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レトロ座 2017年12月

教授と美女(1941年)

これは【群衆】同様キャプラ作品かとしばらく思い込んでいた。何しろ主役の二人がゲイリー・クーパーとバーバラ・スタンウィックなので。しかしきちんと調べると監督はハワード・ホークスで脚本はビリー・ワイルダーが手がけていたのだった。ホークスは【脱出】【三つ数えろ】のハードボイルドなボギー&バコールコンビや西部劇の【赤い河】【リオ・ブラボー】を、ワイルダーは【麗しのサブリナ】のボギー&オードリーとかモンローの【七年目の浮気】【お熱いのがお好き】を撮っていた。じゃあ【紳士は金髪がお好き】もワイルダーなのかと思ったらこれはホークスになるんですと。

本題の【教授と美女】は10年近く館から出ることもなく世俗から離れて百科事典の編纂に勤しむ八人の学者たちとナイトクラブのダンサーとの交流を描いたスクリューボールコメディです。スクリューボールと言うのは今の野球用語のそれとは厳密には違うみたいだが、Wiki ではスピンがかかりどこで落ちるか予測がつかないボールになぞらえているので一般にはジャイロボールだと思えばよいのか。という訳で展開が早くどう転ぶか分からないけどロマコメ、といった感じ。

八人の教授のうち最も若く男前なのがゲイリー・クーパーなのだが、あとの七人のメンバーもなかなかパンチの効いたキャラ。棋士加藤一二三のような風体の歴史学者や、志村けんが演ってそうな植物学者らが作中で学問とヲタの力をいかんなく発揮している。そしてスタンウィック扮するダンサー、シュガーパス・オ・シェイにコンガのリズムを習うべく輪になってステップを踏む七人の老教授。このシーンは白雪姫と七人のこびとのオマージュである。それにしても彼女の美脚は今作で初めて観たが本当に見事のひと言。

当初ジンジャー・ロジャースがシュガーパス役をオファーされ断ったそうだが、スタンウィックが演じて物語が面白く華やかになったと思える。何より【群衆】で気心の知れたゲイリー・クーパーの指名だったかも知れない。

それからナイトクラブのミュージシャンがなんとジーン・クルーパと彼のオーケストラ。クルーパ(少年時代の西城秀樹が彼の教則本を買ってドラム練習に励んだというエピソードを聞いた)が神業ドラム演奏を披露し、物語に花を添えてくれるのもまた愉しい。                  スタンウィックが現代語、俗語の解説をゲイリー・クーパーにレクチャーしてあげるうちに二人はいい仲になってゆくのだが、それを許さないギャングのボスが子分二人と妨害してくる。するとここに【飾窓の女】の恐喝男ダン・デュリエが・・・今回も悪役でそれなりに善人を銃で脅しつけてくる。彼の登場でややサスペンスフルな展開になるかと思いきや、教授たちの機知で返り討ちにあい、逆にちょっと変わった拷問を受けてしまうという少々おまぬけな子分役であった。