買い物もまた経験。
#20240114-341
2024年1月14日(日)
親である私たち夫婦から、そして両家の祖父母からお年玉をいただいたノコ(娘小4)は小金持ちだ。
日頃、持たない金額にすっかり気が大きくなっている。
一緒に映画館に行けば、私が買うポップコーンのサイズに顔をしかめる。
「ねぇ、私がその分出せば、大きなサイズにしてくれる?」
それは食事をしっかり食べられるようになってからにしてくれ。
「お金を出せばいいっていうもんじゃないよ。まずはご飯を残さず食べられるようになったらね」
映画を楽しんだ後は、なめるように売店を物色し、パンフレットとグッズを購入した。
シネコンはショッピングモールの上階にある。エスカレーターで下りていくと、ノコの目を魅きつける品々が並んでいる。
「ママママ、アイス食べたい」
「ポップコーン食べたんだから、今日のおやつはおしまい」
そういうときに限って、ノコが食べたいアイスを手にした小学生男子の一団がエスカレーターに乗り込んできた。前に後ろにやいのやいのいいながら、アイスをスプーンですくったり、なめたり、齧ったり。
「自分で買えばいい?」
「買うのはいいけれど、今日のおやつはもうおしまいだから食べられないよ。持ち帰るには遠いから買わないほうがいいと思うな」
きちんと食事を食べるのなら、外出先でおやつのおまけもよい。ノコは少量しか盛らない食事でも食べ切ることがあまりない。
「自分のお金なのに、好きな物も買えないんだね!」
ノコがじろりと睨んだ。
「買うのはいいよ。ただ持ち帰るには遠いっていうだけ」
駅のホームでノコがいう。
「ジュース、飲みたい」
「水筒があるよ」
「自分で買えば飲んでもいい?」
あぁ、こりゃあもう家に着くまで「欲しい」「買っていい?」が続きそうだ。
ノコのお金なので、好きに使うことも私は経験だと思っている。
「ちなみに、自動販売機で買うよりスーパーで買った方が安いよ」
「いいの!」
140円のジュースを買うことにしたらしい。ノコは100円硬貨を2枚自販機に投入した。
「おつりは60円」
そう呟いて、「おつり・返却」とあるレバーを引こうとする。
「お金、戻っちゃうよ!」
慌てて、ノコの手を止める。
まぁ、戻ったところでまた投入すればいいだけなのだが、もうすぐ電車が到着してしまう。
「お金を入れたら、ほしい物のボタンを押せばいいよ」
低い音がして、ペットボトルが取り出し口に落下した。
「はい、お釣りを忘れないようにね」
「どこから出るの? あー、ここか!」
ノコがもたもたと硬貨を財布に入れたところで、電車がホームに入ってきた。
下車駅では本を買うという。
本を2冊買おうとするが、「980円+税」「990円+税」という表記がわからず、計算ができない。
「ママママ、これっていくら? いくらあれば買える?」
「本の場合は消費税が10%だから、0をひとつ取った金額が税だよ。こっちの本は980足す98円、こっちは990足す99円」
「ええええ???」
だいたいの数での計算は算数で学習しているが、頭のなかで概算はできないようだ。
「まぁ、今あるお金で大丈夫だよ」
私はノコの背を押して、レジの列に並ばせる。
「頑張っておいで。本屋さんだから図書カードも使えるよ」
ノコは図書カードでの支払いに挑戦している。
「本にカバーをおつけしますか?」
にこやかに店員に問われ、ノコが戸惑った表情で振り返った。
「どういうカバーか尋いて、自分でどうするか決めてごらん」
パンフレットにグッズ、ペットボトルのジュース、本。
現金に図書カードでの支払い、店員相手に自販機での購入。
財布を握りしめ、今日一日でノコはさまざまな経験をした。
むーくん(夫)はひと月もつか怪しいノコの荒い買い物に釘を刺すが、私はすぐに底をついたとしてもそれもまた経験だと思っている。
今、ノコはお金を使うことで、経験を買っている。
物品ではなく、その過程を買っている。
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