片付けない物は「一時保管箱」に入れる。
#20230820-203
2023年8月20日(日)
魔窟の主、ノコ(娘小4)は自分の部屋以外でもその能力を発揮している。
ソファーで本を読めば、ソファーの上にそのまんま。
誕生日プレゼントに贈られたデジタルカメラも撮影を終えたら、撮った場所にそのまんま。
本棚から出した図鑑は調べたら、床の上にそのまんま。
用を終え、手から離れたらそのまんま。
そこがどこであろうと構わない。
「もとあった所にしまってから、次の物を出しなさい」
毎日毎日、朝から晩まで何度いうのだろう。
我が家にノコが来た頃はこんなことはなかった。
安全性を考えて、子どもの手が届く場所に物があまりなく、自由に出し入れできなかったからかもしれない。使う度に親に頼まないと出せない。必然、片付けるのも親になる。
成長とともに自分で出し入れするようになったし、なんといってもノコの私物が増えた。
「はい、片付けて。それから次のものを出して」
こういって、すぐに片付けるのならよい。
たいてい生返事をするか、無視するか、私を睨む。または「まだ使うし」「あとでやる」という。だが、夜まで再度使われることはないし、あとで片付けることもない。
声を掛けても片付けないだけでなく、気分が悪くなる態度をされるのだから、いっている私もだんだん嫌になる。
そういうわけで、居間に一時保管箱を用意した。
「〇月〇日までにかたづけなければ、処分します。」
箱に油性ペンで大きくそう書き、日付の部分は養生テープにして交換できるようにした。
ノコが出しっ放しの物はその箱に入れる。いちいち小言をいわなくていいし、床に物がないので歩きやすい。そして、いつでもソファーに座れる。
快適、快適!
腹いせなのか、ノコはゴミまで放置するようになった。
ゴミを放っておく。ママが一時保管箱に入れる。期日になればママが捨ててくれる。
このへんの頭の使いようは毎度のことながら、感心してしまう。
昨日、魔窟を片付けた際、ノコが不要とした物のなかにリサイクルショップで売れそうな物があった。目下、それらは段ボール箱に入れて廊下に置いてある。
昨日は一時保管箱にある物の処分日だった。
ノコが放置した物は箱からあふれ、入れるではなく、積んである状態だった。私はノコが寝た後に、それらを仕分け、売れそうな物は廊下の段ボール箱に移した。
今朝、一時保管箱が空になっているのに気付いたノコが騒ぎだした。
「ママママ、ここに入っていた物は!」
「期日が過ぎたから処分したよ」
「何が入ってた?」
「いろいろ入っていたから、いちいち覚えてないなぁ。今、なくて困っていないなら、いらない物だったんじゃない」
ノコが慌てて、ゴミ箱をあさる。燃えるゴミ、不燃ゴミ、そして廊下にある段ボール箱の前を通ったとき、昨夜まで一時保管箱にあった物を発見した。
「これはダメ! あー、これも!」
放置されていた物たちを抱え、ノコは地団太を踏んで私を睨みつける。
「ママ、この箱、やめて!」
私は深く息を吐いてから、ゆっくりとノコに話す。
「だって、ノコさんはママが『もとの場所に戻してね』といってもしないでしょ。無視するか、睨むか、怒鳴るか。ママ、そうされる度に嫌な気分になる。だけど、この箱があれば『片付けて』っていわなくていいんだもん。入れればいいだけだから、嫌な気分にならない」
ノコは歯をぎりぎりと噛みしめながら、返す言葉を探している。
「でも、この箱が私を嫌な気持ちにさせる!」
「ノコさんがすぐに片付ければ、この箱はいらない。すぐに片付けないし、ひどい態度をするから、ママが嫌な気持ちになるの」
「この箱、やめて! 嫌な気持ちにさせるの、ママじゃん!」
私? 私なのか?
はじめに物を放置するノコが起点だと思うのだが、ノコにしたら、放置するノコではなく、片付けるよう注意する私が「嫌な気分」の源なのだろうか。図にしてノコの思考の流れを明確にしたくなるが、多分そういった行為はノコにとって思考の整理ではなく、「面倒くさく」て、ママに「いいくるめられた」感しかないだろう。
静かに私は同じ言葉を繰り返した。
「ノコさんがすぐに片付けるなら、この箱はいらない」
「……わかった。いわれたら、パッと片付ける」
今日一日、ノコが実行できるか様子を見るために、一時保管箱は一時クローゼットにしまっておくことになった。
私だって、この箱が活躍することは望んでいない。
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