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言葉だけでわからない子どもの欲求。深掘りして、あちこちから眺めて、はじめて見えてくるもの。

#20231208-313

2023年12月8日(金)
 ノコ(娘小4)へのお小遣いは、小学3年生の秋からはじめた。

 ただに関しては、お小遣いとは別にノコが望むだけ与えるつもりだったが、児童書の全シリーズや長編漫画全巻など高額書籍をいうようになったので、月に3,000円までとした。
 「読みたい本ノート」にノコが記入すると、随時私が図書館で貸出予約をしたり、書店で購入したりする。児童書は1冊1,000円以上のものが多いため、中古本も視野に入れて用意している。
 今のところ、数百円のおまけをして月5~6冊はノコの手元に届いている。
 そのほかに、私が個人的にノコに読んでほしいと思う本は棚にそっと並べたりもする。
 私としては、なかなかの冊数だと思っていたのだが、ノコはそう感じていなかった。

 ノコが私の本棚をじっと睨んでいる。
 「ママって、ズルいよね
 「ズルいって何が?」
 無言でノコは私の本棚を指差した。
 長い一拍をおいてから不満げな声が出た。
 「こんなに本、持っててさ。自分でもすぐ本買うし
 そりゃあ、私は半世紀生きている。手放したりもしているが、それなりの冊数になる。
 だが、私とて欲するままに買っているわけではない。私のお小遣いの範囲内で悩みつつ、厳選しつつ購入している。金銭的な問題だけでなく、置く場所の問題もある。図書館もよく利用している。
 「3,000円って少な過ぎる!
 いや、あなたの月のお小遣いの3倍だよ。
 「〇〇君は貯金が7億円あるんだって」
 いやぁ、それはないだろう。どこの大富豪のご令息だ。
 「それは〇〇君の勘違いか、ふざけていっているか、ノコさんの聞き間違えかな。子どもでそれだけの貯金がある子は日本にいないよ」
 「だって、生まれたときからのお年玉とかを貯金してるんだよ! 生まれてからずっともらえてるんだよ!

 そこ……なのか。
 小学4年生。
 算数の授業で大きな数字は学習済みだ。単位だけなら、「億」だって「兆」だって知っている。知っているのと身を通して実感しているのは違う。
 「あのね、大人が一生のうちに稼げるお金は約2億円っていわれているの。2億円だよ。まだ9年か10年しか生きていない、しかも働いていない子どもが7億円も持っているとは、ママは思えないな」
 我ながら、なんとも冴えない返答だ。
 ノコにとって、7億円という数字が重要なわけではない。
 いいたいのは、月3,000円という書籍代が少な過ぎることだろう。
 それから、生まれたときから貯金している子と里子の自分は違うといいたいのかもしれない。私は森谷家に来てまだ4年だ、と暗にいっているのかもしれない。

 ノコの成長や物価の高騰により、このところノコに掛かる費用が増えてきた
 ノコの望みは叶えてあげたいが、お金は有限だ。
 これをどういった形でノコに伝えるか。お小遣いを通して、お金や労働の価値を感じてくれればよかったのだが、それはまだ無理そうだ。
 物であふれる現代社会では、欲しくなるものがそこかしこにあふれている。自分のなかで自分が心から「欲しい」という基準がないと生きづらい。
今のノコは、ただただ我慢を強いられていると感じているのだろう。

 いや、待て。
 そもそもノコの望みは、本当に「本の購入額を上げる」ことなのだろうか。
 3,000円以上にすれば解決するのだろうか。ノコは満足するのだろうか。
 少な過ぎるという前、ノコは何ていっていた?

 ――ママって、ズルいよね。
 ――こんなに本、持っててさ。
 ――自分でも本すぐ買うし。

 ノコの不満を解決するには、要望をそのまま叶えることではないかもしれない。
 もしかしたら、望みがどこまで叶うのか、私たち夫婦を試しているのかもしれない。
 いや、我が家には本がたくさんあるが、すべてノコが読んでいいわけではない。それは内容的な問題だけでなく、ノコの本の扱いが雑過ぎるからだ。どうしても大切にしている本をノコの自由にさせてあげられない私がいる。
 ママの本棚を見て、読みたい本が読めない悔しさだろうか。
 それとも、次から次へとやるべきことがある毎日に嫌気がさし、思う存分、読みたい本を読む「時間」を求めているのかもしれない。

 あぁ、危ない。
 金額だけに目がいって、金額を上げられるのか、または3,000円の価値をどうすればノコに伝わるのか方法を探すところだった。
 ノコの不満を掘り下げて、「何が」不満なのかを見極めなければ、いつまで経ってもノコのなかの「ママはズルい」は消えない。

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