4月27日の日経新聞で、「同意ない配置転換、職種限定では違法 最高裁が初判断」というタイトルの記事が掲載されました。
同記事の一部を抜粋してみます。
上記が裁判官4人全員一致の結論ということです。今後同様の訴えが起こった際に、上記が重要な判例となっていくことが想定されます。
同日付の別記事「働き方、労使合意を重視 最高裁 「一方的な配転不可」初判断、丁寧な協議が要に」からも一部抜粋してみます。
前回、必ずしも個人発の意思決定ではない配属に関する「配属ガチャ」について考えました。配属ガチャも、運用次第で人材マネジメントとキャリア開発に資する取り組みになりえますが、あくまで雇用契約において成立する範囲内の話です。職種や勤務地などを特定することを前提に雇用契約している従業員に対しては、契約範囲外の対応を求める辞令は無効となることが明示された判例と言えそうです。
事案の内情の詳細は存じ上げませんが、以前からの労働契約で職種限定の合意がなされていたものと思われます。
その人の持ち味、強み、職業感などは、人それぞれです。より幅広い職務領域や人脈づくりを通してキャリア資本を蓄積していくことを望む人もいれば、特定領域に集中特化することを早くから意思決定している人もいます。
人事異動・配置転換に関するトラブルは、いろいろな会社で見聞きすることがあります。採用時の条件や就業規則で、社員は辞令に沿わなければならないと決まっていながらも、本人の希望に沿うかのような話を採用面接で受けているといった、あいまいな合意形成が背景になっていることが多いものです。これからはますます、あいまいな合意形成ではすまなくなるということを、同記事も示唆していると思います。
以前のような、会社員であれば一律で職種・勤務地・勤務時間が無限定であるという考え方が、自社の経営に最適解とは限りません。限定付き雇用にすることでパフォーマンスを引き上げることのできる人材に対しては、限定付き雇用契約を積極的に活用していくことが有効になります。
個人の側としては、そのメリットとリスクをよく考えるべきだと思います。同記事にもあるように、職種や勤務地で雇用を限定する場合、その職種や拠点が維持できなくなった場合は、本来的には雇用維持ができなくなるということになります。無限定であることのリスクや不都合を避けられる分、別のリスクを受け入れる必要があります。
少なくとも、これからの経営、採用、雇用契約においては、
・(状況の変化によっては解雇の可能性を含む)雇用条件をより明確にする
・採用時に雇用条件を労使双方がよく確認し、合意形成する
・人事や人材配置は雇用条件に沿った内容にする
ことに対して、一層丁寧に取り組む必要があると言えそうです。
少し前から各社で動きが盛んになってきている「ジョブ型雇用」を自社で採用する場合には、上記のことが一層求められます。
<まとめ>
雇用条件を明確にし、労使双方でよく合意形成する。