藤見葉月@医療イラストエッセイ連載中

『医療知識ゼロの私が就職した病院はカオスでした』連載中。 医師事務作業者(クラーク)の…

藤見葉月@医療イラストエッセイ連載中

『医療知識ゼロの私が就職した病院はカオスでした』連載中。 医師事務作業者(クラーク)の医療エッセイを書いてます!普段は小説も書きます。 素敵なイラスト&編集→つかもとかずき さん twitter→@fujimi_hazuki mail→fujimihazuki@gmail.com

最近の記事

【カオス病院 #15】無縁仏

「新しい人かい? 俺? 俺はね…83歳! もうすぐ死ぬの」 そう言って笑った顔は、何となく幼いいたずらっ子を彷彿とさせた。彼は私が入職して初めて出会った患者だった。 回診の様子を柱の陰から伺ったり、病院中を徘徊したりと、いつの間にか彼は職員なら誰でも知っている、ちょっと問題な患者となった。彼の知名度の理由は他にもあった。 それは、カルテに踊る「現在、成年後見人申請中です」の文字のせいだ。 「ここは美人の職員ばかりだなぁ、あはは!」 とカラカラ呑気に笑うけれど、

    • 【カオス病院 #14】ブラックリスト入りした男~大暴れ編~

      (前編「ブラックリスト入りした男~襲来編~」を見てね!) ガンガンガンガン!! 突如、診察室の扉をたたく音が急に鳴り響いた。 「おい!! 紹介状まだかよ! おっせーよ! ふざけんなァァァ!」 「ひぃ!!」 私はすぐさま再び用心棒・筋さんを呼び出し、対応してもらった。遠くでクレーマーさんの怒鳴り声が聞こえる。 私は必死に紹介状を作成するが、まともに診察もできなかったため内容に非常に困っていた。紹介先である無難病院の人達にも申し訳なく、思うように文章が浮かばなかった。

      • 【カオス病院 #13】ブラックリスト入りした男~襲来編~

        「うっせーんだよ! 早く診察しろ!」 病院にはおよそ似つかわしくない大きな声が響き渡る。 「大変申し訳ございませんが、順番にご案内しておりますので……」 「もう30分も待ってるんだ。今すぐ診察しないと痛い目遭わすからな!?」 (みんな既に一時間以上待ってるのに……) クレーマーというものは残念なことにどこにでもいるようで、私が働くこの病院も例外ではなかった。 飲食店などでは、あまりに悪質なクレーマーは出入り禁止にするだろう。しかし病院は少し特殊で、余程のこと

        • 【カオス病院 #12】ギャルばあちゃん

          私の病院は変な人……もとい、個性的な人が多い。 あまりにキャラが濃いので、ベテラン看護師から 「本当……なんっなの、この病院は! 変な人多すぎ! こんな病院初めてだよ!」 「本当だよね……もう辞めたい……変人に付き合ってられないよ……」 という悲痛な声を聞いたことがある。なぜこんなに変人だらけになってしまったのだろうか。地理的な要因なのか、何かの呪いにかかっているのか……神のみぞ知る。 キャラ濃い軍団の筆頭者であるのが、ギャルばあちゃんだ。名前は渋谷原子(しぶやはら

          【カオス病院 #11】伝線ストッキングとの戦い

          私は非常におおざっぱである。消費期限切れのチーズケーキを平気で食べるあたり、お察しだと思うが……(詳しくは「【#4】愉快な手術室〜ターゲットになったら終了〜」を見てね!https://note.com/fujimi_hazuki/n/nf6ae44657a78)。 私たちは業務によって事務服を着ることがある。その際はストッキングを履くのだが……。女性の読者であれば説明するまでもないが、これが本当に繊細で、ちょっとした刺激ですぐに伝線してしまう。しかも、決して安くはない。

          【カオス病院 #11】伝線ストッキングとの戦い

          【カオス病院 #10】造影剤ショックとコードブルー

          「業務放送です。院内の医師・スタッフはCT室まで99番連絡ください。繰り返し連絡します……」 初めて聞いたその放送は、まるで迷子の放送のように、いたって事務的に伝えられた。 皆さんはコードブルーとは何かご存知だろうか? 山Pでお馴染みの「コードブルー」という人気ドラマの存在も手伝って、一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。コードブルーとは、一言でいうと…… 「やばい! 患者さんの容態が悪化して命が危ない! とにかくみんな集まって~!」 ということである。

          【カオス病院 #10】造影剤ショックとコードブルー

          【カオス病院 #9】服役中の人が病気になったらどうなるの?〜入院編〜

          刑務所に服役中の人が入院することは、私の病院ではそんなに珍しいことではない。提携先の病院なので、割と頻繁に受刑者の入院を受け入れている。 受刑者も人間なので病気になるのは当たり前だが、病院で働く以前は受刑者が行く医療機関のことなど、考えたこともなかった。「服役中、心臓発作のため市内の病院で~……」という報道を耳にすることがあるが、まさにその病院の一つが私の病院ということだ(※医療刑務所という施設もあるが、全国に四カ所のみ)。 前回(【#7】服役中の人が病気になったらどうな

          【カオス病院 #9】服役中の人が病気になったらどうなるの?〜入院編〜

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          【カオス病院 #8】登場人物紹介【漫画】

          【カオス病院 #8】登場人物紹介【漫画】

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          【カオス病院 #7】服役中の人が病気になったらどうなるの?〜外来編〜

          病院という場所は、あらゆる人が利用する非常にカオスな空間だ。 すぐキレるおばあさん。入院する前まではホームレスだったおじいさん。外国人のおねえさん。お金持ちのお兄さん。刑務所に服役中のおじさん。 本当に色々である。共通しているのは、「病気である」という一点のみだ。 ある日、私は衝撃的な光景を目の当たりにした。 いつものように外来の待合室をちらりと覗く。今日もたくさんの患者が自分の番を待っていた。どんな患者が来ているか観察する。様子がおかしい人や、困っている人はいな

          【カオス病院 #7】服役中の人が病気になったらどうなるの?〜外来編〜

          【カオス病院 #6】潔癖翔子の異常な生活

          同期入社である潔癖さんは、美人で有名だ。彼氏はずっといない。理由は単純明快で、高嶺の花だからである。 クールに仕事をこなし、いつも手作りのお弁当を持ってきている。そんな一見非の打ちどころがなさそうな彼女にも欠点がある。 潔癖翔子は、潔癖症である。 他人のパソコンは触りたがらないし、私が潔癖さんのパソコンを使おうとしたら「まぁ、いいけど」と明らかに不服そうな顔で言う。 最初はめちゃくちゃ几帳面な人、くらいにしか思っていなかったが、しばらく一緒にいることで彼女が潔癖症だと

          【カオス病院 #6】潔癖翔子の異常な生活

          【カオス病院 #5】グロ耐性診断

           入職して三日。右も左もわからない新入職員だった私たちは、ちょっとした窮地に立たされていた。 「や、やばい。私、無理……」 「う、うーん……これはなかなかキツいね……」 「……」 「え、ちょっと大丈夫!? 顔真っ青だよ!?」 「……」 「だめだ。先輩呼ばなきゃ……」  ぐったりとうなだれる同期の潔癖さんをそっと椅子に寝かせ、私は先輩の元へ走った。  新人はとにかく暇である。知識がなさすぎて、一人では何も出来ないからだ。誰にでも出来る簡単な仕事は、他の新人と奪い

          【カオス病院 #5】グロ耐性診断

          【カオス病院 #4】愉快な手術室〜ターゲットになったら終了〜

          「ねぇねぇ、知ってる? 放射線の茶髪の人と、今年入ってきたリハビリの子、付き合ってるらしいよ!」 「まじか……。それ、どこで聞いたの?」 「手術室!」 「またか……」  手術室は病院の情報交換所でもある。  手術室というと……白く無機質な空間、まばゆく照らされる手術台。術衣を着た医師たち、常に緊張感の漂う空気……。きっと誰もがこんなイメージを抱くだろう。  ところが現実の手術室は、かなり和気あいあいとした雰囲気である。実は病院内で一番楽しい場所なのではないか、と思

          【カオス病院 #4】愉快な手術室〜ターゲットになったら終了〜

          【カオス病院 #3】自己紹介と私の仕事について

           みなさん、はじめまして。藤見葉月(ふじみはづき)と申します。とある田舎でのんびりパートをしながら、夫と二人暮らしをしています。こんな普通の主婦の私ですが、以前ある地方都市でちょっぴり変わった仕事をしていました。  医師事務作業補助者という職業をご存じでしょうか? 名称が長いので、クラークとも呼ばれています。民間資格ですが、一応、資格試験もあります(資格がなくても働けます)。  仕事の内容は色々ありますが、一言でいうと「医者の雑用」です。   具体的には…… ・病院の受

          【カオス病院 #3】自己紹介と私の仕事について

          【カオス病院 #2】イケメンのお尻にブルーベリー!?〜血栓性外痔核〜【後編】

          後編 「では、ズボンと下着を膝までおろして、こちらのベッドに横になってください」  すらすらと定型文を述べ、カーテンを閉じる。尻の診察なので脱衣が必要なのは言うまでもない。それは診察される本人が一番理解しているはずだ。だが、言葉にこそしないが「やっぱり脱がないとダメか……」という絶望感がカーテン越しに伝わってきた。  イケメンの準備が出来たのを見計らい、失礼しますと声をかけてカーテンを開けた。お尻丸出しのままでは寒いし、恥ずかしいので、気持ちばかりのタオルをかけるのだ。

          【カオス病院 #2】イケメンのお尻にブルーベリー!?〜血栓性外痔核〜【後編】

          【カオス病院 #1】イケメンのお尻にブルーベリー!?〜血栓性外痔核〜【前編】

           病院は女の園である。  しかも私が勤めるこの病院は、患者の90%以上が高齢者だ。稀に入院してきた虫垂炎や肺気胸の若い男性に病院中が色めき立つほどだ。  そんなある日のこと、患者が来院したことを告げる内線がけたたましく鳴り響いた。 「はい、医局で……」言い終わる前にやたらとテンションの高い声が受話器にこだました。   声の主は受付の同期である。 「もしもーし、受付でーす! 驚かないで聞いてね……な、な、なんとぉー! イ・ケ・メ・ン! 受付しましたー!」 「あー、はいは

          【カオス病院 #1】イケメンのお尻にブルーベリー!?〜血栓性外痔核〜【前編】