ルビー手芸店の月並みで愛しい日常②(物語)
今日は新しい生地が届く日だ。みすずは朝から店主のセシルに言われた通り、陳列棚を整理しながら新しい生地の場所を作っていた。力仕事だが、時々鼻歌が出るほど楽しみだった。
「カラン」とドアベルが鳴ってお客が入ってきたと同時に、強い香水の匂いが漂ってきた。白いシフォンブラウスにツイードジャケットというクラシックな出立ち、少なくなったショートの真っ白の髪は大ぶりに巻かれ、シワが余計に目立つのもものともせず、アイシャドウもチークも口紅もたっぷりのメイク。みすずは緊張を隠して「ボンジュ