見出し画像

東京都美術館「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展へ行ってきました

冒頭から、お尋ねします。

ウスターソースは常備していらっしゃいますか?

JAS(日本農林規格)によりますと「ウスターソース類」とは「野菜・果実・香辛料などを原材料として調製した液体調味料」で、粘度により「ウスターソース、中濃ソース、濃厚ソース」に分類され、地方によって嗜好に差があり西日本ではウスターソース、東日本では中濃ソースが主流なのだそうです。

それで、粘度が高いのが「濃厚ソース」、中くらいが「中濃ソース」、粘度が低いとくれば「薄いからウスターソース」と考えていませんか?いませんね。

私だけですね「薄いからウスターソース」だろうと思い込んでいたのは。

ウスターソースというのは、イギリスのウスターシャー州ウスターが発祥の地で、19世紀初頭に余った食材を調味料と共に保存していた主婦が偶然にも熟成されたソースを発見し(諸説あり)、その後、企業が生産するようになりイギリス全土へ普及、さらに、全世界へ広がったソース。

はい「ウスターソース」の「ウスター」はイギリスの地名だったのです。

次にアメリカの「ウスター」について、

イギリスのウスターソースが世界に広まりつつあった19世紀後半頃、アメリカのマサチューセッツ州にある「ウスター」というイギリスと同名の地は、アメリカでも重要な産業拠点となりつつあり、人口は10万人を超え、好調な産業界は芸術の力を借りて、より結束したい、より経済を潤したい、より町の発展に貢献したい、という思いがつのり、1898年に「ウスター美術館」を開館します。

ウスター美術館は限りある予算内で世界から美術品を買い集め、展覧会を開き、ちょうどフランスで最先端のムーブメント、印象派の画家たちの活動についても数多く紹介します。チューブ入り絵具の普及で屋外で描くことが可能になった印象派の画家たちが描いた、移ろう光の効果、情景の即時性、気軽さが、観る者への親近感を増し、多くの人に受け入れられる展示となり、美術館の展覧会は好評を博したようです。

また、アメリカの目利きの収集家たちはパリの画商から印象派の絵画を購入していたものの、当時、美術館が直接、印象派の絵画を買い取った例はなく、ウスター美術館が直接購入するか否か、内部でも賛否両論となり、最終的に購入することを決断した結果、なんと、モネのスイレンを最初に手に入れた美術館となり、印象派の黎明期れいめいきに貴重な作品を収集できて、後に、いい買い物だったということになり、めでたし、めでたし。

それまで、パリにいた印象派を支援する画商は、画家たちの絵を買い取っても、フランス国内ではあまり売れず、在庫を抱えていたところなので、アメリカなど国外の印象派人気を歓迎し、さらに絵画に箔が付くよう、例えばモネの絵に「一昔前の額縁を使う」などの工夫を凝らして売り込んだそうで。その結果、アメリカへの販売は好調となり、画商は印象派の絵画について「アメリカ人の大衆は笑ったりしない。買ってくれるのだ!」と、驚きを隠さず喜んだようです。

さて、ここからは、今回の東京都美術館「ウスター美術館所蔵」展についてです。展示は5つのブロックに分かれていて、ここでは、それぞれ一点の作品について紹介します。

最初のブロックは、

1.伝統に挑戦(印象派以前)

コロー(1796-1875)はフランスの古典的風景画から出発した画家で、後に独自の様式を確立します。よく見ると、左に白い帽子のまき拾い、右に赤い帽子の釣り人が今にも動き出しそうでいて、のどかな、左ぎっしり、右すっきりの作品です。


ここが印象派のメイン、

2.パリと印象派

チャイルド・ハッサム(1859-1935)はアメリカ生まれでヨーロッパの各地を渡り歩いた画家。この絵は印象派の影響を受けていた1888年頃の「花摘み、フランス式庭園にて」という、やはり、左ぎっしり、右すっきりと奥行きを感じる作品。


次がフランス以外の印象派、

3.国際的な広がり

イタリア生まれのサージェント(1856-1925)はモネと親交があった画家で、この絵は作成が中断されて未完成、ゆえに、花びらを描く直前のところとか、化粧前の顔みたいなところ、というように、未完成だからこそ、作成過程がうかがえる貴重な作品となっています。


そして、アメリカへ、

4.アメリカの印象派

この絵も「2」と同じ(一人二役?)チャイルド・ハッサム(1859-1935)が1885年頃に、アメリカで描いた「コロンバス大通り、雨の日」という作品です。車と運転手にピントが合い、奥の風景がぼやけているところが、まるで高機能カメラを使った写真のようで、一度見たら忘れられないような不思議な魅力の絵です。


ラストは印象派以外について、

5.まだ見ぬ景色を求めて

フランスの画家ポール・シニャック(1863-1935)の点描画による「ゴルフ・ジュアン」という作品。モネの影響を受け、色とりどりの点で絵を描き、見た人の目の中で色を混ぜるという科学的な知識が応用された作品です。


この作品から私が連想するのは、北海道の富良野にお住まいで作家、脚本家、演出家、そして、いつの間にか画家にもなっていた倉本そうさんが取り組んでいる「点描画」です。(Youtube動画はこちら、約4分)

あっ、すみません、この部分は東京都美術館の「ウスター美術館所蔵」展とは無関係でした。


(他にも東京都美術館「ウスター美術館所蔵」展、公式サイトの「みどころ」や「作品紹介」には、解説がたくさん用意されています)

最後に、

イギリスの「ウスター」とアメリカの「ウスター」は同じ地名ということで1998年から両者が姉妹都市となっています。なので今回は、かつてないオリジナルグッズという奇跡のコラボ商品が用意されていました。


「ウスター美術館所蔵」展に、
「ウスターソース」です!



読んでいただき、ありがとうございます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?