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人生のシナリオ、図らずも

私は今カフェを経営しているけども、これは長年の夢というわけではなかった。

とにかく料理が好きで、食べ物のまわりにいることが幸せなのは昔からで、高校時代からバイトと言えば飲食しか思いつかず、まずはコーヒー専門店で数年勤めた。

高校を出て初めて働いたのは、大規模な多国籍レストランだった。その店が潰れてしまったので、紹介でしばらく健康食品とセラピーを扱うサロンの事務をし、そうこうするうちに今度は某美術館のカフェで働くことになった。多国籍レストランの時のシェフが声をかけてくれたのだ。その次に行ったのは沖縄料理店で、そうこうするうちに妊娠出産。落ち着いたら今度は、近所のこれまた無国籍なカフェでしばらくバイトした。

この間、具体的な将来への展望はゼロで、とにかく目の前の面白そうなものに飛びついたり、紹介されて流されるままに動いたり。同じ飲食店で働く仲間には「将来は自分の店を」と熱く語る人も少なくなかったけれど、私は「ふーん、そうなんだー」と完全な他人事として聞くだけだった。

とにかく当時の私はひどい摂食障害で病んでいたので、将来どうやって暮らしていこうなんて考える余裕がなかった。ただただその日その日を、なるべく自分の好きな環境で過ごすのが精一杯で。

ある時、摂食障害を脱出する過程で「本当に好きなことをして生きよう」と決意したは良かったけど、はて、私の本当に好きなことって?と考えてみると、それはあまりに多岐に渡っていて収拾がつかなかった。

・料理が好き
・建築が好き
・インテリアが好き
・カフェでのんびりするのが好き
・文章を書くのが好き
・歌ったり踊ったりが好き
・旅が好き
・国際交流が好き
・人間の探求が好き

書き出してみた、好きなことあれこれを前に、私はしばらく途方に暮れた。

で、結局私は何の人なの?この好きなことを全て満たすには一体何をしたらいいの?

考えても分からなかったので、しばし寝かせていたある日、天啓のように「カフェやればいいじゃん」が降ってきて、それはもう本当に雷に撃たれたような衝撃だった。

そんなことは一度も考えたことがなかったのだ。

カフェをやれば、料理ができる。さすがに建物を建てるところからは難しいけど、セルフリノベーションぐらいのレベルで建築の世界も垣間見ることはできるだろう。自宅で自己満足するだけだったインテリアも、カフェをやればたくさんの人に楽しんでもらえる。なんならその店で自分が歌ったり踊ったりするのも良いし、いろんな人に歌ったり踊ったりしてもらうのも楽しそうだ。外国人のお客さんが来てくれれば、国際交流もできるだろう。。

文章と旅と人間の探求だけはちょっと店と関係ないかもしれないけど、それぐらいなら店の傍ら、別でやれそうだし。

そうか!カフェをやればいいのかー!

と分かった時の衝撃はほんとにすごかったですね。。

「あんたその経歴でカフェやるなんて普通すぎて誰でも予想つくでしょ」と傍目には見えるかもしれないが、本人は全く予想していなかったのだ。

自分で何かを立ち上げる、みたいなことから縁遠すぎる性格だったしね。

いざカフェを始めてみると、何も考えずにやってきただけの経歴が、本当に見事に活きることに驚いた。

コーヒー専門店で働いていたから、コーヒーや紅茶やケーキの扱いはばっちりだった。大規模な多国籍レストランで大量の仕込みをガンガン任されていたので、料理の仕込みへの耐性もばっちりだった。某美術館のカフェでは、ひたすらケーキをきれいに切る作業をしていたのでこれも活きた。沖縄料理店は居酒屋だったので、お酒の扱いもある程度覚えた。最後にバイトしたカフェではカフェ業務の全体を経験することができたし、イベントの運営にも携わったのがこれまた活きた。

全て当時はただ目の前の面白そうなことに飛びついただけだったのに、結果的にはもう、パズルのピースがはまるように見事にどれもこれも活きて、笑っちゃうぐらいだった。

カフェには関係なかったけれど、セラピーサロンでセラピーの現場に数年いたことも、別でやっているセッションの仕事にそのまま活きた。こわいぐらいだった。

ただ一つだけ、過去のあれこれの中で全く現在に活きてないぞ!?というものがあって

それは「webデザインの学校に行ったこと」

もしかしたら今後何かの形で活きる可能性もゼロではないけど、ちょっと考えにくい。

実はその時私は、面白そうだからやってみる、といういつもの動き方ではなく「これで稼げないかな?」という打算で学校に行くことを決めた。

もちろん個人的にブログやサイトをいじる作業が楽しくて、これをもっと深めてみたい、というのが動機ではあったのだけど、それにしてもやっぱり打算だった。

webデザインの学校なんて、なんかそれっぽいじゃないですか。まともな社会人ぽいと言うのかなー。お仕事ちゃんとできる人ですよ!っていうね、そういう雰囲気の世界に入ってみようとしちゃったの。できないくせに。

学校に行ってみて分かったのは、私が好きなのは色彩や形を扱うことであって、パソコンの作業ではない、ということだった。個人的にいじるぐらいのレベルなら楽しめたパソコン作業も、仕事としてやるレベルで学んでみたら苦行でしかなかった。

私はどうしたって自由奔放なアーティストでしかなくて、お仕事できる真っ当な社会人には、なれそうもなかった。webデザイン計画は、あっという間に頓挫した。

(その後、技術はあるけどセンスに自信がないデザイナーの影武者としてお金をいただいたりは多少したのだけど、その時活きたのは私のアーティスティック部分だけであって、デザインの学校で学んだようなあれこれは、結局私の担う部分ではなかった)

この経験から思うのだけど、何も考えず、将来性も何もなく、ただただ目の前の「好き」「楽しそう」に従って動いたことは、結果的に人生のシナリオにがっちり沿っていて、必要なピースを次々に集める作業になっている。

しかし打算で「こうしたら稼げるかも」とか「世の中的には、、」なんて考えて動いたことは、ハシにもボーにも、何の役にも立たない。

人生、ただただベルトコンベアーのように、流れてくるものの中から「あっあれ面白そう」とつまみ食いしていたら、いつの間にか自分自身も然るべきところに運ばれているものであって

ああしてこうして、ここでこのアイテムをゲットしてあそこに向かおう!

なんてちっぽけな脳みそで考えたって話にならない、ということなのかもしれない。

応援してくださると、とってもとってもよろこびます♡