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バージョンアップした富士通の量子アプリケーション開発コンテストに迫る

こんにちは!富士通 広報 note編集部です。
昨年度、初めて開催された量子アプリケーションの開発コンテスト、Quantum Simulator Challenge(以下、量子シミュレータチャレンジ)の第二回目の開催が決定しました!🎊
賞金総額は10万米ドルと規模の大きい本コンテストは前回と何が違い、なぜ第2回目が開催されるのでしょうか?量子シミュレータチャレンジの運営責任者を務める、富士通 技術戦略本部 ビジネスインキュベーション統括部 シニアディレクターの駒月琢人に聞きました。第2回に向けた駒月の熱い思いに迫ります🔥

技術戦略本部 ビジネスインキュベーション統括部 シニアディレクター 駒月琢人

まず、今回の量子シミュレータチャレンジの概要を教えてください。

昨年に引き続き開催する、賞金総額10万米ドルを懸けたコンテスト形式のイベントです。参加チームは富士通の40量子ビットの量子シミュレータ上でアプリケーションを開発し、それぞれのチームが設定した問題解決テーマに取り組むものです。量子シミュレータ上でアプリケーションを開発するコンテストの開催は、市場でも先進的な取り組みです。コンテスト期間終了後に、開発されたアプリケーションの独自性や問題解決の難易度などを富士通の審査員が評価し、1位から3位の賞金受賞者が選定されます。1位の賞金は5万米ドルです。
 

前回のチャレンジはどのような感じでしたか?

前回の開催発表後は大きな反響をいただき、17の国や地域から43チームのエントリーがあり、書類選考を通過した20の企業や大学が量子シミュレータ上でそれぞれが設定した問題解決テーマに取り組み、コンテスト期間終了後に研究成果のレポートを提出しました。参加チーム全体で幅広い問題解決テーマが設定され、流体力学分野での研究的な計算から、クレジットカードの不正利用検知といったビジネス的な応用まで、バラエティに富んでいました。また、富士通は過去にこうした賞金形式のコンテストを開催したことがあまりなく、富士通らしくないイベントとしても注目されました。
 

今回はどんなチームの参加を期待していますか?

今年のチャレンジでは、より実践的なテーマが持ち込まれることを期待しています。今回、独自性、ビジネスへの応用性、アルゴリズム品質、活用度、フィードバックの5つの受賞者選考基準を応募ページにて事前公開しており、中でもビジネスへの応用性は、実際のユースシーンが想定できるビジネス型のアプリケーション開発に高い評価が与えられます。また、活用度はより多くの量子ビット・ノードを利用して複雑な問題解決テーマに取り組んだチームが評価されます。

今回開催されるコンテストでは、どのようなシミュレータをどのくらい使うことができますか?

今回のチャレンジで利用いただくのは、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」のCPU「A64FX」を搭載したスーパーコンピュータ「FX700」1,024ノードで構成される40量子ビットの量子シミュレータです。昨年は増強前の39量子ビット版を使用しましたが、参加チームからは、他社製品と比較して優れたパフォーマンスや計算速度について非常に高い評価をいただき、期間中の使用時間は5万6,000時間にも及びました。また、開発ツール面ではQiskit※に一部対応したソフトウェア開発キット(SDK)をご利用いただけます。さらに、今回の新機能として、よりメモリの効率性に優れ、誤り耐性量子計算(FTQC)のアルゴリズムに最適な決定グラフ型量子シミュレータが利用できます。
 
※Qiskit:IBMが開発し、オープンソースとして公開されている量子ソフトウェア開発ツール
 

決定グラフ型量子シミュレータとは何ですか?今までの量子シミュレータとは何が違うのですか?

現在、最も一般的な量子シミュレータは「状態ベクトル型」と呼ばれる方式を用いていますが、この方式は使用する量子ビット数に対して必要なメモリ量が指数関数的に増加するため、拡張性に課題を抱えています。一方、今回新たに利用いただける「決定グラフ型」は、特定の量子アルゴリズム、例えば、Shorの素因数分解アルゴリズムやGroverの探索アルゴリズムでメモリ効率や処理速度の向上を期待できるため、利用者にとってより幅広い選択肢を提供できると考えています。
 
参考:Fujitsu TECH BLOG 「決定グラフ型量子シミュレータのご紹介」
https://blog.fltech.dev/entry/2024/03/28/dd-simulator
 

本コンテストは賞金以外に参加者にとってどんなメリットがありますか?

今回は、よりビジネスにつながる実践的なプロジェクトに焦点を当てたいこともあり、コンテスト終了後の参加者とのビジネス協業も視野に入れています。実際、昨年参加いただいたチームの一つとは現在、お客様先で共同パイロットプロジェクトを進めています。今回のチャレンジにおいても、開発成果がビジネスにつながるような協業関係を築けることを期待しています。

量子シミュレータが今後どのように社会で活用されていくと思いますか?

よく言われているように、量子コンピュータは材料工学、創薬、金融などの様々な分野で大きな変革を起こす可能性を秘めています。その一方で、一般的な実用化にはまだ技術課題が多く、数年先になるとも見込まれています。量子シミュレータは来たるべき未来に備えて量子ソリューションの開発を実践できる場であり、将来の競争優位性を確保する上でも重要な技術だと考えています。また、本格的に量子コンピュータ時代が到来した後でも、誤りの発生しない量子シミュレータの需要や活用シーンが見込まれるため、富士通は引き続き研究開発を強化していきます。
 

最後に応募方法などの情報をお願いします

以下の応募ページから応募フォームをダウンロードできますので、必要事項やプロジェクトの概要などを記入の上、指定のメールアドレスまで送付願います。応募者が多数の場合、事前に書類選考させていただく場合があります。皆様の積極的なご参加をお待ちしています!

富士通研究所フェロー兼量子研究所長 佐藤信太郎

富士通研究所 フェロー 兼 量子研究所長 佐藤信太郎のコメント

量子コンピュータの社会実装に向けては、有用なアルゴリズムやアプリケーションを開発していくことが重要です。このコンテストでは様々な国や地域の大学やスタートアップから多くのアイデアが寄せられるため、富士通の研究員にとっても刺激になります。今回シミュレータチャレンジの第2回を開催するにあたり、ぜひ日本の有望なスタートアップや大学、研究機関のチームの皆さんにご参加いただき、富士通の量子コンピューティング技術に触れていただくことで、日本の量子コンピューティング研究が一層盛り上がることを願っています。ひいてはこのコンテストから、量子コンピュータの社会実装を大きく前進させるような成果が出てくることを期待しています。

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