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雪が降るとワクワクする

東京に雪が降った。積もるほど降るのは久しぶりで雪の反射がレフ板のように人々の顔を照らしている。いつもより光が当たって今日の顔は盛れるはずなのに、交通が麻痺して帰宅が困難になった人々の顔はとても疲れていた。そりゃそうだ。足は濡れて冷たいし滑って転んで尻もちも打つ。でも僕はワクワクしていた。

雪国と縁がない僕はスキーやスノボをしたことがない。スノーボーダーの平野歩夢のハーフパイプを見にゲレンデに行ったことはあるが滑ったことはない。誰かを誘って滑る気もなければ、誘われることもない。

数年前に雪が積もった夜に代々木公園に行ったことがある。代々木公園は渋谷区にある大きな公園でよく散歩していたので庭のように自由に歩けた。しかし見慣れた公園でも雪が積もると道が見えなくなり、車や人の声も雪が音を吸収して聞こえず、その夜僕は方向感覚を失った。そして都会の真ん中で遭難しかけた。数時間かけて雪の中を彷徨い木々をかき分けて脱出した頃にはヘトヘトだった。

自分で言うのもなんだが僕は生命力に溢れていると思う。ワクワクしたら心のまま進み、困難が起きたらがむしゃらにもがく。平野歩夢を見にゲレンデに行ったのも代々木公園で遭難しかけたのもひとりだった。いつもひとりでワクワクしてもがいている。雪の夜にそんなことを考えていた。

朝になれば中途半端に降った雪が凍り交通は乱れ東京はパニックになるだろう。夜には美しかった雪も革靴に踏まれて土が混ざり視界から消える。ワクワクする気持ちも同じで持続することはない。同様に困難も永遠に続かない。誰かと体験すればどちらも長く続くのだろうか。雪の夜にそんなことを考えていた。



Podcast | 藤田哲平のアラオネ

毎週水曜日の夕方5時にポッドキャストを配信中。人生の場数を踏んで発酵をはじめたアラフォーの視点でライフスタイルやデザイン、音楽やカルチャー、LGBTQ+の話をしています。アーカイブはいつでも聴けます。


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