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③今世ではもう、誰も傷つけたくない。





前回の続きです。






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ジャックは17歳の年に、役割を貰った。


王子付き(王子の側近)に遣える役目。


王子付き(側近)は5人いて、その5人の下で雑務をこなす役目に引き上げられた。


王子付き(側近)はレオンという長身の男がリーダーであり執務を取り仕切っていた。


ジャックはそのレオンの下に配属となった。


レオンさんは、「レオンが言うなら仕方がない」と誰にも言わせる程の実力者だった。


元々は戦争孤児でこの立場まで登り詰めたと他の人から聞いた。



大きい揉め事があるとレオンさんが仲介に入り、

レオンさん監視のもと、徹底的に話し合わせたり、気に入れないなら殴り合わさせたりしていた。

レオンさんは基本的にどちらが悪いという判断ではなく、どちらも悪いという采配をしていた。

相手の話を聞かないからこんな事になっていると。

お互い気が済むやり合わせ、その後はどこかへ連れて行っていたが、聞けばご飯を食べさせていたそうだ。


誰よりも仕事量が多く、勤務時間も長い。




レオンさんはジャックにとってはとても厳しい上司であった。




レオンさんには沢山怒られた。


(指導という言い方の方が正しいですが、ジャックのニュアンスで書いています。)


報告の仕方、報告書の書き方、書類のまとめ方、


特に報告の仕方。



報告書はまとめようとするな。

そのまま出せ。

主観は感想はいらない。

状況だけにしろ。

主観が入ると誤解や混乱を招く。



人前でも怒られた。


同期の前でも怒られた。


口調は優しいし、怒鳴ったりという事はない。しかし、怖かった。


真面目に怒られるからだ。

何の反論も無い。

出来ない。


はい…その通りです。

この言葉以外何も出てこない。


その通りだからだ。


怒られる姿を見かけた同期や同僚達はいつもニヤニヤしながら肩を組み慰めてくれていた。

「お前も大変だな」

と、手伝ってくれたり、差し入れもくれた。

常にポケットには仲間がねじ込んでくれる菓子で溢れていた。


レオンさんが人前でも叱っていた理由。


それは、嫉妬の念をいだかさない為だった。


最初は人からの嫉妬を感じる事も多かったが、怒られ、焦り、青ざめながら駆けずり回るジャックを見て誰も何も言わなくなっていた。


むしろ、そんな姿を面白がる仲間たちばかりになっていた。



ジャックは厳しさの中にレオンさんにはとても愛情があるのは知っていた。




報告と連絡は語弊はあってはならない。

民の命に関わる。

何が火種でいつ戦争になるか分からない。


「ここにいる時は主観はいらない。」


何が必要で、何を求められていて、どう動くべきなのか。


役割を全うする事。


それを徹底的に教え込まれた。


「これについて、お前はどう思う?」


「話は後で聞く。」



報告とは別に、考えや思いを聞かれる事も多かった。

聞かれた事に対して意見が無いのも怒られた。


難しかった。



レオンさんは


「役割を全うしろ。しかし、ここでは人格を殺せというわけじゃない。

私は、ここにいる者の人格を必要として役割を頼んでいる。」


そう言われる。


カッコよかった。



自分自身を認めてくれている。


だから、ジャックは必死で日々を過ごしていた。




18歳で勉学が終わり、城の仕事勤めをしたり、兵役を選択したり。

それそこ故郷に帰るものもいた。


それぞれの選択があった、


ジャックは城に残り、王子付きの人の雑務の仕事に従事する事になった。



その頃には雑務にも慣れてきた。



そしてその2年後、19歳の時にジャックは王子付きに任命された。





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