キャリアチャレンジ制度を考える
5月3日の日経新聞で、「コマツ、社員自ら異動登録 柔軟なキャリア形成支援 1.1万人対象、500の組織とマッチング」というタイトルの記事が掲載されました。希望による配置転換を可能にする制度や、多様な採用方法を推進する取り組みなどを取り上げた内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
ここでは、同記事に関連してポイントを3つ考えてみます。ひとつは、応募の対象範囲を全社ベースとし、応募の有無を自由にしていることです。
「その行動を自らの意思で決定した」=自己決定したと思えることは、その決定内容に愛着と責任感を高め、決めたことに対して高いパフォーマンスで実行しようとすることにつながります。
例えば上記のキャリアチャレンジ制度に応募するのも自己決定ですし、応募しないと決めることも自己決定になります。引き続き今の部署での担当業務に務めるという同じ結果だとしても、他律的にそうしなければならないという気持ちで臨むのか、自ら決定したという気持ちで臨むのかでは、パフォーマンスに差が出ると想定されます。
なお、自己決定の重要性については、以前にも取り上げたことがあります。ご参照になれば幸いです。
2つ目は、応募について上司承認を不要にしていることです。
上司は、担当する部署を束ねて成果を出す責任があります。よって、部署の成果を上げてくれる優秀なメンバーを重宝します。キャリアチャレンジ制度に手をあげるようなメンバーは、概して優秀な人材であることが多いものです。自ずと、上司の利害と対立します。そうした優秀な人材を手放そうとしないのが、よくある光景です。
よって、上司承認を必要としてしまうと、その時点で立ち消えとなってしまう応募が出てくることが想定されます。承認を不要にすることで、その事象を避けることができます。
さらに上記上司の反応は、短期的な時間軸での視点と言うことができます。同制度を通じた配置再編は、メンバーの人材育成(長期的に企業にリターンをもたらすパフォーマンスの向上)、企業全体でより適材適所の実現という、長期的な時間軸での視点となります。
上司も組織運営者として、長期的な組織成果に協力しながら短期的な成果創出をすることが求められるという認識のもと、応募には協力することが必要だと思います。また、そもそもそうしたメンバーが職場環境に閉塞感をもち離職を申し出た場合は、もっと急な形で部署運営が難しくなることを認識するべきだと言えます。これらの観点からも、上司承認不要は妥当なルールだろうと考えます。
3つ目は、会社主導の異動と並行させていることです。
キャリアの自己決定に慣れていない社員、あるいは自分が望む・進みたいキャリアパスや自分の強みなどが見えていない社員も多いものと想定されます。入社3年経過していない人材を対象外としているのも、自己を客観視し判断する力は不十分だろうという判断によると想定されます。
入社3年経過した人材であっても、本人が自律的にキャリアパスや自分の強みを生かす環境を特定する準備が整っているとは限りません。その場合には、会社主導の異動による新たな経験を積む機会の提案も意義があると言えます。自身では想像しなかった・選びようがなかった機会が偶発的に得やすい環境であるということも、社員という雇用形態で仕事に取り組む意義のひとつです。
同記事では、1万1000人の対象で、30人超の応募とあります。まだ1%に満たないわずかな応募率のようですが、今後成功事例が出てくると応募も増えるものと思われます。今後の動向が期待されるところだと思います。
<まとめ>
キャリアチャレンジ制度は、キャリアの自己決定を促す仕組みとなる。
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