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鳥獣戯画ノリ

妻が鳥獣戯画にハマりだした。兎や蛙がプリントされた食器が増え始め、今ではブックカバーやトートバッグの布製品のことごとくが鳥獣戯画である。

ついにはハンケチやら弁当袋やら私の持ち物にまで平安時代の動物どもが踊り出した。

自称〇〇ノリというやつで、ノリでやってることだから大目に見てくれろとは結婚当初からする妻の釈明。家中ギンガムチェックになったりメダカになったり太宰治になったりした経緯からすれば、今更鳥獣戯画ノリなんかで驚かない。



効用もある。

退屈な会議が、この頃では鳥獣戯画にしか見えない。大猿が勿体ぶって議題を提示し、狐どもがこれみよがしに相槌を打つ。末席の兎どもが腹を捩らせている。蛙どもは無表情。真面目に聞いてるかと思いきや、ふいにゲップをかます。会議が終われば、鳥獣戯画たちは大わらわで私のハンケチへ帰還する。

今朝は蛙が出没して職場は大騒ぎ。事務の黒澤くんが始末したけど、今度は課長と音信不通って。



単なる偶然だよね。


(410字)

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