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Duo Dance

私は、誰かと踊るのが苦手だ。
というのも、まだ1人としか踊ったことがない。
その人は、自分勝手な踊りをする人だった。

私はいつも気を遣っていた。
気を遣って、声を出して、
手足を動かして、表情を作った。
そんな自分が気持ち悪くて、
次第にその人と踊ることはなくなった。



最近、一緒に踊ってみたいなって
思える人ができた。
彼はまだ、誰かと一緒に踊ったことがないみたい。
でも、私は一切不安がなかった。
踊りは2人で作っていくものだから。
彼の不安を払拭できるように、
経験が活かせるかわからないけど、
とにかく、「大丈夫だよ」って伝えたかった。



本番当日が来た。
イメージトレーニングはお互い万端だ。
あとは、感覚と雰囲気と、相手の表情を読むだけ。
彼は、丁寧に私の手を取り、
腰に手を充てて、一歩踏み出した。

私は彼の踊りたいように
ついていくことにした。
彼はどんな踊りをしたいのだろう。


彼は私にキスをした。
よく感じてみると、粘度の高い唾液だった。
.....緊張しているのだな。
緊張から来る交感神経の高まりによって
粘性を帯びた唾液に変わることを
私は知っていた。

彼はゆっくりと私の胸に手を下ろす。
あまりにも手が優しすぎて、
脂肪の多い女性の胸にとっては
刺激を感じることができなかった。
指が突起に当たる。
あっ
神経が集中しているそこは、
私の弱いところ。

彼はマニアックだった。
下着に乗っかったお腹の弛みが、
チャーミングだと、何度も撫でた。
時折、腹部にある浅い窪みに触れる。
私のおへそ、可愛いでしょ。
そんなことを、私は思う。


彼は太ももに触れる。
私も彼も、生唾をごくりと飲み込んだ。
さて、上手に踊れるかしら?
彼が割れ目に触れる。
私の、いろんな意味でトラウマのあるパート。
前のパートナーが、自由に踊ってたパート。
彼は、どんな風に踊るんだろう。


「リーナ」
彼が私を呼ぶ。
へ、なに...?
「僕、何もしてないよ。
リーナが案内してくれてるんだね」
そんな!!

彼の長い指は、するすると入っていった。
が、彼は力を込めてないという。
私の呼吸に合わせて、
身体が勝手に動いていたようだ。
これが、心と心を通わせたデュオダンス...?


嫌いだった自分の声も、
作っていた自分の表情も、
何もかも気にならなくなって、
ただただ、彼との踊りに集中していた。
私も、彼となら気持ちよく踊れるのかも。
そして、私たちは、ひとつになった。



ひとつになれた時の彼の表情、
今でも忘れられない。
驚いたように目と口を丸くして息を吸い込み、
昇天するかのように安らかに目を閉じて息を吐いた。
そんな表情をするの?してくれるの?
私は信じられなかった。
私は、上手に踊れてるのかなと思った。

彼の腰に両足を回してみた。
彼の吐息混じりの声が出た。
そんな反応をするの?してくれるの?
私は信じられなかった。
また、上手に踊れてるのかなと思った。



彼は私を抱きしめた。
深いため息をついて、「幸せ」だと言った。
私も、これまでにない多幸感があった。


これからもよろしくね。
たくさん手を取り合おう。
一緒に踊ろう。



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