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具体的事例は抽象化して活用すべし

こんにちは、中小企業診断士の銘苅(めかる)です。
勉強熱心な経営者で日々情報収集に努めているのに、なかなか自らの商売に活用できていない方を時々見受けます。その原因は何でしょう?

ある繁華街の居酒屋Aは、売上不振に悩んでいました。そこで、居酒屋Aのオーナーは、オフィス街で成功している飲食店B店の事例に着目しました。B店は、ランチタイムに、ボリュームがあり、素早く提供できるランチメニューを導入することで、サラリーマンの支持を獲得し、お昼になると行列ができ売上を伸ばしていたのです。

A店のオーナーは、「うちも同じようなランチメニューを導入すれば、売上が回復するはずだ」と考え、早速、B店をまねたメニューを開発し、ランチタイムに提供し始めました。

しかし、結果はかんばしくありませんでした。ランチメニューの売れ行きは伸びず、むしろ、居酒屋らしいメニューの売上が減少してしまったのです。なぜ、このような結果になってしまったのでしょうか?

問題は、A店が、B店の成功事例を「具体的な打ち手(ランチメニューの導入)」としてのみ捉え、その背景にある「抽象的な本質(立地特性に合わせたメニュー構成)」を見落としていたことにあります。

B店がオフィス街で成功したのは、単にランチメニューを導入したからではありません。オフィス街という立地特性を深く理解し、そこで働くサラリーマンのニーズ(手軽で満足感のあるランチ)を的確に捉えていたからこそ、ランチメニューが受け入れられたのです。

一方、A店の居酒屋が立地する繁華街では、昼食需要よりも、ディナータイムの需要が中心です。観光客や会社帰りのサラリーマンが、その土地の名物料理やおつまみを求めて訪れます。そのような立地特性を考慮せずに、オフィス街向けのランチメニューを導入しても、顧客のニーズとはずれてしまうのは当然の結果でした。

このことは、経営者およびコンサルタントとして、事例を参考にする際の重要なポイントを示しています。具体的な打ち手をそのまま真似るのではなく、その背後にある抽象的な本質、つまり、この場合は「立地特性に合わせたメニュー構成が顧客の支持を得る」という本質から打ち手を具現化すべきであったと思います。

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