藤井満

元新聞記者。著書に「京都大学ボヘミアン物語」「僕のコーチはがんの妻」「北陸の海辺自転車…

藤井満

元新聞記者。著書に「京都大学ボヘミアン物語」「僕のコーチはがんの妻」「北陸の海辺自転車紀行」「能登の里人ものがたり」「石鎚を守った男」など。 一部有料記事がありますが、訳あってアクセス数を減らすための措置なので、直接メッセージをいただければ一時的に無料で開放します。

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  • 異界・聖地巡り

    日本の聖地、あるいは異界の旅行記

  • 能登2011〜24

    大地震に襲われた奥能登。地震前の能登の魅力と被災状況と再生の道のりを追います

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    九州と沖縄の旅行記2022〜

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山梨の縄文遺跡

 岡本太郎や梅原猛の本を読んで以来、縄文の創造性にみせられている。2024年5月、山梨在住の友人に地元の縄文遺跡を案内してもらった。最初にたずねたのは南アルプス市の「ふるさと文化伝承館」だ。 干魃と水害の地  伝承館は入館無料なのに、スタッフのお姉さんがつきっきりで説明してくれる。まずは周辺の地理や環境の紹介から。  御勅使(みだい)川扇状地は、南北約10キロ、東西約7.5キロで、日本でも有数の規模だ。砂礫が100メートルもつもった場所もあり、水はけがよすぎて農地にできな

    • 能登2011-24 避難所の菩薩に「能登はやさしや」を実感 藤平朝雄さん(輪島市町野町)

      窓岩の窓がきえた  輪島市町野町の曽々木海岸にすむ藤平朝雄さん(84)は、妻の友子さんと息子夫婦、孫の5人で2024年元日をむかえた。  毎年正月には、窓岩の目の前の海でとれたイワノリの雑煮をたべる。すまし汁の白い餅に、磯の香りがこうばしいノリをたっぷりまぶす。  午後2時ごろ、年賀状を書いていて眠気をおぼえ、外にでた。窓岩が日の光をあびてこうこうとかがやいている。2023年は友子さんの病気などがあって大変だった。 「今年こそはよい年になりますように」 「母ちゃんの体がよく

      • 最澄と空海<梅原猛>

        ■小学館文庫 20240429 ▽仏教の流れ  釈迦の言行録の経典をもとに、500年ほど原始仏教(小乗仏教)がつづき、1世紀から3世紀にかけて龍樹らが革新運動をおこす。  欲望を否定して清い生活をしているだけではなく、大衆のなかにはいれ、と説き、大衆救済にはげむ人間「菩薩」を生み出す。原始仏教の欲望の否定も「こだわり」であるとし、肯定でも否定でもない「空」という概念を生み出す。これによって人間的な釈迦の仏教とは異なる、毘盧遮那(=大日如来)をかかげる自然中心の教えになり、そ

        • 民博「日本の仮面――芸能と祭りの世界」

           民博の「日本の仮面――芸能と祭りの世界」を見に行った。  能や狂言など、さまざまな面がある。それらをただ年代別やカテゴリーで分類してならべるだけでなく、「仮面」の意味をさぐる。民博の展示のおもしろさはそんな「意味」の抽出にある。  縄文時代や弥生時代から能面のような不気味な「仮面」は存在した。  島根の神楽は豪華で華々しくて楽しい。出雲では、江戸時代は神職がになっていたが、明治になって、氏子が上演するようになり、それを神楽道具の貸元がささえた。そんな変化がなければ、出雲や石

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          能登2011-24 先端のムラ、在来大豆で元気に(珠洲市・横山)

           能登半島の北端ではかつて「大浜大豆」という在来種の大豆が栽培されていた。冬場には豆乳を海水でかためて熱々の寄せ豆腐つくり、囲炉裏端ですすった。高度経済成長をへて姿を消したと思われたが、村おこしの一環で復活。地域の活性化と絆づくりの切り札になっている。(取材は2011年) 葉たばこ拡大で消えた品種  能登半島北端の禄剛崎の西側に位置する珠洲市の横山集落は、約30軒の農家がそれぞれ5反(50アール)前後の田畑や出稼ぎで生計をたててきた。1997年、当時流行した「一村一品運動

          能登2011-24 先端のムラ、在来大豆で元気に(珠洲市・横山)

          能登2011-24 水仙の咲く桃源郷・大西山(輪島市)

           雪がところどころに残る田の畦で、水仙の葉が頭をもたげ、つぼみをふくらませている。人口わずか50人の輪島市・大西山には4月半ばになると、数万輪の花が咲きほこる。「能登の桃源郷」とよぶ人もいる水仙の里の歩みは30年前、ホームセンターの店先にあった3粒の球根からはじまった。(2013年取材) ホームセンターの球根3粒から  輪島市中心部から東へ14キロ。大西山地区は、川沿いの細い道をのぼりつめた標高100メートル前後のひらけた谷にある。  地区の最奥の集落にすむ竹中信子さん(

          能登2011-24 水仙の咲く桃源郷・大西山(輪島市)

          能登2011-24 日本史をかきかえた網野善彦の原点「時国家」(輪島市町野町)

           輪島市街から20キロ、能登半島の先端にむかった輪島市町野町の曽々木海岸は、板状の岩に直径2メートルの穴があいた奇岩「窓岩」で知られている。  曽々木は、能登で一番大きな河川である町野川の河口にあたり、かつて大きな潟湖があり、昭和のはじめまではたくさんの船が出入りしていた。  町野川を数百メートルさかのぼると、時国家(下時国家)、さらに300メートル上流に上時国家がある。  下時国家は間口24.2メートル、奥行き14.7メートルで、敷地内に安徳天皇をまつった社がある。 上時国

          能登2011-24 日本史をかきかえた網野善彦の原点「時国家」(輪島市町野町)

          まつろわぬ「両面宿儺」に自らを重ねた、まつろわぬ円空 「円空 旅して、彫って、祈って」から

           2022年、岐阜県高山市丹生川町の「千光寺」という山寺を訪ねた。  1600年前の仁徳天皇の時代に、乗鞍山麓の豪族である両面宿儺(すくな)が、古代信仰の場として開山したとつたえられている。  両面宿儺は、ひとつの胴体にふたつの顔があり、手足が各4本ある怪物で、「日本書紀」では、人々をしいたげる凶賊として武振熊命に討たれたことになっている。  出雲には、大国主命が大和王権の祖先である天孫族に国をゆずった、という神話がある。これは最後まで抵抗する古代出雲王国を大和王権が屈服さ

          まつろわぬ「両面宿儺」に自らを重ねた、まつろわぬ円空 「円空 旅して、彫って、祈って」から

          能登2011~24 鋳物と左官の中居(穴水)

           鏡のような海にカキ養殖の筏が浮かぶ中居湾(穴水町)をながめながら、高台の「さとりの道」を歩くと、わずか1キロほどの道沿いに9つの寺社があらわれた。海沿いの中居の集落には重厚な土蔵がいくつもならぶ。わずかな農地しかない集落に、多くの寺社と蔵をたてる経済力をもたらした背景には、江戸時代の塩づくりがあったという。 塩づくりささえた鋳物産業  中居はかつて鋳物の町としてさかえた。砂鉄や粘土などの原料や、マツやクリの木などの燃料、さらに天然の良港があったからだ。江戸時代は、塩田で

          能登2011~24 鋳物と左官の中居(穴水)

          大宮盆栽村の精神性と先進性202404

           埼玉でそだったから、小学校の郷土学習本で「盆栽村」を見た記憶があったが、辛気くさい盆栽には興味のかけらもわかなかった。  でも2020年の四国遍路の途中で香川県高松市の鬼無という、松の盆栽の8割を産出している集落を歩いたとき、大宮の「盆栽村」を思いだした。  2024年4月、東武野田線に乗って大宮公園駅におりて、北にむかった。  日本近代漫画の先駆者とされる北沢楽天を顕彰する「漫画会館」をへて10分ほどで「大宮盆栽美術館」(310円)に着いた。  江戸時代、江戸の団子坂(

          大宮盆栽村の精神性と先進性202404

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          ボヘミアンのモロコとりツアー

          #京都大学ボヘミアン物語 登場人物たちが、ボヘ一番の釣り名人ミズコの指導でモロコとりにでかけました。コツは……

          ボヘミアンのモロコとりツアー

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          能登2011~24⑪里山の生業づくり ケロンの小さな村 孫とともに復興

          先生がつくった小さな里山 能登町斉和地区  世界農業遺産(GIAHS)で評価された「里山」は手つかずの大自然ではない。人の手をくわえることでつくられた環境だ。能登町斉和地区に元高校教師が開いた「ケロンの小さな村」は、そんな里山の可能性をおいもとめている。(2013年取材)  珠洲道路から200メートルほどわけいった谷間の棚田は放棄されて30年をへていた。背丈をこえるカヤや蔓草がおいしげり、湧きでる冷たい水で足下はぬかるんでいる。  2007年、高校教諭をやめて農地をさがし

          能登2011~24⑪里山の生業づくり ケロンの小さな村 孫とともに復興

          能登2011~24⑩里山の生業づくり ブルーベリーと夢一輪館

          無農薬ブルーベリー「町の顔」に  夏、能登半島内陸部の旧柳田村(能登町)を走ると、あちこちの畑や民家の庭にブルーベリーがたわわにみのり、「道の駅」にはブルーベリーのアイスやワインがならぶ。健康ブームもあって無農薬のブルーベリーが評判をよび、今や能登町は北陸最大のブルーベリー産地になった。でもなぜ能登にブルーベリーなのだろう。(年齢は取材当時)  「猿鬼」という怪物が神の軍隊に毒矢で退治され、黒い血が50里もながれた という逸話がつたわる能登町五十里。2013年6月末、町野

          能登2011~24⑩里山の生業づくり ブルーベリーと夢一輪館

          能登2011~24⑨避難所で生きた漁師の知恵

           2024年元日の能登半島地震で、半島の外浦(日本海側)は最大約4メートルも隆起した。海底が陸になり、多くの漁船が漁港で座礁した。  石川県最大の漁港・輪島も、水深が浅くなり、200隻の漁船が港外にでられなくなった。  輪島の冬はズワイガニやタラが次々に水揚げされるかき入れ時だが、元日以来、港はしずまりかえっている。  ぼくは2月11日と3月15日、輪島市の中心街の西側に隣接する海士町と輪島崎町という漁師町を歩いた。 干上がった塩水プール  輪島の海はどの程度、隆起したの

          能登2011~24⑨避難所で生きた漁師の知恵

          能登2011~24⑧ため池で団結 「総掛かり」の村おこし 輪島市・金蔵

           輪島市町野町の山あいにある金蔵集落は「限界集落のトップランナー」と評されている。64世帯156人(2011年)の里に、歴史や民俗の研究者やボランティアの学生らが頻繁に出入りする。地元の米でつくった酒を、埋蔵金伝説にちなんで「米蔵金」と名づけ、パッケージをデザインしたのは外部の若者だった。  その活動の中心になっているのが、NPO法人「やすらぎの里 金蔵学校」だ。「あなたが先生、私が生徒」「私が先生、あなたが生徒」をスローガンに、住民が知恵をだしあい、さまざまな活動を展開して

          能登2011~24⑧ため池で団結 「総掛かり」の村おこし 輪島市・金蔵

          能登半島地震にともなう輪島の隆起202403

          能登半島・輪島の袖ヶ浜と鴨ケ浦の「隆起」の状況を撮りました。

          能登半島地震にともなう輪島の隆起202403