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海外ワーケーション&プチ留学 inマレーシア 観光ゼロでも大満足の理由

「時間や働く場所に縛られずに仕事ができる」のは、フリーランスの魅力の一つです。ノートパソコン片手に、世界中を旅しながら働くことも本来なら可能なはず。けれども現実は、締切や「仕事が尽きたらどうしよう」という焦りに追われ、日本どころか、家からもなかなか出ない……という人もいるのではないでしょうか。フリパラ編集メンバーである筆者もその1人。しかしあるとき、長らく夢としてあたためていた「家族で海外プチ留学」をするのは今しかないのではと気付き、行動に移すことに!

この記事では、海外ロングステイもワーケーションも未経験の筆者が、海外ワーケーションの準備や滞在中の仕事のこと、そして経験を経て得た気づきについて綴っていきます。

夢を叶えるのは今しかないのでは?

英語は大学受験以来さっぱり、特にリスニングとスピーキングがまるでダメという英語コンプレックスの塊のような私。日本を飛び出し、自由に海外で学んだり働いたりする人を見ては、その軽やかさを羨ましく思っていました。せめて3人の子どもたちには、最低限の語学力を身につけ、「学んだり暮らしたりする場は、日本以外にもたくさんある」ということを知ってほしい。そしてそのきっかけのひとつとして、「いつか家族でプチ留学とかできたらいいな~」などと漠然と考えていました。しかし、末っ子がもう少し大きくなったら具体的に検討しよう、などと思っているうちにコロナ禍に突入します。さらに、遠方に住む親の病気や仕事が忙しくなったりなど日々バタバタ過ごしているうちに、気付けば長男は中学生になっていました。

このままだと、「仕事が忙しいから」などと言い訳している間に長男は受験期を迎えてしまう、そうしたらもう「家族でプチ留学」なんてますます難しくなるし、そもそも思春期に突入した子どもが付いてきてくれるかも怪しい。いつまた、何かの感染症が蔓延するかも分からないし、自分や家族が心身の調子を崩すことだってあるかもしれない。夢を叶えるのは、大きな問題がない今しかないのでは!? そう気づいたのは、2023年の10月でした。さっそく同じくフリーランスの夫も巻き込み、リサーチを開始。こうして、「マレーシアのインターナショナルスクールが開催する3週間のウインターキャンプ(大人の英語クラス付き!)」への参加を決めました。

写真はシンガポールのチャンギ国際空港。今回滞在したマレーシア・ジョホールバルは、シンガポールから車で1時間という立地

なぜマレーシア?

今回、行き先にマレーシアを選んだ理由は、主に下記の3点です。

1、日本との時差が1時間
海外ワーケーションにおけるハードルの一つである時差。マレーシアと日本の時差は1時間のため、仕事への影響はほぼなさそう

2、物価が比較的安い
家族5人、3週間の滞在費や子ども3人分のウインターキャンプの参加費を考えると、物価は安いに越したことはない

3、英語は通じるが、カタコト英語の人も多い
私自身、スピーキングとリスニングへの苦手意識が強く、子どもたちも特別な英語教育を受けているわけでもないため、皆が流暢な英語を話すような国は心理的ハードルが高かった

また、仕事でマレーシアに移住した人に話を聞く機会があり、「良くも悪くも適当な感じが新鮮」「発展のスピードが速くて驚愕。日本大丈夫かな、と危機感を抱いた」等々気になるエピソードを耳にしていたことも後押しとなりました。

クライアントへは1カ月半前に相談

航空券や宿泊場所の手配とともに、もう一つ重要な準備があります。そう、仕事の調整です。私はフリーランスで編集と執筆の仕事をしており、当時は3つのクライアントと契約を結んでいました。普段から完全にリモートワークをしているため、現地でも仕事ができない、ということはなさそうです。ただ、初めての海外ロングステイで何が起こるかわからないため、仕事はできるだけ減らす方向で調整することにしました。

各クライアントには、出発の1.5カ月前にマレーシアに親子留学に行くことを伝え、滞在中の業務の進め方を相談しました。

◾️A社

毎月の稼働量が決まっており報酬も固定のA社。私のメインの仕事先です。こちらは

・担当する記事本数を通常の3分の2に減らしたい
・業務の一部を外注化したい(通常は自分で執筆している分もライターさんに依頼)


と相談しました。もちろん、減らした分と外注分は報酬も減額しますが、今回は「現地での自分の負担感の軽減」を優先。クライアントの迷惑にならない最低限のラインを予測して提案しました。

◾️B社

毎月の固定報酬プラス、月々の成果量によって報酬が加算されるB社。こちらは

・新規企画の立案と請負はお休みしたい
・定期MTGの欠席したい
・担当している記事はそのまま進行する


という内容で相談。毎月の固定報酬は主にMTGや企画立案に支払われていたので、固定報酬はいただかず、アウトプットできた分の成果報酬のみいただく、ということを申し出ました。

◾️C社

毎月の稼働量に波があるが、報酬は固定のC社。こちらも、

・新規企画の立案や請負はお休みしたい
・定期MTGの欠席したい
・担当している記事はそのまま進行する


という内容で相談し、休んでいる期間の報酬は頂かないこととしました。

当然、この月は相当な減収となりました。今振り返れば、「もうちょっと仕事持っていっても大丈夫だったかも」とも思います。けれども、「やります」と言っておきながら「やっぱりできません!」となってしまった場合、クライアントにかける迷惑の量や、それによって失うであろう信頼のことを考えると、あらかじめ無理のない範囲まで仕事を減らしていってよかったと思っています。

ちなみに、どのクライアントも「いいですね!」「ワークは忘れて楽しんできてください!」と大変温かく送り出してくれました。何年も一緒にお仕事しており、日頃から子どものことなども話題にしていたため、私も安心して相談できたという背景もありました。

滞在したホテル付近はリゾート開発されており、歩道も整備されていて安心。海沿いを毎日ジョギングできて気持ちよかった

宿泊先はホテルにするも、ちょっぴり後悔

10月にキャンプ参加を決め、11月に仕事先に報告、バタバタと準備と前倒しの仕事を進めているうちに、あっという間に出発の日がきました。今回滞在するのは、マレーシアの首都クアラルンプールではなく、マレーシアで2番目に大きい都市、ジョホールバルです。ウインターキャンプが1月1日から始まるため、前日の12月31日に現地に到着しました。

ワーケーションにおいて宿泊先は大事な要素の一つです。今回私たちは、ウインターキャンプを主催するインターナショナルスクール提携のホテルを選びました。ジムやプールがついた高級コンドミニアムにAirbnbで泊まるのも魅力的だったのですが、詳しくリサーチする時間が取れず、「とりあえず提携ホテルなら安心だろう」と決めてしまいました(そして案の定、マレーシアに来てから「コンドミニアムのほうが、ホテルと同じような金額なのに、部屋や施設が豪華な分でコスパ良かったかも…」とちょっぴり後悔。マレーシアでワーケーションを企画している人は、私的にはコンドミニアムをおすすめします)。

仲良くなった韓国人ファミリーが滞在するコンドミニアムのプール。ちなみに私たちが滞在するホテルもプール付きだったが、突然改装工事が始まり使用不可になった

とはいえ、今回宿泊したホテルも、LDK +2ベッドルーム、シャワールームも2つついている100平米近い広々したお部屋で、家族5人で泊まって1泊約1万円と日本とは比べものにならないくらい割安でした。ホテルは通信環境もバッチリで、日本とのオンライン会議も問題なし。セキュリティ面を考慮し、念のため滞在中だけVPNサービスも利用しました。

ちなみに屋外でのネット利用ですが、普段から使っている某社の格安SIMサービスで、追加料金なしで2GBまで海外ローミングを使えてかなり便利でした。買い物場所やレストランなどの調べ物はもちろん、マップ利用に英語やマレー語の翻訳等々、ネットは本当に生命線だったので…。

必要最低限のモノだけで暮らすホテルライフは、思った以上に快適

滞在中は思った以上に余裕がたっぷり

滞在中のスケジュールは以下の通りです。

・8時頃 子どもたちが登校(スクールバスがホテルまで迎えにくる)
・8時〜9時 近くの海沿いをジョギング、簡単な家事など
・9時〜14時30分 ランチを挟みつつ、ワークタイム。時に買い物など。
・15時〜16時30分 親も学校に移動し、大人の英語クラスに出席
・17時頃 ホテル戻る。同じ頃子どもたちもバスで帰着

基本的に、子どもたちは朝から夕方までみっちり活動してくるので、大人は意外と時間があります。しようと思えば日本にいるときと同じくらいの仕事量もこなせそうです。ホテルステイで掃除も定期的に入ってくれ、外食メインにしたので食事づくりもナシ。家事といえば洗濯くらいで、家事と育児と仕事に追われる日本での暮らしよりもずっと余裕がありました

ホテルの隣にあるローカルなカフェを利用。1食300円もあればお腹いっぱいに

肝心の仕事について、「通信トラブルでネットにつながらなかったりして」とか「オンライン取材中に音声が遅延したらどうしよう」などと考えていたのですが、拍子抜けするくらい何の問題もありませんでした。1時間とはいえ時差があるので、「打ち合わせの時間を間違えないようにしないと」と心配していたのですが、スケジュール管理に使っているGoogleカレンダーに日本時間とマレーシア時間の両方を表示できたため、特に混乱することもなかったです。

ホテルの部屋は広く、夫婦でリモートワークしていても狭さを感じないし、見晴らしのいいバルコニーでPCを開いていると、やっていることはチャットへの返信であっても何だかウキウキしてくるから不思議です。

雨期で雨の日も多かった1月のマレーシア。その分涼しく、雨の止み間にバルコニーで仕事したりも

たまに場所を変え、カフェで仕事したりもしました。PCとにらめっこしてるのは私たち夫婦と、海外から来ているエンジニア風のグループくらいで、ほかはみんなおしゃべりしたり、1人でのんびり絵を描いたり。カフェの店員さんたちもおしゃべりに花を咲かせており、みんなゆったり楽しそうに過ごす様子に、「日本人が働きすぎって本当なのかも」などと思いを巡らせたりしました。「海外では…」「日本人は…」的な記事は日々メディアで目にしますが、実際に自分で見聞きしたことは説得力が違うなと思いました。

観光はほぼゼロだけど、満足度が高かった

仕事を持ってのワーケーションとはいえ、せっかくの海外だから観光もしたいところ。私たちもウインターキャンプが休みの土日に、日帰りでマラッカやシンガポールまで足を伸ばしたいね、と話していました。が、子どもたちが「ウインターキャンプで仲良くなった韓国人のクラスメートと遊びたい!」と熱望したため、遠出はせず、友達ファミリーが滞在するホテルのプールにお邪魔したり、近場の室内遊技場にみんなで出かけたりしました。

また、車で20分も走れば、フードコートやボルダリングなどの遊び場が充実したショッピングモールや、日本でもお馴染みのイオンにも行けます。特にイオンにはDAISOがあったので、3週間滞在するための細々した買い物をするのに重宝しました。

ホテルはキッチン付きで、イオンでは日本の食品も手に入るため、自炊で日本食を食べることも可能

ちなみにマレーシアは車社会で、Grabというタクシー配車サービスがあり、アプリを使って依頼すれば10分もしないうちにタクシーが迎えに来てくれます。事前に行き先を指定でき料金も分かり、アプリも日本語に対応していて便利でした。ちなみにこのGrab、Uber Eatsのように食事の注文・配達もできるため、仕事が立て込んだ日の食事にも大変重宝しました。

観光はできなかった今回の滞在ですが、観光よりも「海外で暮らすように過ごす」方が、実は自分は楽しめるということを発見。ジョギング中に毎日顔を合わせる人とちょっとあいさつしたり、地元スーパーで激辛ツナを買ってヒーヒー言いながら食べてみたり。夜の時間も、テレビやデジタルゲームがない分、家族でトランプしたり、屋台を散歩して南国スイーツに舌鼓を打ったり。子どもと一緒に散歩する、という日常の風景が、海外というだけでこんなにも新鮮で楽しいものになるのかと驚きました。これがワーケーションの醍醐味なのかもしれません。

夕食後にホテル近くの屋台を散策。日没が遅いマレーシアでは夜の時間がゆったりしていた

当たり前が崩され、「~すべき」から「~したい」に意識が変化

海外に長期滞在すること自体初めてで、「何が起こるかわからない」と、ドキドキしながら行ったマレーシア。けれどもふたを開けてみれば、仕事面は拍子抜けするくらい何も問題が起こりませんでした。出発前は、家にこもって仕事ばかりの毎日に閉塞感を抱いていたのですが、マレーシアのカフェでウキウキ仕事したり、海外の人とあいさつして嬉しくなったりしている自分を発見し、「新しい場所で仕事をすることが自分にとって大事なのかも」「一人が好き!とか思ってたけど、実はたわいないコミュニケーションが好きなのかも」…と40代にして新しい自分を発見。「帰国したらやってみよう!」と思えることがたくさんできたのは、自分にとって思わぬ収穫でした。

課題だった英語は、Google翻訳のアプリが便利すぎて、自分で話せなくても日常生活を送る分には問題ありませんでした。そもそもマレーシアは多民族が暮らす国だからなのか、こうしたツールを使ってコミュニケーションを取ることに誰しもが慣れている印象でした(私が遅れていただけかもしれませんが)。とはいえ、大人の英語クラスでは講師のスピード感ある英語に毎日冷や汗をかいていたし、「もっと英語が話せたら…」というシーンにも多く直面したので、帰国後も細々と英語の勉強を続けています。

正直私は、今回マレーシアに行くまで、ワーケーションに対してそこまで魅力を感じていませんでした。しかし今回マレーシアという場所で、暮らすように滞在しながら仕事をすることで、仕事自体を楽しめたと同時に、「仕事にどう取り組みたいか」や「近い未来、仕事をどうしていきたいか」などを自然に考えている自分がいました。普段、「~したい」よりも「~すべき」にとらわれがちな自分にとって、これはかなり嬉しい変化。違う価値観を持つ人たちの中に置かれて、自分の当たり前がどんどん崩されたからこそだと思います。

ホテルのプールが壊れて使えなかったり、韓国人のクラスメートに影響された娘が、英語よりも韓国語に興味を持ったりと、想定外のできごともたくさんありましたが、編集者・ライターとして専門性を高めたいと思っている「教育」と「働き方」のテーマに関するヒントもたくさん得られ、自分の「~したい」について深く考えられ、さらにこうして記事にまとめることまでできて、楽しいことづくめだった海外ワーケーション。もし迷っている方がいたら、えいやっと飛び込んでみることをおすすめします!

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