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アイドル

「ここで働かせてください!!」

と魂を込めてアピールすることもなく、
「この旅館で働きたいんですけど〜」
「はい、ぜひお願いします〜」
とあっさりと通ってしまい、あっさりと京都まで来てしまった。

人手不足やん。
倍率200倍の某インターンとか、8000倍の某アイドルオーディションとかで密集する若者の集団が嘘のように消えてなくなっている。
夢(という名の大人の力)を叶えられなかった残りの人たちはみんなどこへ行ってしまったのだろう。だっていつも同じ人ばかり上手くいっているように見えて、同じ人ばかりが苦しんでいる。
そしてこの差はただの運である。


えらい人

「本日はですね、えーとですね、誰々さんのお祝いも兼ねてですね、…」

誰々が何の病気になったとか誰々がどこの学校で何をしただとか、偉い人の偉そうな話が20分続く。

皆は目の前の料理のいいにおいと葛藤しながら、まるで偉い人のする話が面白いかのようにふんふんと笑顔でうなずいている。
(時々このつまんない話を面白そうに聞くゲームに脱落して目線を料理に向けてしまっているおっちゃんを見かける。たぶんこのゲームの強さは、小学校の校長先生の話にどれだけ鍛えられたかに比例すると思う。)

そんなことしてたら焼きたての鮎の塩焼きがただの鮎の塩焼きになっちゃうよ〜。

「それでは、乾杯!」
「かんぱ〜い!」

この時かんぱ〜いの声がやけに大きいのはたぶん、やっと料理にありつける喜びが出ちゃってるんだと思う。おつかれさまでした。

えらくなりたい人

「えーホテル業界に関しまして我々リサーチを行ったところ、えーこちらのグラフにあります通り、やはりヒューマンリソースが不足しているということがクリアになりました。…」

内定獲得を目指す学生が、大したことないことを難しそうに言う。
お金のため、社会的地位のために、彼らは今日も空っぽな風船ガムを夢中でふくらまし続ける。

ガムが大きくなりすぎて、外の世界が見えなくなっていることにも気づかずに。


えらくならなくていい人

釜爺:
「ほうれん草って英語でなんて言うの〜?(すぴなっちです!)」
「今日何時まで?(13時です。)了解〜、グッドラック。」

リン:
「ちょっと、ちゃんと挨拶しときぃ!!」
「やかん熱いからやけどするで、気ぃつけな!(は〜い。)」

ハク:
「次こっちまっすぐ〜。(おけ〜い。)」
「(この才能は)天性のもの、かな。」


100平方メートルのアイドル

「みんなどっち推し?」
「私はゆりちゃん」
「僕はゆりちゃん推しだったけど最近さくらちゃん推しに寄って来てる」
「俺は…ハイボールで」
「炭酸は別料金でお持ちしますね!!」

7999人のアイドルたちが、今日も北川景子の若い頃に似てるねぇとかおっさんに言われながら各地に笑顔を振りまいている。


みんな原子でできているのに

受かる人と落ちる人、
偉い人と媚びる人、
推される人と推す人、

同じ人間なのにどうしてこうも評価に差が生まれてしまうのだろう。

周りの環境とか、自分の存在を認めてくれる人がいるかどうかとか、持っていた才能が時代に合っていたかどうかとか。
努力すれば報われるなんてきれいごとを言う人もいるけれど、突き詰めれば全部運で決まる。

そんな世界に対して、たまたま運に恵まれなかった人に対して、どうにかならんかなぁと思いながら今日もありがとうございました〜と頭を下げる。


昨日国際関係の友好についてスピーチしてたあのえらい人は幸せなんだろうか。

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