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目下、娘は新しい担任教諭を見定め中。

#20240417-386

2024年4月17日(水)
 里子のノコ(娘小5)が小学5年生に進級して、1週間が過ぎた。
 ノコによると、新しく着任した担任教諭はとにかく「元気、元気、元気」とパワフルな人柄のようだ。
 ノコも常に歌い、ステップを踏んだりと声を出していなくても存在そのものがわしゃわしゃとかしましい。ノコと暮らすようになって、はじめて自分が静けさを好み、年齢によるものかもしれないが、耳が疲れやすいことに私は気付いた。
 そんな我が家の賑やかさの源であるノコがいう。
 「〇〇先生、声が大きくてうるさい」
 「ママァ、鼓膜が破れそう」
 「給食中も大声で『うまい!うまい!』っていい過ぎ!」
 噴き出しそうになるが、今までノコが接してきた小学校の先生とだいぶ違うようだ。

 早々に授業参観があった。
 むーくん(夫)と一緒に教室へ足を運んだ。
 先生はずっと児童に呼び掛け、授業はアップテンポで進んでいく。気を張ってその流れについていかないと、置いていかれてしまう。集中せねばならない。
 ノコが通っている学習塾の授業運びと重なる。むーくんもそう感じたらしく「似てるな」とつぶやいた。
 参観中、ノコも積極的に掛け声を上げ、ときに拳を掲げ、気圧されている様子はなかった。
 小学5年生の私なら、今と同様、ゆっくり自分のペースで考えたい気質ゆえを上げると思う。解ける問題も解けなくなりそうだ。

 授業参観が終わり、懇談会の会場へ移動する。隣を歩いていた男児の母親がいった。
 「ノコちゃん、あの授業についていけてます? うちの子、引いちゃって」
 頭の回転のよい男児なので、授業内容が理解できないはずはない。
 先生のあの勢いに乗っかって、一緒に掛け声を上げたりできないという意味だろう。先生が盛り上げようとすればするほど、気持ちが冷めてしまう性格なのだと思う。その気持ちはわかる。
 「今のところ、大丈夫みたいです」
 教室でのノコの姿を思い浮かべながら、私は言葉を返した。
 先生のことを「うるさい」と訴えてはいたが、授業を見る限り、慣れた印象を受けた。

 下校したノコの表情が暗い。
 小学校の宿題も通常の量に戻った上に、習い事の日数は増えた。必然的に就寝時刻が遅い日が続いている。疲れが出てきたのだろうか。
 「〇〇先生、ヤダ
 うつむいたまま、玄関先でため息をついた。
 今日は学習塾がある。家を出る前に1問でも学校の宿題を進め、軽く夕飯もお腹に入れてほしい。
 ――早くして。
 その言葉を飲み込む。
 「ほら、手を洗ってうがいして。ママが抱っこしてあげるよ」
 うなだれたノコの頭から黄色い通学帽を取り、背負ったランドセルを受け取る。

 「ママママ、ママママ、〇〇先生、うるさい」
 「でもさ、塾の先生のやり方に似てない? ノコさんには慣れた感じじゃないの?」
 膝に乗っかったノコはずしりと重い。私の首筋に顔をうずめ、深く息を吸い、吐く。
 「学校の先生だとヤダ
 小学校生活5年目を迎えたノコなりに、小学校の先生はこう、学習塾の先生はこう、とあってほしい姿があるようだ。小学校に塾はいらないということか。
 「今日ね、〇〇君が叱られたんだけど、怖かった。それにね、先生ったら、誰かを注意した後に話しかけると、声がキツいままでヤダ。先生のくせに気持ちの切り替えが下手。とにかくあの大きな声がヤダ。なんか先生がこういったら、一緒にいわなくちゃいけないのもヤダ」
 出るわ出るわ、この1週間でたまっていたのだろう。
 ただ「ヤダ」ではなく、先生のこういうところが嫌いだとノコ寄りの視点とはいえ、しっかり見ているところに成長を感じる
 学習塾から帰ったら、即入浴、就寝としたかったが、この状態のノコに宿題をさせても進まない。
 私はノコの熱い息遣いを首筋に受けとめながら、ノコの背をなでる。
 「そっかぁ…… 〇〇先生、イヤかぁ」
 どうしたもんだか、と思っていたら、ノコが勢いよく顔を上げた。
 「ママママ、ママママ、先生の名前を紙に書いてさ、踏んづけてさ、グシャグシャに破ってもいい?」
 自分のなかのムシャクシャとした感情をノコなりに解消させたいと考えたのだろう。
 「証拠はしっかり隠滅してね」
 「わかった! ビリビリのビリビリに破いて捨てるから大丈夫!」
 ノコがすっくと立ちあがった
 自分から、自分の足で立ち上がったノコを私は見上げる。
 ――大きくなったもんじゃ。

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