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読書による気づき~「子どもの不登校に向き合うとき、おとなが大切にしたいこと」

つい先日、スマホを見たらグーグルフォトから「2018年11月〇日の思い出」と題されたお知らせが来ました。

不定期に数年前の同日の写真が表示されるサービスですが、その写真は道路を何枚か撮影したものでありパッと見た限りでは一体何の写真なのかすぐには思い出すことができませんでした。

写真に写っている信号機の交差点の名前を見たときハッとして記憶が蘇りました。5年前、中学2年生で不登校になった長女を適応指導教室に初めて連れていった時に撮った写真であり、その後教室に通うことになった場合、長女が電車に乗って一人でも行けるよう、駅からの道に迷わないようにと右折や左折のポイントを撮った写真でした。

適応指導教室に通えば中学校の出席にカウントされるということで希望を見出したのですが、結局、学校の敷地の一部にある同教室は「学校の匂い」がするものであり、長女には合わず、その後通うことはありませんでした。

不登校になったばかりで親として何かしなければと焦ってばかりいたその時から5年。長女はその後中学卒業まで不登校、通信制高校を経て今年から大学に通っています。

この度、医師であり臨床心理士である田中茂樹さん著「子どもの不登校に向き合うとき、おとなが大切にしたいこと」を読みました。

子どもが不登校になったとき、自分もそうでしたが、親としてまず考えることは「何とかして子どもが学校に行けるようにしたい」ということだと思います。

私の場合、正確にいうと不登校の予兆とも言える「行き渋り」が始まった時にそう思っていました。朝早く仕事に出掛けた後に妻から今日も学校を休んだという報告のラインが来て落ち込むということの繰り返しでした。

長女に対し直接「学校に行け」と言ったことはないのですが、親が学校に行って欲しいと思っていることは完全に見透かされていたと思います。

その後、完全に不登校となり、長女のあまりにも辛そうな姿を見るととても学校に行って欲しいなんてことは思えなくなり、不登校を受け入れようと思いました。

その段階で本書のいう「子どもの不登校に向き合うとき」という状態になったわけですが、そこで親としては何をどうすればよいか悩むわけです。

勉強が遅れる、高校は行けるのか、将来どうなるのか、このままずっと引きこもってしまうのではないか…

そんな焦りから親として何とかしなくてはいけないと考え色々と調べ、先ほど言いました適応指導教室の話にも繋がるのですが、なかなかうまくはいかない。

結果的には「見守る」ということに落ち着き、数か月が経過した頃には本人にとっても親にとっても不登校が日常となり、その上で通信制高校を目指すというところに向かっていけたように思います。

「見守る」って「甘やかし」じゃなの?とか、何もしないというのは親としてどうなのかとか、誰に言われたわけでもないのですが、本当にそれでいいのかという葛藤はありました。

本書を読んで感じ、気づけたのは、子どもが不登校になったときの親の対応として「無理に学校に行かせない」「見守る」「味方になる」と最近一般的に言われていることの本質は何なのかということについてです。

著者の田中先生の医師や臨床心理士としての立場から、そして子を持つ親の立場から実例を交えて分かりやすく紹介、解説されています。

もし、不登校の渦中にあった4年前、5年前にこの本に出合えていたならばまた違った対応を子どもに対してできたのかもしれまえせん。

ただ、本書に締めくくりに田中先生が書かれた次のフレーズにハッとしました。

それでは「不確実な未来で生きていく子どもに、親ができることはなんなのか?」ということなんですが、私がカウンセリングで取っている方針は「子どもが家でリラックスして過ごせるようにする」ということなんです。
それが結局子どもが生き残っていくこと・幸せに生き残っていくことに一番役に立つんだと。
親にとってではなくて、子ども自身にとって幸せな道を見つけやすくなるんだと。それが親の幸せでもあるんだと。

子どもの不登校に向き合うとき、おとなが大切にしたいこと

私が子の不登校を通じ、行きついた結論は「家を子にとって安心できる居場所にする」ということ。いろいろと上手くいかないこともありましたが、この土台を崩さなければきっと良い方向に向かう。そう信じてやってきました。

専門家の立場でこのように言語化されていること、書籍として書かれていることに感激したとともに、土台ということに関しては自分の考えは決して間違えていなかったのかなという気持ちになれました。

本書は、著者が悩める自分に語りかけてくれているように感じられ、何度でも読み返したくなる素敵な本です。
是非、多くの人に手に取ってもらえたらと思います。


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