水辺の光景 |詩
水郷でもなんでもない所で
思いがけず
豊かな水路と出会った
果樹園のイチジクが
午睡のさなか
水底に透けていた秋天
針の目に通された
無数のタイムラインは
この橋の上に
収束したらしい
振り向けば
たくさんの老若男女が
自転車に乗って
駆け抜けてゆく
右から左へ
左から右へ
ペンやカメラや絵筆や
愛するもろもろを
かかえて
水と
光と
自転車と
私
同じ座標上で交差して
それぞれの場所へ
分かたれていく
じゃあまたと
ひらり手を振っている
色なき風のように
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