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新電力連続倒産事件、背後にあの男の影

2022/05/08


■ 新電力会社が連続倒産

最近、相次いで倒産する新電力会社が話題である。少し前のニュースだが帝国データバンクから出ている。

「新電力の倒産、過去最多の14件が発生 過去1年で累計31社が事業撤退 電力調達価格の高騰が打撃」
新電力会社の倒産が急増している。みなし小売電気事業者を除く「新電力会社」の倒産は、2021年度(2021年4月~22年3月)に14件発生した。年度を通じて倒産が2ケタに達したのは初めてで、前年度の2件から急増、過去最多を大幅に更新した。また、電力小売事業からの撤退や新規申し込み停止も相次いでおり、2021年4月に営業が確認できた新電力約700社のうち、約4%にあたる31社が過去1年間で倒産や廃業、事業撤退などを行ったことが分かった。

ネット上でも結構新電力会社が倒産した、大型倒産したとか、電気代が上がっているのは何だろうという話が出ているが、この新電力会社の連続倒産事件は、これで終わりではなさそうである。

実は先日この新電力事業者の方に取材をさせてもらった。

そこでヤバイ事情を伺ったのだが、これもう本当に聞くも涙、語るも涙の物語なのだ。彼らによれば新電力の倒産予備軍はまだまだ控えているということで、今年はこれからもっと倒産がやって来るかもしれない。それぐらい新電力事業者は戦々恐々としているそうである。

基本的に新電力事業者は、大手の九州電力、関電、東京電力、四国電力とか、そういう火力発電等の発電所を持って電力を供給しているところと比べると圧倒的に財務体力が弱い。

昔の電力会社は巨大な発電所や送電網のインフラ設備などにも投資ができるくらいの資本を持っていないとできなかった。

参入障壁が非常に高いビジネスモデルで、基本的には旧国営系でないと無理と言われていた。


■ 経産省が電力の自由化の仕組みを作った

インフラビジネスの自由化が始まって、電力は市場で取引できるようにしようと、大手が供給する電力の余った分を、新しい電力の供給源として利用できるJEPXという仕組みを作った。

新電力会社がそこから買ってきて、その電力をエンドユーザーに供給するという形にすれば、中小企業も参入出来て、競争が活性化される。

そういう触れ込みで経産省がJEPXという仕組みをスタートさせた。

ところが最近になって、新電力が消費者に供給する電力価格と、JEPXと呼ばれる余剰電力の市場から調達できる電力の価格、この仕入れ値と売値が逆ザヤになり、売れば売るほど赤字が膨らんでいくという状態になっている。


「電力自由化が破綻・・・ 大手電力会社が通常料金の10倍を請求、新電力会社の破綻ラッシュ」
このタイトルからしても、恐ろしいことが起こっていることが判る。大手電力会社が普段の10倍の電気代を新電力会社に請求して、それが破綻ラッシュの原因だと報じられている。

「猛烈寒波で卸電力の価格が十倍に急騰し逆ざやに。電力自由化で誕生した電力小売事業者新電力が曲り角に立っている。事業者数は700社に増え、顧客獲得競争が激化。昨年末からの寒波襲来に伴う電力需要の急増で苦境に陥った。液化天然ガス火力発電所の燃料が不足した事が引き金となり、この冬の電力需給が逼迫。日本卸電力取引所JPEXは、その価格は通常は1キロワット当たり10円から20円で取引されていたのが、1月中旬には一時251円と10倍超にまで跳ね上がった。自前の発電設備を持たない新電力の多くはJPEXを通して大手電力会社から出た余剰電力を調達している。新電力は仕入れコストが膨らんでもそれを電気料金に課金できない。電気料金を大幅に値上げしたら解約が相次ぐことになるからだ。その結果仕入れコストが電気料金を上回る逆ざやが発生。加えてインバランス料金の高騰が新電力の経営を圧迫。インバランスとは新電力が電力を調達できない場合、大手の電力会社が穴埋めをする仕組みのことで、電力供給はストップせず、停電にならずに済むいわゆるセーフティーガードである。

実はこのセーフティーガードは、エンドの消費者のためのものであって、中小の新電力にとっては殺害予告に等しい仕組みになっているというのだ。

JEPXとは、一般社団法人日本卸電力取引所の略称で、日本で唯一の卸電力取引市場を開設運営する取引所のことである。JEPXが市場を運営していて、大手電力が供給してくれる余剰電力を新電力に売るという取引の市場になる。

新電力はその市場を利用すれば、数円から20円ぐらいで電力を買ってエンドのユーザーに25円ぐらいで売れる。ユーザーが増えれば増えるほど、右から左に儲かるというビジネスだったはずなのである。

そこで新電力関係者は、経産省から、JEPXで電力を安く調達して消費者に供給すれば儲かると説明を受けていたそうである。


■ 買わなくても払わされる新電力会社

ところがふたを開けてみると、JPEXの電力価格が安定している時期は良いが、たまにとんでもなくはね上がると100円以上にはね上がってしまうと、中小の事業者の内、財務体力が無い会社は倒産してしまった。
消費者価格に転化できないので、その分の赤字を自分たちが補填する仕組みになっているからだ。

リミックス電機のサイトを見ると、JPEXの取引価格高騰状況がこんなことになっているのがよく判る。

この価格の高騰がグラフを見ると、2019年の頃は10円とか20円の間を行ったり来たりして安定していたが、2020年は価格が高騰している。
JPEXから調達できる電力価格が時々高騰することは今までもあったが、今回は250円を超えてしまった。それが今回の連続倒産のきっかけになっている。

構造そのものが新規の電力事業者に不利にできていて、この仕組みもそうだが、JPEXで決まる市場価格が、大手が供給する電力量に依存しているのである。

価格が高騰したので、値段が下がるのを待っている間に値段が高止まりしてしまった時期があった。買いを見送っていたら、電力を供給しなかったことによる インバランスと呼ばれるペナルティを払うことになる。

このインバランスの請求がかなり高額だったので、それが原因で連続倒産したのだが、インバランスとは電力の需要量と供給量の差分のことである。

消費者の需要に対して電力を供給できなかった分がインバランスとなる。供給できなかった分は、大手電力会社が代わりに供給してくれるので、消費者を保護出来るという仕組みになっている。

大手電力会社は安い価格で発電できる。ところが新電力に請求するときは、市場価格の250円の時に供給しておいたから、250円分の価格で払ってくださいということが起こっていた。

このインバランスというペナルティシステムが連続倒産の原因になっているが、大手電力もコロナなので、それほど余剰電力を作れないので仕方が無い。


■ 新電力会社を騙した経産省とあの男

これが今回の新電力連続倒産事件の背景なのである。新電力に経産省から指導が入るが、赤字になるので調達できないと言うと、経産省はJPEXで安く調達できるから大丈夫と数年前は主導していたのに、自社で発電しないのが悪い。なぜ発電しないのか。JEPXは価格がすごくボラタイルに動くのに、そんなものに依存する方が悪い。お前が悪いのだ。俺たちは関係ないと言うそうである。

その時にやっと新電力側は、俺たちは嵌められたという、聞くも涙、語るも涙の物語になっている。

さてここで笑って見ているのは誰なのかということなのだが、写真のこの人は・・・。(笑)

この新電力の仕組みができて実は狙い通りだと思っている人たち、中国人がいる。

そのことについて、またお話ししよう。 

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