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自動書記 “速度”

果たしてあたしは、自分が求めるモノにたどり着けるんだろうか?
スピードを出せば出す程、近づけば近づく程、それは遠のくかのよう。

星が流れるように留まる。この矮小で嘘吐きな街の灯りみたいに。パワーバンドいっぱいにアクセルをふみこむ、生傷が癒えることの無い歴史を、過ぎ去った時間の裏に置きざりにするかのように。

三叉路に出くわす。迷わず真ん中の道を選ぶ。あいつは、”道を間違えたな”なんていうけど、思いつく通りにやる。選択なんてまやかしは、そもそもあたしの人生にはなかったんだ。

いつもみたいに、精霊どもは血の代償を求める、さも、当たり前だって顔をして。一体何様なのさ?
かつての生活から生まれたポリリズムは、あたしの豊かでダイアモンドで出来たお尻をスパンクする。”もっと急げ、もっと昂れ”ってね。それはあんたらが踊るアマピアノとかヒップホップよりも揺らすものだ。

呼びかける。スピードだけがレスポンスを返す。それが経験則。相手に考えさせるヒマを与えちゃダメ。
反響した無感情は、嘘であれ真であれ大きなうねりとなり、今、手にしている福音となった。慢心しちゃいけない、これはみんなのもの。ほら、早い話、街の女たちがあたしの呼びかけの回答。ニャオペなんてやるヒマない。祭りが終わったその時に、混ぜものが一切無い純粋なヘロインでゆっくり祝うのよ。

青く俯く影はあたしの横顔であり、滋養をもたらすオアシスだった、幸か不幸か。豊かな熱病は大樹の肥やしとなり、涙が溢れるより速く生長するなり、あたし自身を焦がし尽くした。おかげで、オスの要らないプライドで、愚者を出し抜き、強く立ち振る舞えた。

嫌気のさす儀式は多くの時間と命を食い物にした。鶏の血でいやらしく契約が記されたでっぷりしたその腹に、呪われた銃弾を見舞ってやりたかった。今となっては逆に感謝してる。

さあ、もう行かなきゃね。
昔、野郎にレイプされた怨みは必ず返す。呆気なく、なんて生易しいことは期待すらするな。あたしのママをボロ雑巾みたいに扱ってくれた御礼も込めてね。さっきからcz75がダッシュボードで、ウズウズ熱病に浮かされ踊ってる。

あの野郎のいかがわしい治世は終わった。てめえらに都合のいい時代はね。政治屋どもも、あたしには頭が上がらない。あたしが仕切る、あたしの街だ。やっと、ここまで来たんだ。とんでも無い速度を出し続けても尚。ここまでやたら遠かった。

“ママ、もう着きますか?”

“もうそっちに着くわ。それより、よく研いだ山刀を忘れずにね。あたし達から盗んだ途方も無いモノを、じっくりじっくり、思い出してもらおうじゃないか、あたしが今まで出してきたスピードの分まで上乗せて”

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