【後編】BLとTLの違いをあなたは言えますか？　BLコンテンツの特異性を理解する

※今回の記事は非オタク・男性向けに執筆されています。
わかりやすさ優先で多少ラフに解説していますので、ご了承ください。
前編はこちら

「BL」という特殊な概念を、よく似ているものとして扱われるコンテンツと比較して考えてみようと思います。
今回は「TL」（＋少女漫画）コンテンツとの特異性を解説いたします。

TL的な視線から考える

エロありBLとTL（ティーンズラブ／主に性的要素を含んだ男女の異性愛を描いたもの）との共通点は主にストーリー展開にあります。

スペックの高い男性と意図せぬことからカラダの関係を結んでしまうが、相手は最初から自分のことが好きだったなど運命的だったことが判明する。

基本的に第一印象は最悪か最高かのどちらかです。
よくあるパターンとしては、下記のとおりです。

BLにおける受け、TLにおける女性が抱く第一印象⇒なんだコイツ。性格悪いし最悪だ…。
BLにおける攻め、TLにおける男性が抱く第一印象⇒顔がタイプ。なんか気になる。放っておけない。

二人を本気で脅かすライバルが出てこないし、男の執着がすさまじい。カップリングは固定で絶対的。

はい。最終的に誰と誰がくっつくのか、初めから明示されています。
当て馬的人物は頻繁に出現しますが、とても物分かりが良いため最終的には主人公の背中を押す存在となります。
どんなに腹が減っていようと据え膳も食べません。あったとしても未遂で終わります。

一方で、BLとTLで大きく異なる部分が3つあります。

①BLは自己投影スイッチが入らず他人事として物語を楽しめる

TLでは結婚、出産などの人生設計を考えさせるリアルスイッチが入りやすく、どうしても自分ごと化してしまいます。
そのため、自分の価値基準やモラルを通してヒロインを見るようになり、ささいな仕草やセリフ回し、軽微なモラル違反を厳しく見がち。気分良く自己投影して見れなくなってしまうのです。

その点男性同士の恋愛を描いたBLは自己投影せずに済み、価値基準の許容量が大きくなります。受け（ヒロイン役）が男性なので、考え方や性癖が少々自分の価値観と異なっていてもOK。
余計なノイズもなく、他人事感覚で物語を楽しめることができるのです。

②BLは他の漫画ジャンルの男性キャラに比べて属性の幅が圧倒的に広い

BL、TLともにヒーローはエッチのうまい自信家な男、ヒロインは人生にちょっとした課題を抱えた心のやさしい女（男）というキャラ設定が多くなっています。また攻め側は受け側に一途という設定が好まれ、ほぼ必須と言っても過言ではないでしょう。

ただTLと圧倒的に異なる点としては、主役二人のキャラクターの多様性ではないでしょうか。
BLは、生真面目キャラ、わんこキャラ、オヤジキャラ、変態キャラ、スパダリキャラなど攻め、受けともに幅広い属性のキャラクターが受け入れられています。

下記は「ちるちる」のキャラ属性の検索タグです。多くの属性が入り乱れており、多様性が進んでいます。

③BLはシリーズ化、スピンオフ化がしやすい

TLではなくどちらかというと少女漫画によくみられる傾向なのですが、当て馬は大体ピンチのときにはいつも助けてくれる優しい人、なのに報われず切ない…というポジションからか主人公（ヒーロー）より人気が出ることが多々あります。
しかし、ヒロインにフラレたあと、ほかの女性と結ばれること（救済）はあまりないですよね。

一方、BLは玉砕した当て馬＝新たな恋のチャンス！という方程式が生まれるのです。救済スピンオフが作られ、なんやかんやありつつメインカップルとも良い関係を築いていきます。
「〇〇くん、どうか幸せになって…」という腐女子の切なる願いが届いたようです。

さらに、男女恋愛作品では成就するまでが山場となっており、成就したとたんに現実と重ね合わせるようになりファンタジーとしてみていられなくなるという現象が起きてしまいます。
夫婦生活をメインに描くとなるとロマンス要素のある現代劇は難しく、不倫略奪モノになりがち…。

一方で、BLは成就してからも二人の関係を見守る物語を継続して作られる場合があります。
「この2人が紡ぐ幸せな日々をずっと見ていたい！」と言わんばかりにメインカップルだけにとどまらず、サブカップルのスピンオフがシリーズ化するなど他のコンテンツではあまり見られない継続パターンもBLの特徴と言えるでしょう。

おまけ

BLでは積極的に描かれており、TLでは消極的なもの

男（攻め）の発情顔・射精時のイキ顔
男（受け）の苦悶・泣き顔・かわいそうな姿
フェラ系全般

まとめ

BLは少年漫画・アイドルコンテンツの要素である「男性同士のわちゃわちゃの観察」が可能となり、TLコンテンツを楽しむ際にノイズとなる「自己投影」を排除することが出来るという点で多くの女性たちに親しまれています。

女性は自分→推しの二者間での視点（自己投影）と推し⇆推し＋自分という第三者からの視点（観察）を多彩に使い分け、複合的にコンテンツを見ることができます。
一方で男性は自分→推しというただ一つの視点から逃れられないのです。

いかがでしたでしょうか？
男女の恋愛とは圧倒的に異なる「BL」について少しでも理解が深まったなら幸いです。