、ロシアのガスが必要なのだと、裏切る国家が出てくる可能性も高い。

その件について予言をしていた女性がいる。ガス利権の女王ユリアティモシェンコ元ウクライナ首相が、2015年の春に、このことについて語っている。彼女こそは元祖ガスプロム利権の女王だ。

ウクライナは、ウクライナ経由でロシアのガスをヨーロッパに流していたので、何もせずに通行料を稼ぐことができた。ところがノルドストリームツーが稼働すると稼げなくなってしまう。ウクライナにとってノルドストリームツーは邪魔な存在なのだ。

ティモシェンコは2015年、今から7年前の段階でギリシャの財政危機ぐらいで欧州連合は揺るがない。ウクライナのガス問題で、きっと欧州はバラバラになるだろうと予言していた。

やはり本家本元ガス利権を喰っていた人の言葉は重い。この人の予言が当たるのではないだろうか。もはやロシアのウクライナ侵攻というよりも、ノルドストリームの乱ではないかと思える様相が見えてきた。


■ 日本の笑えない状況

しかし、これは笑い事ではない。ガスが無いとどうにもならない。ガスが足りなくなったら困るは日本も同じだ。天然ガスは99%を輸入に頼っているが、そのうちの37%がオーストラリア産である。ところがオーストラリアが、今年は天然ガスが足りなくなりそうだから輸出規制するかと言い始めた。

『オーストラリアのLNG輸出規制、連携協力を確認 対話継続へ』というニュースが出ている。そこで西村経産大臣がオーストラリアに話を持ちかけて、輸出規制をしないで、日本に天然ガスを供給して欲しいと交渉をしている。

この西村大臣は、去年のコロナ時短問題の時に、レストラン、飲食店が時短に応じなかったら銀行貸出を絞ぼると言っていたが、今年はサハリンツーの権益確保に企業サポートに回った。さらにオーストラリアと話し合って天然ガス問題でも先手を打って話をつけようとしているので株を上げている。

ロシアとウクライナの戦い。ロシアとウクライナがもめる時は、だいたいガスの件で揉めているが、今回の揉め事の中心は、どうもノルドストリームツー問題のようなのだ。



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